世界のトッププレーヤーたちが熱戦を繰り広げるBWFワールドツアー・熊本マスターズジャパン(Super500/熊本県立総合体育館)。昨年から新たに日本で始まった国際大会は、今年も大盛況。ここでは、大会2日目を戦った注目選手たちのコメントを紹介する。
大堀彩
女子シングルス
1回戦は台湾選手に1-2で勝利
――年内の引退を表明した後、初めての試合を終えて
今は、上出来だとか、出来が悪いとかは、正直、気にしていません。勝ちきることは大事ですが、それ以上に、皆さんへのこれまでの恩返しの意味でも、必死に羽根を追いかける、私らしい姿を見せたいと思ってプレーしていました。
――第2ゲームのインターバル明け。ミスが続いて追い上げられた場面で呼吸が乱れていた。疲労だけが理由ではなく、恐怖と戦っているように見えたが?
楽しく、私らしくやりきろうとは思いつつ、やっぱり国内で見てもらえる最後の試合なので、勝ちたい気持ちが出てきてしまった。それが、あの場面の連続失点だったり(ファイナルゲーム終盤で追い上げられた)最後もそうで、(負けたくない)欲が出てきて、ああなってしまいました。でも、勝ちきれてよかったです。
――自分から崩れてしまう、以前の自分を思い出した?
ああいう展開になって、何度も負けることがありました。少しずつ学んで、ここまで上ってくることができたので、最後にああいう終わり方をしたくなかったという思いが一番強かったです。連続失点をしている時は、硬くなって力みが出てミスにつながっていました。自分のすべてを出しきる前に、縮こまって終わってしまうのは避けたかったので、耐えられてよかったと思います。
――あらためて、引退を決断した理由は?
小学生の時から長年、バドミントンしかしてきませんでした。その中で、五輪が大きな目標としてずっとあって、本当に時間がかかりましたけど、その目標を達成することができた。五輪でも、自分が満足できる、私らしいプレーができたと思いました。五輪のレースを経験して、本当に五輪に出ることがどれだけ苦しい戦いなのかがわかって、4年後と考えたときに、そういう気持ちにはなれませんでした。本当にやり切ったという気持ちが大きかったので、残り数大会を自分らしくやりきれば、悔いはないなと自分で思ったのが、大きな理由です。
――引退を決めたタイミングは?
レースが終わってから、五輪に臨むまでの間は、五輪が終わって引退というような気持ちではありませんでした。でも、五輪を最後にしてもいいようなプレーを(五輪で)したいと考えるようになって、実際に終わったとき、自分の気持ちと相談しました。最初はジャパンオープンかなと考えもしましたが、ワールドツアーファイナルズに出られるチャンスがまだありました。経験したことのない舞台なので、最後にその舞台をめざして、最後に数カ月頑張るのもいいかなと思いました。最初にうっすらと引退が頭をよぎったのは五輪前ですけど、本当に決めたのは、五輪が終わってからです。
――ファンからの声援で、残りわずかという実感があった
コートに入ったとき、「アヤちゃん頑張れ」とか、そういう声が本当にたくさん聞こえました。ラリーとラリーの間でもたくさん聞こえて、少し、寂しさは感じましたけど、いずれ選手を終わらないといけないときはくる。それが、自分が決断したのが今だったというだけ。もちろん、皆さんに見ていただいた幸せな日々を考えると……。
……幸せだったなと思っています。ファンの皆さん、近くでサポートしてくれた会社の方、もちろん父も、そういう人たちがいなかったら、ここまでこれていない。最後まで感謝の気持ちを表して、今できる自分をすべて出しきれば、本当に私の競技人生に悔いはないと思います。
――ファイナルズを優勝して引退が理想か?
それが一番いいですけど(笑)、国内での優勝も本当に大切。皆さんの前で(優勝)というのが一番大きな気持ちです。優勝したい気持ちは誰よりも強いと思いますが、先を見てもいい試合はできない。本当にあと何試合できるのかもわからない状況なので、今は、自分自身の100パーセントを出せるように、それだけを考えていけば、結果はついてくると思ってやりたいです。
取材・文・写真/平野貴也
【過去の大会結果】
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(0120‐911‐410)