日本の頂点をかけて争われる第78回全日本総合バドミントン選手権(東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ)。大会最終日の12月30日は、各種目の決勝戦が行なわれた。ここでは、混合ダブルスのダイジェストを紹介する。
【混合ダブルス】
決勝は、柴田一樹/篠谷菜留(NTT東日本)と、日本B代表ペアの西大輝/佐藤灯(龍谷大/ACT SAIKYO)の対戦。柴田と、西/佐藤は初めての決勝進出。現役引退を表明している篠谷は3年連続で(パートナーは山下恭平)、昨年に続く連覇をかける舞台となった。
前日から、「楽しみたい」と話していた柴田(上写真・右)/篠谷は、入場からコートサイドまで笑顔。対する西/佐藤は表情が硬い。最初のプレーは、篠谷から西へのショートサービスがアウトの判定。柴田がチャレンジを要求する(チャレンジ成功=イン)というスタートだった。序盤は、「第1ゲームの出だしは自分たちのほうがいいカタチで入れた」と西が振り返ったように、柴田/篠谷にミスが重なり、短いラリーで西/佐藤に点数が入っていく。
前日の準決勝で見せた軽快な動きが見えなかった柴田は、「緊張して体がこわばって力加減がわからなくなって、初心者みたいになった」と、いつもの大声が出ず。ハーフに落とされたシャトルの処理に苦戦する。その状況を救ったのが、混合ダブルスA代表として活躍してきた篠谷。声をかけ、果敢にネット前に入るなどプレーでも引っ張り、二人のいいカタチをつくっていく。一時は5点差をつけられたが、「いつも通りに楽しくやろうよ」という篠谷と川前直樹監督の言葉で、ようやく柴田が覚醒。インターバル明けから連続6得点で10−11。1点差に詰め寄った。
ここで、相手の西(上写真・奥)がメディカルを要求。左足首付近にスプレーをかける治療を受けた。そんな西の窮地を佐藤が救うように、後ろから絶妙なカット、ネット前でプッシュと点を奪う。西も柴田も全力で打ち込む回数は少ないながら、決めるべきところは思いきって跳び、ラケットを振り抜き、中盤以降は競り合う展開に。柴田/篠谷が16オールで並び、さらにギアを上げた篠谷のプレーで19−15とリードを広げたところで、今度は佐藤がメディカルを要求。西と同じ左足首付近にスプレーをかけた。その後は明らかにスピードが落ちた西/佐藤に対し、集中を切らさなかった柴田/篠谷が、21−15で第1ゲームを奪った。
第2ゲームに入っても、西/佐藤に本来の動きが戻らない。佐藤は足に痛みがあるのか、ネット前で横に振られてついていけず。クリアーに対してすぐに下がれず、カバーに入った西とぶつかる場面もあった。4オールから柴田/篠谷が5−4と1点リードしたところで、西/佐藤が棄権を申し出てゲームオーバー。コートサイドで涙を流す佐藤を、篠谷が優しく抱きしめた。
全日本総合優勝という結果で、現役最後の試合を終えた篠谷(上写真・右)。チームのためにと2種目で頑張り続けた一年間を、「最後は最高の結果でやりきれたと思う」と涙混じりの笑顔で締めくくった。
▼決勝戦(12月30日)
柴田一樹/篠谷菜留(NTT東日本)◯〔21−15、5−4、棄権〕●西大輝/佐藤灯(龍谷大/ACT SAIKYO)
取材/バドミントン・マガジン編集部、吉井信行、楊順行、平野貴也
写真/井出秀人