8月27日に開催されたBWF世界選手権2023(デンマーク・コペンハーゲン)最終日は、各種目決勝戦が行なわれた。日本勢は男子シングルスの決勝に進出した奈良岡功大が銀メダルを獲得している。
世界選手権の
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第1ゲームの前半は、互角の展開。クリアーの打ち合いが多くなり、11点のインターバルに入るまで20分かかるほど長いラリーが増えたため、観客は少し冷めた様子だったが、コート内では我慢比べが続いた。クンラビットは、時折ドライブやスマッシュを打ちこんだが、奈良岡(上写真)はことごとくレシーブ。前後をハッキリ打ちわけるラリーでチャンスを待った。12-13で初めて奈良岡がリードを奪われたが、15オールで追いつくと相手のミスを誘い続けた。19オールから相手の攻撃を返し続けてねばり勝ちでゲームポイントを迎え、相手のクリアーミスで21点目。45分をかけて1ゲームを先取した。
第2ゲームも互角。第1ゲームですり傷を負ったクンラビットが、コートに血が付着する度にコートの清掃を要求。試合はますます長期化した。駆け引き自体は大きく変わらず、ねばり合いからクンラビットが攻める、奈良岡が驚異的なレシーブ力を発揮して相手の根負けを誘う展開が続いた。
一進一退の攻防から差がついたのは、18オールの終盤。クンラビットは強打ではなく、ゆっくりとコントロールした球をネット前に配球。タイミングを外された奈良岡がレシーブミス。すると、クンラビットが一気にスピードを上げ、スマッシュ&プッシュの連続攻撃で20点目を奪取。ネット前に落とされた球をロブで打ち上げようとした奈良岡がネットにひっかけて18-21。3連続失点でゲームを落とした。
勝負の分かれ目は、ファイナルゲームの立ち上がり。クンラビットは、明らかにペースアップ。素早い動きでしっかりと落下点に入って強打。奈良岡は「第3ゲームで急に速くなって、ちょっとびっくりした。2ゲーム目はゆっくりだったので、スマッシュもカット気味じゃなくて、ボディに当てる感じできた」と相手のチェンジ・オブ・ペースについていけず。奈良岡が1点を奪った後は、10連続失点。ねばりのあるプレーで対抗するも、武器であるコントロールショットが乱れてアウトを連発。流れをつかむことなく、7本で敗れた。
勝負所で一気に突き放された奈良岡は「多分、相手は決勝戦の勝ち方がわかっている。オレは、まだわからないというか、コンスタントな(上位に入る)勝ち方はわかるけど、決勝での経験が少ない」と1時間49分もの長かった試合を振り返り、スピードアップに対応できなかった理由として、前日の試合で左足を負傷していたことを明かした。
クンラビットは、2018年の世界ジュニア選手権の決勝戦でも対戦した同世代の選手。表彰式では銀メダルを喜びながらも「金メダル、欲しいなとか思いながら立っていました」と先に世界の頂点に立ったライバルから刺激を受けた部分もあった。大会を通してみれば、準決勝までは5試合すべてストレートで勝利。「石宇奇選手(シー・ユーチー/中国)、(アンダース)アントンセン選手(デンマーク)といった強い選手と戦って、しっかり連続で勝てたので、順調に成長できているかなと思います」と手応えも得た。
世界選手権の銀メダル獲得により、2024年パリ五輪のメダル候補にも名が挙がるが、出場権獲得をかけた五輪レースは、まだ続く。次戦は、9月5日開幕の中国オープン(Super1000)を予定。「疲労を取って、ケガをしないようにやっていきたい。レベルの高い大会でベスト8以上や決勝にいけるように頑張りたいです」とさらに、ハイレベルな試合経験を積む意欲を示した。
27日の決勝戦の結果は以下の通り。
【男子シングルス】
クンラビット・ビティサラン(タイ)②〔19−21、21−18、21−7〕1●奈良岡功大 109分
【女子シングルス】
アン・セヨン(韓国)②〔21−12、21−10〕0●キャロリーナ・マリーン(スペイン)42分
【男子ダブルス】
徐承宰/カン・ミンヒュク(韓国)②〔14−21、21−15、21−17〕1●アストルップ/ラスムセン(デンマーク) 69分
【女子ダブルス】
陳清晨/賈一凡(中国)②〔21−16、21−12〕0●ラハユ/ラマダンティ(インドネシア)42分
【混合ダブルス】
徐承宰/蔡侑玎(韓国)②〔21−17、10−21、21−18〕1●鄭思維/黄雅瓊(中国)59分
取材・文・写真/平野貴也