皆さん、こんにちは! 今日は、少し日が空いてしまいましたが、女子シングルスで見事に銅メダルを獲得した奥原選手について触れたいと思います。
彼女の試合は、予選リーグからすべて見ていました。まず、予選リーグ2試合と決勝トーナメント1回戦(vs裵延姝〔韓国〕)はほぼ完ぺきな出来だったと思います。表情を見ていても、うまく集中できていたことがうかがえましたし、自分のプレーに自信を持っていましたね。大会の入り方としては最高でした。
山口茜選手との準々決勝は、1ゲームを取られましたが、その後の2ゲーム目で、我慢しなくちゃいけないところをしっかり我慢できたことで、逆転勝ちにつながりました。前半は山口選手のスピードを生かした攻撃に対応が遅れがちでしたが、コートを広く使った展開に徹して、流れを引き寄せましたね。
準々決勝の雰囲気自体は、山口選手が所属する再春館製薬所の関係者の応援がすごかったんです。山口選手自身も本当に勝ちたかったと思うし、(対戦成績が悪い中で)勝つのならこのオリンピックのかなというムードさえ漂っていました。奥原選手は、そういったものも我慢して勝利をつかみました。いろいろなものを乗り越えたことで、精神的にも成長できたのではないでしょうか。
シンデュ・P.V.選手との準決勝ですが、これは相手のパフォーマンスがよかったというべきでしょう。もともと身長の高い選手(179センチ)にジャンプしてあれだけ力強いスマッシュを打たれたら、なかなか対応できません。1ゲーム、2ゲーム前半と、奥原選手がうまく対応できていた場面もありましたが、最後は相手の爆発力に圧倒された形でした。
その後、3位決定戦は相手(李雪芮・中国)のキケンにより銅メダルが決定しました。もちろん、もう1回試合して、メダルを決めるのがきれいなストーリーだと思いますし、彼女自身も「試合をしたかった」というコメントを残しているようですね。でも、メダリストになることで得られるものって、計り知れないと思うんです。
表彰台に立ってみてこそ、見える景色、抱ける感情があるはずです。そして、メダリストになることで背負うものもより大きくなるし、メディアに取り上げられる機会も増えて、いま以上の環境がついてくる。こういったものが、彼女のさらなる成長につながっていくはずです。今回の銅メダルを、東京五輪での金メダルへのステップにしてほしいですね。
ただし、今回シングルスで初めてメダルを取ったことで、オリンピックに出られなかった国内のライバル選手、または下の世代の選手は、これから「オリンピックでは、メダルを取って当たり前」と思うようになるでしょう。そして、メダルを取った奥原選手が、他の選手にとっての「目標」になるわけです。今後、女子シングルス全体が、さらに活気づくのではないでしょうか。山口選手を含めた、ほかの選手の巻き返しにも期待したいですね。
構成/編集部
いけだ・しんたろう◎1980年12月27日生まれ、福岡県出身。九州国際大付高―筑波大―日本ユニシス。07年世界選手権の男子ダブルス3位、08年には全英OP男子ダブルスで日本勢21年ぶりの4強に進出。08年北京五輪(男子複)、12年ロンドン五輪(混合ダブルス)に出場するなど、長年日本のダブルス界をけん引した。15年9月に現役引退。