オリンピックのバドミントン競技を支えるモノや人をフィーチャー。第2回は、オリンピックで使用されるコートマットの秘密に迫る。選手たちのハイレベルな戦いを足元から支えるのが、オリンピックのソールサプライヤーであるヨネックスのコートマットだ。前編では、その歴史と特徴について紹介する。
オリンピックで使用されるコートマットの特徴
バドミントンがオリンピック競技となったときから、その最高の舞台をまさに足元から支えてきたのがヨネックスのコートマットだ。現在、BWF(世界バドミントン連盟)は、スディルマン杯(男女混合国別対抗戦)、トマス杯/ユーバー杯(男女国別対抗戦)、世界選手権という最高格のグレード1の大会でヨネックスのコートマットを使用。2020年の東京五輪の舞台でも使用される。
そもそもコートマットの大きな役割は、安全性にある。木製の床では汗やほこりで足が滑りやすくなるが、その点、コートマットはそのリスクを減らすことができ、さらに適度なクッション性で選手のパフォーマンスを向上させる。
元オリンピアンの池田信太郎氏はコートマットを使用することによるメリットについて「止まりたいときにしっかり止まるだけでなく、少し遠いところに脚を出すときに、適度に滑らかにスライドする。視覚的にシャトルが見やすいというメリットもありますし、落ちるギリギリのところで倒れながらもとりにいけるのは安心感があるからこそ」と元トッププレーヤーならではの目線で語る。
ヨネックスのコートマットの大きな特徴は、適度なグリップ力とクッション性だ。これについて、ヨネックス製品開発部の太田慎二氏は「硬質塩化ビニルという硬い素材を使っている海外製に対して、ヨネックスのコートマットは軟質塩化ビニルという軟質素材を使っているから」とその秘密を語る。
反発性に関しては、シューズのクッションが衝撃吸収と反発性を両立することで蹴り出しを速くするのと同様、コートマットも反発性があることで足の動き出しがスムーズになり、選手のパフォーマンスもアップすると考えられる。「確かに、ネット前に踏み込んで戻るとき、ジャンプしたあとの動作など足が滑らかに動くのは反発性があるから」と池田氏も大きく頷く。
ヨネックスのコートマットが最初に使われたのは1979年にインドネシアで開催されたトマス杯。40年間もの長きにわたり、世界のトッププレーを支えてきたコートマットが、2020年、世界が注目するハイレベルな戦いを東京で演出する。
池田信太郎の視点
「実際に素材を触ってみると、(海外製のコートマットとの)違いが明らかです。軟らかいだけでなく、クッション性があり、表面が滑りにくいように加工されているのに、素材自体は適度ななめらかさがある。小中学生にとってコートマットでプレーするのはあこがれですが、床での足運びとは全然違うものも求められる。このグリップ力と、うまくスライドさせるフットワーク、クッション性を生かした足運びが必要で、トップ選手ほどそれをうまく使うんです。グレード1の大会やツアー大会で使用されているコートですから、選手たちは安心してプレーできるはずです」
取材・文/バドミントン・マガジン編集部