男子ダブルスの日本代表選手たちに話を聞くときに、「あこがれのペア」「リスペクトしているプレーヤー」「すごいプレーをするダブルス」として必ず名前が挙がるのが、インドネシアのヘンドラ・セティアワンとモハマド・アッサンだ。
バドミントン・マガジン9月号の巻頭では嘉村健士選手(トナミ運輸)と渡辺勇大選手(日本ユニシス)に対談していただいたが、二人のトークの中でも、セティアワン/アッサンについて、「流れの中で取らなければならないポイントをおさえ、トータルで勝ちに結びつけるのが本当にうまい」「それが二人ともができているのがやっかいだし、特に話し合っていないのに、完璧にリンクできているのが不思議だし、すごい」と言っていたのが印象的だ。
世界のトップで対峙している二人だからこそ感じる“すごさ”ともいえるだろう。
同じくバドミントン・マガジン9月号の海外選手クローズアップでは、モハマド・アッサンについて、インドネシアのバドミントン界に精通する現地ジャーナリストに寄稿してもらっている。
セティアワンは35歳、そしてアッサンは32歳。ベテランの二人は、地元インドネシアでは、「ダディーズ」(お父さんたち)と呼ばれている。実際に子どもを抱いて国際大会の表彰台に上がるなど、“お父さん”であることと同時に、ベテランの域にいる年齢的なものを示唆するニックネームでもあるだろう。
「“ダディーズ”と呼ばれているように、僕らは決して若くない」と二人は言うが、2019年は全英OP、世界選手権、ワールドツアーファイナルズとシーズンの中でも特別な意味を持つ大会で優勝。大舞台で、その勝負強さをいかんなく発揮している。
緩急自在の巧みさ、ベテランならではのゲーム運びの妙を見せる一方で、激しい接戦の試合終盤には、プレーが中断するたびにアッサンがコートサイドの広告ボードに腰掛けるなど、疲労の色を隠そうとしない仕草は、実は試合を取材していても気になるところだった。
アッサンは7年前から腰を痛めており、そのケガは完治せずに、慢性的な痛みになっているのだという。セティアワンよりも3歳若いアッサンだが、コート奥からスマッシュを連打する後衛のアッサンには、より大きな身体的な負担がかかっていてもおかしくない。
東京五輪が1年延期となり、多くのベテランプレーヤーたちが次々と第一線を離れる決断をする中、満身創痍の中でも、決して諦めずに彼がプレーを続ける理由とは何か――。その答えは、ぜひ本誌の記事をご覧になっていただければと思うが、セティアワンとアッサンがいまも第一線でプレーし続ける姿は、間違いなく、世界中のバドミントンファンを勇気づけていると言っていいだろう。
ベースボール・マガジン社 販売部
(0120‐911‐410)
文/バドミントン・マガジン編集部