新型コロナウイルスの影響で、夏の大会の中止が続々と決定している。インターハイ、全中、若葉カップや全国小学生ABC大会。それぞれの目標に向けて練習してきたジュニア選手たちのことを考えると、本当に心が痛みます。
「子どもたちに掛ける言葉が見つからない…との大人たちの声も聞きます。でも、だからこそ今、大人が頑張るときだと思います」と話すのは、ジュニア時代から全国大会を経験し、シドニーとアテネの五輪2大会出場を果たしている米倉加奈子さん。
米倉さんが「ジュニア選手たちの心のケアにつながってほしい!」との思いで書いた『みんなへのエール』がバドミントン・マガジン編集部に届いたので、バド×スピ!を通じて紹介します。
以下は、『みんなへのエール』の一部抜粋。全文は米倉加奈子さんのブログで読むことができます。
夏の大会、インターハイ、全中、若葉カップ、ABC大会諸々中止になりました。予想できたことだけれど、本当に悔しい! もちろん、この状況や、命が最も大切だということは、理解した上で書きます。
みんな、『勝つ!』という結果でなく、目標に向かって努力する時間を大切にしてきたと思います。それでも、かけがいのない瞬間を奪われたのだから、つらいのは当然です。
試合では、負けるかもしれないという怖さと戦いながら、今できることに対してベストを尽くします。
「仲間のために」とか「今までの自分を超えるために」など、思いの強さが新しい自分へ導き、とてつもないスピードで成長できます。これは私自身、実感してきたことでもあり、たくさん見てきた事実です。
けれど、今、直面しているのは「仲間との時間を奪われた」「全国への挑戦が断たれた」「今までの努力は…?」「何をめざせばいいのか…」といったつらさや不安でしょう。
でも、『決して腐るな!』と言いたいです。そして、ここから『自分の武器を作れ』と伝えたいです。
それは、私自身の高校生のときの経験があったから。
親元を離れ、監督の家に下宿生活をしていた高校時代。練習もハードでしたが、生活面でもつらいことがたくさんありました。それを耐えていたのは、インターハイ優勝をめざしていたからです。でも、結局、ケガでコートには立てず、選抜もインターハイも出場できませんでした。
「今まで耐えていたのはなんだったのか…」と、ひどく落ち込んだのを覚えています。でも、今は、そのときがあったからこそ『世界と戦う武器を作れた!』と思うのです。
コートに立てない時期、練習時に監督席の後ろで見学して、試合のターニングポイントでどうするべきかをじっくり観察しました。そして、コートに立つ選手の心理を読み、自分だったらどうするかといったヒントをつかんでいきました。この学びは、技術、パワー、スピード、体格で海外選手に劣る私にとって、世界で戦う際の大きな武器になりました。
めざしていた大会に出場できずに落ち込んだ、あのとき――。ただ耐えるのではなく、『挑戦できる何か』を探せたことは、本当によかったと思っています。
この先に何があるのかはわからないけれど、みんなには、思い切りプレーできるときがきたときに、成長している姿でコートに立ってほしい。「次のステージで活かされることが絶対にある」と、イメージしてほしいと思います。
米倉加奈子さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/yonekurabadminton/
Profile/よねくら・かなこ◎1976年10月生まれ、東京都出身。常総学院高-つくば国際大-茨城トヨペット-ヨネックス。2000年と05年に全日本総合単優勝。1998年アジア大会で金メダルを獲得した。シドニー、アテネ五輪出場。引退後はナショナルチームの指導にあたった。現在は、ジュニアの指導にも携わっている。