12月5日(月)、東京・代々木第二体育館で開催されたウイルソン主催のバドミントン・イベント「BIG W EVENT」において、佐々木翔の引退セレモニーが行なわれた。佐々木は8月のリオ五輪後に現役引退を表明し、11月から北都銀行のコーチを務めている。
「これまで皆さんにやってきていただいたことに対して、恩返しをしていく立場だと思いますので、これからは選手と寄り添って頑張っていきたいと思っています」と冒頭に佐々木が挨拶。最初に登場したのは、「チーム・ウイルソン」の後輩・リオ五輪金メダリストの松友美佐紀(日本ユニシス)だった。花束を手渡したあと、自身がナショナル代表になって間もない頃のエピソードを披露した。
マレーシア遠征中に試合の空き時間で、一人で黙々とフットワークのトレーニングを行なっていた佐々木の姿を見て、「世界で勝っていくということは、努力を当たり前のようにできないといけないし、周りがどうこうではなくて自分自身の中で納得できるまで練習して、試合に臨んでいくということだと深く考えさせられました。あのときの翔さんの姿を見ていなければ、たぶん私はいまここまで頑張れていないと思います」と、時折声を詰まらせながら、メッセージを送った。
また、プロテニスプレーヤーの錦織圭もビデオで登場。「これから指導者になるということですが、皆さんに強い選手になってもらえるように頑張ってください」と力強いエールが送られた。その後は、佐々木が現役生活の間でとくにお世話になった10人に感謝状を贈った。トナミ運輸・荒木純監督、北都銀行・原田利雄監督、舛田圭太ナショナルコーチをはじめ、佐々木をサポートし続けた恩師や戦友とがっちり握手をかわした。
続いて、佐々木と同じ1982年生まれで北海道出身の竹村純氏(JR北海道男子コーチ)も映像で登場。お互いにもう一度試合をしたいといっていたというエピソードを披露すると、最後に一言。「これから行きたいと思います。翔、待ってろ!」。直後に、竹村が姿を見せた。佐々木にも知らされていないサプライズ演出だった。
ファイナルゲーム11オールからスタートした特別マッチは、佐々木が21-16で勝利。「こうやって最後、試合ができて満足しています」と竹村は笑顔を見せた。「ただ…82年世代の一人として、翔の最後にはあいつとの対戦が見たいと思います。……なぁ、翔治!」と呼びかけると、今度は佐藤翔治(NTT東日本女子コーチ)が登場。続けてのサプライズに、会場からもどよめきが起こった。
小学生時代から互いの存在を知り、高校・大学と同じチームで歩みをともにした二人が、代々木第二体育館のセンターコートで、再び対峙した。結果は「久々にシングルスをやったんで、足がプルプルしています」と苦笑いを浮かべた佐藤のショットミスが終盤に増え、こちらも21-16で佐々木が勝利した。
試合後は、充実感にあふれた表情が並んだ。「これから、また一から苦労していくことがたくさんあると思うけど、これまで通り、ブレずに自分の信念を貫いてほしい」(竹村)、「これからもお互いに刺激し合いながら、バドミントン界を盛り上げていけたらと思っています」(佐藤)と、それぞれメッセージを送った。
最後は琴美夫人からのメッセージ、そして長男・真叶くん、次男・耀くんから花束を受け取ると、ラケットをコートに置き、深々と一礼。関係者やスタンドの観客とハイタッチをかわしながら、会場をあとにした。
取材・文/バドミントン・マガジン編集部