8月21日にBWF世界選手権2023がデンマーク・コペンハーゲンで開幕した。大会初日は、各種目1回戦が行なわれ、日本代表選手らも登場。海外のライバルたちとしのぎを削った。
男子シングルスの西本拳太(上写真)は、元世界ランキング1位のスリカンス・キダムビ(インド)を相手に2-0のストレートで完勝。第1ゲームは相手の巧みなネットプレーに振り回される場面もあったが、フィジカルの高さを生かしてねばった西本が、次第に試合のペースを手繰り寄せた。
第2ゲームは主導権を渡さず、最後まで攻め切った。西本は「序盤でちょっと捕まえられて、やばいなと思いましたけど、ウォーミングアップの時から動きはいい感覚だった。動きの中で自分からしっかり上回っていこうという気持ちでできたのがよかった」と手応えを話した。
同種目では、奈良岡功大、常山幹太も初戦を突破。右ヒザにテーピングを施してプレーした奈良岡は「ケガも疲労もある」とコンディションが不十分であることを強調したが、試合ではバックハンドで溜めて急に面の角度を変えて放つフェイントショットで会場を沸かせるなど、不調に見せることなく淡々と試合を進めた。
女子シングルスでは、奥原希望(上写真)が日本選手で最初にコートに立った。初戦はベトナムのグエン・トゥイ・リンに2-0で勝利。第1ゲームは動きが硬かったが、インターバルからスピードアップで21-15。
第2ゲームはドライブなどで攻撃を仕掛ける場面が増えたが、第1ゲーム同様に、得点の取り方は相手のコントロールミスまで待てたラリーが多かったが、自分から仕掛けて決めきる攻撃の迫力は、まだ不足。それでも3月のスイスオープン以来5カ月ぶりとなる勝利を挙げて「チャンスを自分でつかみにいくところは、まだ。相手のちょっとしたミステイクなショットに対して、自分が捕らえに行くことは、ジャパンオープンよりも圧倒的にできている部分かなと思います」と約1カ月前からの前進に手応えを示した。
翌22日の2回戦では、2017年と19年の決勝戦で対戦したプサルラ・V.シンドゥ(インド)と対戦。強豪相手にどこまで戦えるか注目される。
男子ダブルスの古賀輝(上写真・右)/齋藤太一は、ブラジルの兄弟ペアにストレートで勝利。途中から会場の風など環境の特徴を考えて、東京五輪の王者である王齊麟(ワン・チーリン)/李洋(リー・ヤン/台湾)との2回戦に向けたシミュレーションも兼ねるなど、大きな山場に向けて余念がなかった。
日本勢で唯一敗退となったのは、混合ダブルスの金子祐樹/松友美佐紀(上写真・手前)。インドネシアの長身ペアにストレートで敗戦した。
攻められては点を失い、攻めても主導権を奪われる苦しい展開から抜け出せず。試合後は言葉を絞り出して「悔しいです」と話した松友に、世界選手権への特別な思いによるものかと質問したが、答えに詰まった。「常に同じような気持ちでは臨んでいる。世界選手権だからということはない」と否定したが、プレーの改善に手応えを感じている中で結果が出ない苦しみが続いていることについて聞くと「多分、2人とも少し前に比べればプレーの中での手応えだったりがあると思う。それが、なかなかうまくかみ合ってないことが続いてると思う。プレーしている中で感じていることなので……」と話し、涙を流した。
急激に底上げが進んでいる日本の混合ダブルスにおいて、A代表4組の中でも五輪レースにおいては一番厳しい状況。ショックの大きさが見て取れた。
多忙な五輪レースにおける大舞台。実際に始まってみると、プレー、コメント、表情のいたる所に各選手の強い意気込みが感じられる。大会は、まだ始まったばかり。22日は、奥原と混合ダブルスの緑川大輝/齋藤夏が出場。引き続き、日本勢の活躍が期待される。
21日の結果、22日の対戦カードは以下の通り。
【男子シングルス】
▼1回戦(8月21日)
常山幹太②〔21−8、21−8〕0●アダム・ハテーム・エルガマル(エジプト)40分
西本拳太②〔21−14、21−14〕0●スリカンス・キダムビ(インド)47分
奈良岡功大②〔21−7、21−10〕0●ルカ・ワ―バー(オーストリア)33分
【女子シングルス】
▼1回戦(8月21日)
奥原希望②〔21−15、21−12〕0●グエン・トゥイ・リン(ベトナム)40分
▼2回戦(8月22日)
奥原希望 – プサルラ・V.シンドゥ(インド)
【男子ダブルス】
▼1回戦(8月21日)
古賀輝/齋藤太一②〔21−17、21−7〕0●ファリアス/ファリアス(ブラジル)34分
【混合ダブルス】
▼1回戦(8月21日)
金子祐樹/松友美佐紀●0〔14−21、12−21〕②フェルディナンシャー/ウィジャジャ(インドネシア)35分
▼1回戦(8月22日)
緑川大輝/齋藤夏 – リバルディ/メンタリ(インドネシア)
取材・構成・写真/平野貴也