4月25日にスタートしたドラマ日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系、日曜午後9時~)が、豪華なキャストや現在の世相を反映した内容で高い注目を集めている。バドミントンファンの間では、平手友梨奈さんがバドミントン選手役を演じているのも大きな話題だ。第1話の中で、バドミントン・マガジンの表紙を飾るほど将来を嘱望されるプレーヤーであることが提示されている岩崎楓だが、一方でそれゆえの葛藤や秘密も抱えていることもうかがわせた。5月2日に放送される第2話は、その楓を中心として物語が展開されていく。放送を前に、平手友梨奈さんがバド×スピ!およびバドミントン・マガジンのインタビューに応えてくれた。
全国トップレベルのプレーヤーを演じるにあたっての猛特訓
――平手さんがバドミントン選手を演じるということで、バドミントンファンの間でも話題になっています。あらためて『ドラゴン桜』で演じている岩崎楓について平手さんから紹介していただけますか。
平手 すごく真っ直ぐで、頑張り屋の女の子です。全国トップレベルのバドミントン選手として、周りや両親からすごく期待されていて、その気持ちに応えたいという気持ちが強いんです。
――楓に対して、ご自身で共感できる部分はありますか?
平手 けっこうありますね。具体的にどこというのは今後の展開にもかかわってくるので詳しく言えないのですが、私も周りの期待に応えたいと思ったりすることも多いので。
――役づくりで、バドミントンを練習したと聞きました。練習はどれくらいやったのでしょうか。
平手 といっても、7、8回ですかね。1回につき2時間くらいです。バドミントンをやったのは初めてだったのですが、体力的にハードなスポーツだと思いました。
――どんなところが難しかったですか。
平手 初心者からしたら、もう全部難しいです(笑)。でも、相手のいいショットに対して、うまく返せたときは、ラケットでシャトルを打ったときの音が全然違うんです。その音を聞くと、すごく気持ちいいし、「ああ、ちゃんと打てたんだな」っていうのがだんだんわかってきて、どんどん楽しさも感じるようになりました。
――バドミントンの楽しさを感じてもらえて、うれしいです。
平手 あとは、今回、ダブルスを中心にプレーしているのですが、ダブルスというのも私にとってはよかったです。ペアでプレーするダブルスは、シングルスとは違って、パートナーと呼吸を合わせないとラリーも続かないんですけど、ペアで一緒にやっていくという感じが自分にはおもしろかったです。
――そうなると、練習では技術練習だけじゃなく、ダブルスのコンビネーション練習も行なったのですか。
平手 そうです。実は、一度本格的に、「相手ペアがこう打ってきた球に対しては、こう動く」といったポジショニングについて教えてもらって、ペアの二人が縦に並んだり、横に並んだり……というのもやってみたんですが、突き詰めていく時間がないのに加えて、それをやると二人の動きがバラバラになってしまって。結局、動き方のルールを決めずに、お互いに「お願い!」とか「行ける!」とか、声を掛け合いながらプレーしたほうが自然にできていたので、一旦、それは忘れようということになりました。でも、基本的には、私が前のポジションで、パートナーの利恵(吉田美月喜)が後ろからスマッシュをバンバン打つというのが二人のスタイルになりました。
――なるほど。楓は、オグシオでいうところの潮田玲子さん、タカマツでいうところの松友美佐紀さんってことですね。
平手 そうなんですね。そういえば、誰のプレーというわけではなかったんですけど、バドミントンの試合動画はたくさん見ました。しかも、私、女子選手の試合ではなく、男子選手の動画ばかり見ていて。同じようにやろうとトライしたら、先生に「それは男子がやるやつだから」って言われたんです(笑)。でも、「実は男子選手の動画ばっかり見てました」と話したら、先生も「そういうことか」と納得して(笑)、そこからは男子選手がやるようなことも練習していました。一時期、スマホに出てくる関連動画が全部バドミントンの試合ばっかりになっていたときがありました。あ、今もそうなんですけど。
――ちなみに、先生というのは、バドミントンの指導を担当した栗原文音さんのことですか。
平手 そうです。
――栗原さんがリオ五輪に出場した元オリンピック選手というのはご存知でしたか。
平手 はい。最初にお会いする前に、元オリンピック選手に教わるよというのを聞いていました。本当にすてきな方で、まさに本当の先生と生徒という関係みたいでしたし、なかなかこんなにすてきな先生いないだろうっていうのが感想で。一緒に話していると、さすがオリンピック選手だなと感じることがたくさんあって、すごく新鮮でしたし、アドバイスに背中を押されることも多かったです。
――栗原さんの指導を受けながら、男子のトップ選手がやるようなショットを練習したということですよね。具体的にはどんなショットを練習したんですか。
平手 バックハンドのジャンピングスマッシュとか、股抜きショットとか。あとは、なんだったかな…。
――それは男子選手でもあまりやれないような技ですよね。
平手 練習に行くたびに、監督から「これもやってほしい」っていうオーダーが増えていくんです。それがなかなか難易度の高いもので、それをひたすら練習するというのをやっていました。さらに、実際に体育館に行ったら、事前に言われていなかったような、それまで練習していないショットを求められたりすることもあるので、先生と相談しつつ、その都度対応して、期待に応えていくしかないなと覚悟しました。その中で、常に意識していたのは、素人に見えないように、ちゃんと全国トップレベルに見えるように、っていうことです。だから、先生にも私から「厳しく言ってください」とお願いしましたし、先生も「厳しく言う」と言ってくださったので、お互いに妥協せずにやれたんじゃないかと思います。
――ビギナーでそこまで追い込んだら、かなり筋肉痛になったんじゃないですか?
平手 全然…なりましたね! 練習の期間は、基本的にバドの練習をやったらメンテナンスに行くというのがルーティンで。メンテナンスの際、最初にどこが張っているかなど見てもらうのですが、ちゃんと見る前からトレーナーさんが「こんな体の状態、見たことない」って言ったくらい。それくらい、バドミントンで鍛えられました。
――平手さん史上、一番鍛えられた?
平手 そうですね。ダンスとかとはまた違う筋肉痛だったり、筋肉の付き方だったりするんです。それも含めて、いい思い出です。
――すごくストイックに取り組んだ様子が伝わってきます。平手さんの仕事への取り組み方は、アスリートに近いなという印象を受けます。
平手 スポーツ選手ではないので、自分自身ではまったくわからないのですが、一番近くで見ているマネジャーさんや自分をよく見てくださっている方に「アスリート」という表現をされることは、昔からありますね。自分では、自分がやっていることは普通だと思っているんですけど……。今回、『ドラゴン桜』の関係者の方にも、「バドミントンの練習をこんなにやるとは思わなかった」というふうに言われました(笑)。
――当初設定されていた練習の最終日を終えて、「明日、もう1日練習できないかな」と自ら言っていたとも聞きました。
平手 確かに、ありました。でも結局、練習期間を終えて、撮影しているときに思ったのは、「もっと練習できたらな」とか「もっとこうできれば」とか。反省ばっかりだったんです。もっとうまくなりたいなと思いました。
「第2話はバドミントンシーンと楓の抱える葛藤に注目してほしい」
――さて、5月2日に放送される第2話では、平手さんのバドミントンシーンがたくさん見られるとか。
平手 私もまだ見られていないので、ちゃんとプレーできているのかドキドキしています。
――今後のドラマの展開や見どころをお話できる範囲で教えていただけますか。
平手 できたらお話ししたいんですけど(笑)、私自身、どうなるのかまだ何もわからないので、答えようがないんです。でも、第2話では、かなり楓のキャラクターが見えてくるので、まずはそこに注目してほしいです。先ほど、私自身が楓という役にすごく共感できることが多いとお話ししたんですが、唯一共感できないのは、万引きとかをしてしまうところ。
――頑張り屋の彼女が、なぜそうなってしまったのかというのは視聴者も気になっているところかなと思います。第2話では、彼女が抱える秘密が少し明かされる?
平手 そうですね。それも、全部、バドミントンにつながっているんです。彼女は自分のすべてをバドミントンに捧げているし、チームのキャプテンなので、チームも引っ張っていかなきゃいけないという思いもある。第2話では、頑張って練習したバドミントンのプレーもですが、そのあたりの楓の葛藤にも注目してもらえたらと思います。
――撮影が続く中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。最後にバド×スピ!を読んでいるバドミントンファンにメッセージをお願いします。
平手 たぶん、第2話を見ていただけたらわかると思うんですけど、私自身、バドミントンはまだまだ全然……。楓はトップレベルの選手ですけど、私自身はそこまでのレベルに追いつけていない。でも、ドラマをきっかけに、見てくださった方が「バドミントンをやってみたいな」という気持ちや何か興味を持ってもらえたら、すごくうれしいなと思いますし、私自身ももうすでにバドミントンをまた早くやりたい、動きたいという気持ちになっています。バドミントンっておもしろいし、楽しい。それが少しでも伝わっていればいいなと思います。
PROFILE
ひらて・ゆりな◎2001年6月25日生まれ、愛知県出身。163cm。2015年、欅坂の一期生オーディションに合格。CDデビュー以降センターポジションを務め、2020年1月まで欅坂46の中心メンバーとして活動した。現在は女優、アーティスト、モデルとして活躍中。2018年公開の映画『響-HIBIKI-』では映画初出演にして初主演を果たし、第42回日本アカデミー賞で新人俳優賞などを受賞。2021年は1月公開の映画『さんかく窓の外側は夜』に続いて、6月公開の映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の出演も決定している。現在、TBS系日曜劇場『ドラゴン桜』に出演中。
取材・構成/バドミントン・マガジン編集部
写真/高原由佳