8月25日に開催されたBWF世界選手権2023(デンマーク・コペンハーゲン)5日目は、各種目準々決勝が行なわれた。日本勢は海外のライバルと激戦を繰り広げ、女子シングルスで3連覇をねらう山口茜、混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗、男子シングルスの奈良岡功大が準決勝に進み、メダル獲得が決まった。
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2回目の出場で初のメダル獲得が決まった奈良岡は、石宇奇(シー・ユーチー/中国)と対戦。序盤から主導権を握って相手を翻ろう。第2ゲームも相手がしつこく打ち続けるドロップを拾い続けて点を取らせず。「タイミングと速さはわかっていた。1回でも多く返して、プレッシャーをかけようと思っていた。拾うのを頑張ってミスをさせようと思っていた」と手応えを示した。終盤に追い上げを受けて20-19と迫られたが、最後は相手の強打がアウト。奈良岡は渾身のガッツポーズでメダル獲得を喜んだ。
西本拳太は、地元デンマークのアンダース・アントンセンに0-2で敗戦。声援で勢いに乗った相手の攻撃を受け続け「今日に関しては、本当にハッキリと、何もできなかった」と完敗を認めた。
山口は、7月下旬のジャパンオープン(Super750)準々決勝で敗れたグレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)に雪辱。ヒザを負傷したトゥンジュンは前回ほどキレのある動きが見られず、ミスを連発。第2ゲームは追い上げられたが、18本で逃げ切った。
奥原希望は、世界ランク1位のアン・セヨン(韓国)を相手に第1ゲームを奪う健闘を見せたが、1-2で逆転負け。負傷明けで課題となっていたフィジカルコンディションが落ちた後半は相手ペースとなったが、コート環境や相手の戦術に対するアジャスト能力の高さを発揮。持てる力を出しきり、試合後は「キツかったけど、楽しかった。2017年(決勝)のシンドゥ戦くらい頑張れた。今の自分の120パーセントを出しきれたんじゃないか」と涙を流した。
渡辺/東野(上写真・手前)は、若手で勢いのあるマレーシアペアに11本、11本で完勝。4大会連続のメダル獲得を決めた。渡辺は「乗らせてしまうと勢いがある。風がある会場なので、引いてしまうと(強打を打たれて)ミスが多くなってしまうのは分かっていた」と先手奪取に重きを置き、点数でリードすることで相手に重圧を与えながら戦った一戦を振り返った。
日本勢にとって、悔しい結果になったのは、女子ダブルスだ。最も選手層の厚い種目だが、メダルなしの結果に終わった。この日のトップバッターを務めた福島由紀/廣田彩花は、ラハユ/ラマダンティ(インドネシア)に1-2で敗れた。コート環境に対応しきれず、相手のサービスまわりで圧倒され、避けたかった低空戦を強いられた立ち上がりに0-8とされた第1ゲームを追いついて地力を見せたが、終盤の長いラリーを落として18-21。
第2ゲームは取り返したが、第3ゲームは6-8から5連続失点で引き離されて10-21。福島は「自分のレシーブミスが多かった。自分がちゃんとコントロールしていかないと点差が離れる」と高めに差し込んでくる相手の球の対応を課題に挙げた。3大会ぶりの出場で8強入りは果たしたが、目指した結果には届かず、悔しさをにじませた。
志田千陽/松山奈未(上写真・右)も第1シードの陳清晨(チェン・チンチェン)/賈一凡(ジャ・イーファン/中国)に1-2で敗戦。相手の前衛である陳清晨を後方に回すラリーはできたが、長身サウスポーでフォアからの強打を持つ賈一凡の前衛を超える球出しに苦戦。最終ゲーム16-17からの4連続失点で敗れた。審判へのあいさつ後、思わずコートを踏むような仕草で悔しさを露わにした志田は「よい試合をしても負けは負け。全部を出しきった結果。世界選手権の結果は、どうにもできないものになったけど、これからどう過ごすか。落ち込まずに、次は絶対にリベンジする気持ちで、もっともっと頑張りたい」とまだ続く五輪レースでの巻き返しを誓った。
25日準々決勝の結果、26日準決勝の対戦カードは以下の通り。
【男子シングルス】
▼準々決勝(8月25日)
プラノイ・H.S.(インド)②〔13−21、21−15、21−16〕1●ビクター・アクセルセン(デンマーク)68分
クンラビット・ビティサラン(タイ)②〔18−21、21−15、21−13〕1●王子維(台湾)81分
奈良岡功大②〔21−10、21−19〕0●石宇奇(中国)48分
アンダース・アントンセン(デンマーク)②〔21−10、21−7〕0●西本拳太44分
▼準決勝(8月26日)
プラノイ・H.S.(インド) − クンラビット・ビティサラン(タイ)
奈良岡功大 – アンダース・アントンセン(デンマーク)
【女子シングルス】
▼準々決勝(8月25日)
アン・セヨン(韓国)②〔21−16、10−21、21−11〕1●奥原希望70分
陳雨菲(中国)②〔21−17、21−12〕0●王祉怡(中国)45分
キャロリーナ・マリーン(スペイン)②〔21−16、21−14〕0●戴資穎(台湾)50分
山口茜②〔21−16、21−18〕0●グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)38分
▼準決勝(8月26日)
アン・セヨン(韓国) − 陳雨菲(中国)
山口茜 – キャロリーナ・マリーン(スペイン)
【男子ダブルス】
▼準々決勝(8月25日)
徐承宰/カン・ミンヒュク(韓国)②〔21−19、21−17〕0●セティアワン/アッサン(インドネシア)35分
アーロン・チア/ソー・ウィーイク(マレーシア)②〔21−10、15−21、21−14〕1●劉雨辰/欧烜屹(中国)50分
王昶/梁偉鏗(中国)②〔21−18、15−21、21−14〕1●マウラナ/フィクリ(インドネシア)56分
アストルップ/ラスムセン(デンマーク)②〔21−18、21−19〕0●シェティ/ランキレッディ(インド)48分
▼準決勝(8月26日)
アーロン・チア/ソー・ウィーイク(マレーシア) − 徐承宰/カン・ミンヒュク(韓国)
アストルップ/ラスムセン(デンマーク) − 王昶/梁偉鏗(中国)
【女子ダブルス】
▼準々決勝(8月25日)
陳清晨/賈一凡(中国)②〔21−15、16−21、21−16〕1●志田千陽/松山奈未68分
鄭雨/張殊賢(中国)②〔17−21、21−17、21−19〕1●タン/ティナー(マレーシア)76分
金昭英/孔熙容(韓国)②〔21−19、21−19〕0●ジョンコパン/ラウィンダ(タイ)54分
ラハユ/ラマダンティ(インドネシア)②〔21−18、13−21、21−10〕1●福島由紀/廣田彩花77分
▼準決勝(8月26日)
陳清晨/賈一凡(中国) − 鄭雨/張殊賢(中国)
金昭英/孔熙容(韓国) − ラハユ/ラマダンティ(インドネシア)
【混合ダブルス】
▼準々決勝(8月25日)
鄭思維/黄雅瓊(中国)②〔21−10、21−6〕0●金ワンホ/鄭ナウン(韓国)27分
蒋振邦/魏雅欣(中国)②〔21−16、21−18〕0●クリスチャンセン/ボエ(デンマーク)44分
徐承宰/蔡侑玎(韓国)②〔21−12、21−16〕0●デチャポル/サプシリー(タイ)41分
渡辺勇大/東野有紗②〔21−11、21−11〕0●チェン・タンジェ/トー・イーウェイ(マレーシア)28分
▼準決勝(8月26日)
鄭思維/黄雅瓊(中国) − 蒋振邦/魏雅欣(中国)
渡辺勇大/東野有紗 − 徐承宰/蔡侑玎(韓国)
取材・文/平野貴也
写真/BADMINTONPHOTO、平野貴也