試合を見て、感じて、またプレーを楽しむサイクルを
――池田さんは男子ダブルスと混合ダブルスでオリンピックに出ていますが、それぞれの魅力をあげていただけますか。
池田 男子ダブルスの魅力は、圧倒的なスピード感だと思います。世界トップ選手のプレーを見てもわかるように、あれだけ速い球でラリーが展開されるので、それに対応するための高い身体能力も欠かせません。
もう一つは、パートナー同士のコンビネーション。ダブルスはスマッシュが速ければ勝てるというわけではありません。意識をどれだけ2人で共有できるかがとても大事です。あとはサービスまわりの細かい技術や戦術。これはシングルスにはないものだと思います。
――混合ダブルスはいかがでしょう。
池田 ミックス(ダブルス)になると、求められる要素はまた変わってきます。女子でいうと、男子が打つ速い球をとらなくてはいけない。なおかつ、前衛で仕事をしなくてはいけない。強いメンタリティーも必要ですし、技術的な要素ももちろん求められます。
男性だと運動量と攻撃力ですよね。この前のスディルマン杯で活躍した数野(健太)もフィジカル的な要素が高いから、相手にプレッシャーをかけることができる。ミックスはお互いのストロングポイントがうまくはまれば、日本人でも世界で戦えるのではないかなと思います。いまはなかなか強化の体制が整っていないので難しいですが、世界とやっていけるポテンシャルは十分にあると思います。
――ではサイトのユーザーへ、日本のバドミントンを盛り上げていくためのメッセージをいただけますか。
池田 いま日本のバドミントンはすごく成績も出しているし、ニュースでも取り上げられて、少しずつ競技の価値が上がってきている段階だと思います。
スポーツには、「やるスポーツ」と「見るスポーツ」があると思うんですが、日本のバドミントンを見ていると、まだまだやるスポーツだなと感じています。「プレーしておもしろい」という方はたくさんいますが、これがもっと見るスポーツに変わっていかなくてはいけないと思っています。
――池田さん自身は、今年の5月にBWFのアスリート委員(※)に当選されました。
池田 まさに、バドミントンを見るスポーツに変えていくための一歩を、いま自分自身が踏み出したところだと思っています。見るスポーツにするためには、バドミントンをやっている方がおもしろいと思うような大会にしていかなければいけません。そのためには、もちろん意見もいっていただきたいですし、やっている方に見に来ていただきたいと思っています。
バドミントンをやることで楽しむのはもちろんですが、いい試合を見て、そこで影響を受けて、もっとプレーしたいと思うケースも多いはずです。ぜひ大会に足を運んでいただいて、見て、感じて、またプレーを楽しむ――。そういったサイクルをつくってほしいと思っています。
――プレーはしていないけど見るのが好きとか、最近興味を持ち始めた方はどうでしょう。
池田 バドミントンの一つの魅力として、どこでも手軽にできる点があります。公共の体育館であればだいたい一般開放していて、プレーできるチャンスはかなりある。幸運なことに、室内で雨風にもさらされない。生涯スポーツとして認知はされていますけど、家族でも、仲間同士でも、いろいろな人と楽しんでいただきたいですね。
それをきっかけに競技のほうにも興味をもってもらって、試合会場に足を運んでもらえるとうれしいですね。まず自分でプレーして、どういったところがおもしろいのか、難しいのかを感じて、試合を見に行く。そこで、「自分がやってみたのは、こういう競技なんだ」とあらためて気づいてもらって、よりファンになっていただきたいですね。
(構成/バドミントン・マガジン編集部)
※アスリート委員…BWF(世界バドミントン連盟)の理事会に対して選手の意見をまとめるための機関で、競技そのものや選手の地位向上を図ることなどが役割となる。5月に改選が行なわれ、池田氏を含む現役選手6人が当選した