4月10日、埼玉県上尾市の上尾運動公園体育館で、渡辺勇大がプロデュースしたイベント「遠藤さん カムさん けいごさん 感謝祭」が開催された。
このイベントは、昨シーズン限りで現役を引退した遠藤大由、第一線を退く意向を示している園田啓悟と嘉村健士の引退試合を、同じ日本代表として戦ってきた渡辺勇大がプロデュースしたもの。
渡辺は2016年から男子ダブルスでペアを組んできた遠藤について「男子ダブルスのすべてを教えてくれた人」と語り、園田/嘉村については「勝手にライバルだと思って、負けたくないと競ってきた」と話す。新型コロナウイルスの影響で、ペアとしての最後の試合を観客に見せる機会がなくなった3人のプレーを、バドミントンファンに見てほしいという思いで、現役選手である渡辺が企画した。
エキシビションマッチでは、11点2ゲーム制で園田/嘉村と遠藤/渡辺が対決。園田の強力なスマッシュ、嘉村のネット前の超絶技巧、遠藤の華麗なレシーブ、渡辺のジャンピングスマッシュとドロップの打ち分けなど、世界に誇る日本男子ダブルスの技術で観客を魅了した。
イベントには男子ダブルス選手だけでなく、桃田賢斗や奥原希望をはじめ日本代表でともに戦った仲間たちや家族、恩師がゲストとして招かれ、コートサイドでエキシビションマッチを見守った。解説席には奥原、渡辺と混合ダブルスを組んで東京五輪で銅メダルを獲得した東野有紗、昨年の世界選手権を制し、男子ダブルスの次世代を担う小林優吾が座り、4人のプレーを盛り上げた。
試合は第1ゲームを園田/嘉村、第2ゲームを遠藤/渡辺が取って1-1となったため、最後は1点勝負。このポイントを園田/嘉村がものにして、両ペアによる最後の試合を終えた。
試合後には、ゲスト席の選手もコメント。3月の全英OP女子シングルスで優勝を果たした山口茜は「とても練習していないとは思えない強さで、うらやましい」、同じく全英OP女子ダブルスで優勝を果たした志田千陽/松山奈未は、「強かったし、楽しかった」(志田)、「先輩たちのように強くなりたいとあらためて思いました」(松山)と、4人のプレーを称えた。
エキシビションマッチ後には、トークショーや観客へのプレゼント企画も。トークショーでキャリアを通じて一番心に残っている出来事について聞かれた3人は、ともに「2014年のトマス杯優勝」と答え、園田は「2014年以来のトマス杯優勝をテレビで見たい」と5月に行われる団体戦に期待を寄せた。一方、嘉村は「(日本としてまだ優勝したことのない)スディルマン杯を取ってほしい」と日本代表の後輩たちにエール。遠藤は「悔いなく、自分がやりたいと思ったことをやっていってほしい」と日本代表として戦う後輩たちにメッセージを送った。
また、ゲストから3人への質問を募ると、男子ダブルス日本代表コーチであるタン・キムハーコーチから「コーチになって感じたことや抱負」を聞かれる場面も。「伝える難しさを感じていて、そこを克服していきたい」と答えたのは遠藤と園田。4月からヨネックスのコーチに就任した嘉村は、「女子選手を教えるのはもちろん初めてのことで、勉強しなければいけないけれど、一から選手と一緒に成長していければ」と抱負を語った。
なお、イベントの模様は、渡辺勇大のYouTubeチャンネルで生配信され、アーカイブ動画が公開中だ。
https://www.youtube.com/channel/UCpx6m4UYhQLTJMC7-ghmKbQ
下記は、イベント後、取材に対応した4人のコメント
遠藤大由
国内で観客の前でプレーするのは2年ぶり。今日、こうして皆さんの前でプレーできて、勇大には心から感謝しています。ずっとソノカムと切磋琢磨してきて、僕は本当にこれで最後になるので、最後の相手がソノカムでよかったです。(思った以上に足は動いたかと聞かれ)思った以上に動きませんでした(笑)。
園田啓悟
たくさんの方たちに来ていただいて、ユーチューブの配信でも何万人もの方に見ていただいていると聞きました。久しぶりに遠藤/渡辺ペアとやって楽しかったですし、日本代表で合宿したり、遠征したりしていた当時を少し思い返しながら時間を過ごすことができました。本当にたくさんの方たちに見ていただいて、観客の皆さんにも感謝しています。
嘉村健士
バドミントンは今までこういう観客を入れたイベントをできていなかったので、渡辺選手を中心にこういったイベントができたことは、バドミントン界が一歩進むことになったと思いますし、こうしてファンの方たちと交流することは、この先、バドミントンが盛り上がるには必要なことです。イベントができて幸せですし、この環境をつくってくれた勇大には本当に感謝しています。
約1カ月バドミントンをしていなかったのですが、いざ遠藤/渡辺とやるとなると、こんなにも足が動くものなのかというのは自分の中でも驚きました。もうちょっとやりたいなという気持ちになりましたが、遠藤/渡辺だったからこそ、こういう気持ちになったのかなと思います。これから立場は変わりますが、今後も意見交換しながら、お互いに頑張っていきたいです。
渡辺勇大
いろいろ準備してきて、今日を楽しみにしていました。僕から見ると大成功かなと。なかなか有観客のイベントができない中で、いろんな方々の支援があって、イベントを実行できたことをすごく誇りに思いますし、皆さんに楽しんでいただけたかなと思っています。
僕自身は3人とこうしてまたプレーができて、純粋に楽しかったです。4人でバドミントンができて、皆さんに見てもらって、幸せな時間でした。
取材・構成/バドミントン・マガジン編集部