高校日本一を決める佐賀インターハイ開幕の1週間前。7月23日、大阪府の大阪市立千島体育館で、高校からバドミントンを始めた高校2年生の、実質的な日本一を決定する東西高校生バドミントン交流大会が開催された。
今年で2回目となるこの大会は、関東や東海、近畿、九州などの府県で行なわれている“高校始め”の選手限定の大会(全県規模以上)を勝ち抜いた、男女各20名の選手が参加。ジュニアのレベルが上がり、高校から競技を始めた選手が公式戦で勝つことが難しくなっている中で、高校始めの選手に大きな夢や目標を持ってもらおうと、高校の指導者らが中心となって企画し、創設された。
参加選手は全員、高校から競技を始めた2年生。体育の授業や友だちと遊びでバドミントンをしたことがある選手はいるものの、全員、中学時代は野球やサッカー、テニス、バレーなど他の部活動に所属していた。
熱意がもたらした栄冠
男子は、地元の大阪偕星学園高の辻空人(大阪2位)が優勝。決勝は同じ大阪の清教学園高の正野貴之(大阪1位)と対戦。辻は3月の大阪大会決勝で正野にストレート負けを喫していたが、今大会では逆にストレートで勝利し、優勝を決めた。
中学時代にサッカー部に所属していたという辻は、「高校始めの全国大会という、大きな大会で優勝できてよかったです」と話し、現在は近畿大会出場を目標に、練習に励んでいる。顧問の有田圭一教諭は、世界シニアでダブルス8強にもなったプレーヤー。有田顧問によれば、大阪偕星学園バドミントン部にスポーツコースで入部するには、顧問の推薦が必要で、中学時代の実績がない辻の推薦は判断が難しかったが、その熱意と伸びしろに期待して、推薦したのだという。
最初は初心者特有のバックハンドのクセが抜けず、試合で勝てない日々が続いたが、自ら「教えてください!」「練習相手をしてください!」と練習を重ねるうちに、ねばり勝つことも増えていった。有田顧問は「今後もバドミントンの楽しさを周りに伝えていってほしい」と辻への期待を口にした。
女子は、三重県立木本高の小西まゆ(三重1位)が優勝。決勝は時田夏夢(三重3位)との同校対決になり、県大会と同様に、小西がストレート勝利し、優勝した。二人とも、普段は対戦することのない全国の学校の選手との対戦を通して学ぶことが多くあったと言い、「これからの自分の成長につながると思います」と話していた。
“高校始め”だからこそ、しっかりした環境で
大会は高校始めの選手限定とはいえ、実際の運営は全国大会をイメージして実施。補助員として地元の学校の多くの生徒が審判や運営で協力。プログラムやIDカードなども本格的に製作し、準決勝以上の試合では、サービス高計測器を使用したサービスジャッジも行なった。高校始めというカテゴリーだからこそ、正しいルールで、しっかりとした環境の中で試合をさせたいという運営側の思いから、このような運営が実現した。
男子3位に入った松村理音(駒澤大学高)を指導する同校の児玉侑利監督は、「スタートラインが同じだからこそ、真向勝負で立ち向かえる、そんな魅力が詰まった大会。大会までの数カ月間、この大会で1試合でも多く勝つことを目標に練習を重ねてきました。東京代表として、ベスト4に入賞できたことは、選手にとっても、私にとっても大きな誇りです」と語った。
◎大会の試合映像はYouTubeで見ることができる
https://www.youtube.com/watch?v=qUPIjozzP0s
埼玉県の高校で顧問を務め、大会の開催に携わった小島治哉教諭のコメント
高校始めの選手にとっての目標となる大会に
「開催に向けて、各県の初心者大会実施状況を調べ、ご案内を送付しましたが、快く参加のお返事をいただきました。また大会後には、次年度に向けた協力の打診が九州の学校関係者の方からありましたし、今回の参加地域でない学校の先生ともこの大会の話題になることがあり、これから継続して続け、確立させていかなければならない大会だと考えています。高校からバドミントンを始める選手が増えている中で、多くの方にご協力をいただきながら、高校始めの選手にとっての一つの目標となる大会となればいいなと思っています」
文/小島治哉
構成/バドミントン・マガジン編集部