11月29日に開催された第71回全日本総合選手権(東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館)2日目は、各種目1回戦が行なわれた。ここでは、男子シングルス・桃田賢斗の試合後のコメントを紹介しよう。
桃田賢斗
(NTT東日本)
結果:1回戦で猪熊心太朗(日本大)に2-1で勝利
――今日の試合を振り返って。
桃田「全日本総合という独特で、ほかの試合と少し違った雰囲気があって、思うような出だしというか、思いきりのいいプレーができずに、苦しい展開になってしまいました。ただ2ゲームの途中から、会場の皆さまの声援のおかげで、気持ちを切らすことなく頑張りきれたので、よかったかなと思います」
――思いきりのいいプレーができなかった要因は。
桃田「相手とは初対戦で、手の内も知らない状況。本当の一発勝負で結果が決まってしまうので、大事に、大事にプレーしてしまいました。逆に相手は格上の選手を倒してやろうと向かってきて、自分の気持ちが少し引いてしまって、相手を勢いづかせてしまいました」
――混乱していた部分があった?
桃田「今日の対戦相手は独特のリズムの球出しというか、あまり予想していないようなところをねらってきて、自分の中でも少しリズムがとれずに焦ってしまったので、そこがダメだったかなと思います」
――第2ゲームで4-8の劣勢になった場面から、連続得点で流れを引き寄せたが、第1ゲーム終了後にコーチからどんな指示があったのか。また4-8から何がよくなったのか。
桃田「1ゲームを取られたあとに、コーチと監督から『思いきって、自分らしくプレーしろ』といわれて、自分の中では迷いが吹っ切れた気がしたんですが、4-8とリードされてしまいました。そこで、ここでいかないと本当に負けてしまうと思い、完全に開き直れました。少しずつコートもカバーできるようになり、相手のテンポを崩すような自分らしいプレーができたんじゃないかなと思います」
――気持ちの面での緊張の度合いと、コートに入ったときの率直な気持ちは。
桃田「試合前の緊張は、予想していたよりもしなかったんですが、負けたくないという気持ちから、プレーが消極的になってしまいました。コートに入ったときは、S/Jリーグや海外の試合も出させていただいていますが、やはり自分の中で全日本総合は特別な試合。周りの皆様に支えていただいたことへの感謝の気持ちだったり、大会の独特の雰囲気で少しプレッシャーも感じました。試合自体は苦しい展開になってしまったんですが、結果としては楽しみながらプレーできたんじゃないかなと思います」
――全日本総合はどのあたりが特別なのか。また試合全体、3ゲーム目の出来はどうとらえているか。
桃田「全日本総合は日本のファンの皆様が一番注目する試合だと思いますし、国内の本当のナンバー1を決める最高峰の試合。やはり勝ちたい思いも自分の中で強いので、そういう意味でも特別なのかなと思います。
今日は、自分の中では負け試合でした。対戦相手が(2ゲーム目途中から)決め急いでくれなければ負けていたと思いますし、自分の出来は全然ダメでした。でも第3ゲームは、相手の足を止めるようなショットも何回か出せて、スマッシュも結構いいところで決まり、明日につながる手応えも感じられました」
――いま試合をするうえで、もっとも心がけていることは。
桃田「いまの環境を作ってくださっている周りの皆様への感謝の気持ち、バドミントンがまたできていることに対する感謝の気持ちです。やっぱりそれが、(自分が)劣勢になったときでも、気持ちが折れないという強さになるんじゃないかなと思います」
――今大会にかける意気込みを。
桃田「会社の皆様であったり、周りで支えてくださっている皆様のためにも、やはり優勝して、恩返しをしたいと思っています。1球1球、感謝の気持ちを忘れず、優勝をめざしていきたいです」
――日本代表から遠ざかっているが、代表復帰への思いは? 決勝に進めば代表が決まるが。
桃田「一戦一戦、頑張った結果が決勝進出であったり、優勝であれば、自然と代表復帰できる、というように思っています。『代表に復帰するために、絶対に決勝進出するんだ』という目標ではなく、1球1球自分らしくプレーしたいと思っています」
――代表に入れば喜んでくれる人も多いと思うが。
桃田「周りの方の期待に応えることは必要ですが、それよりも自分らしい、元気な姿も含めて、そういうプレーを見せるほうが自分の中では大切だと思っています。悔いのないプレー、周りの方が見ていて『成長したな』と思ってもらえるようなプレーができたらと思っています」
※掲載しているコメントは会見と囲みから抜粋し再構成したもの
取材・構成/バドミントン・マガジン編集部
写真/井出秀人