全国の実業団チームが日本一を争う第73回全日本実業団選手権(愛知・日本ガイシホールほか)が6月21日に開幕。大会3日目の23日は、予選リーグを勝ち抜いたチームや前回大会上位のシードチームによる決勝トーナメントが行なわれ、男女のベスト8が出そろった。男子は連覇をねらうBIPROGYを筆頭に、トナミ運輸、NTT東日本、日立情報通信エンジニアリングなどS/Jリーグ上位勢が順当に勝ち進んでいる。
【ダイジェスト】
決勝トーナメント3回戦で東海興業を下したBIPROGYの五十嵐主将は「目標は優勝。ただ、前回と違って今回は各チームにA代表もいる。厳しい戦いになると思いますが、それでもどん欲に勝ちにいきたい。大会前には千葉で合宿をしましたが、いい練習もできたし、チームもいい雰囲気で臨めている」と手応えを語った。このほか、金沢学院クラブとコンサドーレのS/Jリーグ1部同士の対決は、3-2で金沢学院クラブに軍配が上がった 。
女子も連覇をねらうヨネックスなど上位候補が順当に準々決勝へ進出したが、優勝候補の一角である再春館製薬所は、Cheerful鳥取に辛勝。日本A代表の志田千陽/松山奈未を温存し、山口茜を第2シングルスに回したオーダーは、若手で勝ち切る意図の表れだった。
しかし、第1ダブルスの加藤佑奈/廣上瑠依が0-2で桶田彩乃/種岡遥に敗れると、第2ダブルスもストレート負け。後がない第1シングルスも明地陽菜が1ゲームを落として敗戦寸前に追い込まれたが、第2ゲームでリズムを取り戻して逆転勝ち。山口が勝ってつなぎ、最後は第3シングルスの金廣美希がファイナルゲーム12本で競り勝ち、起死回生の8強進出となった。
池田雄一監督は「生き延びた……という試合。相手がしっかりと実力を出したのに対し、子どものような試合をしてしまった。負け方がよくないから、こんな流れになった。技術や戦術でうまくいかないなら、球に食らいつく、相手よりミスしない、シンプルなことが大事。うまくやろうと考え続けて切り替えられていなかった」と厳しい表情で話した。
女子の決勝トーナメント1回戦では、もう一つ激戦が展開された。S/Jリーグ勢対決のACT SAIKYOと北都銀行の一戦だ。第1ダブルスは、日本A代表の松本麻佑/永原和可那を起用した北都銀行が制したが、その後はもつれて2-2で第3シングルスへ。ACT SAIKYOは、久湊菜々が2-0で日本代表の川上紗恵奈を破り、スタンドに駆けつけた応援団の期待に応えた。
久湊は、昨年の日本ランキングサーキットでは川上にいいように振り回されたが、「実力では相手が絶対に上。でも、ビビって負けるのは嫌。ワンチャンスをつかみにいく気持ちで試合に入れた」と話した通り、相手に逆を突かれる場面もありながら攻める姿勢を崩さなかった。終盤も相手のミスを待つ絶妙なラリーで流れを渡さず。「ずっと結果を出せず、昨年の団体戦は一度も出させてもらっていない。自分もやれるんだぞと、自分自身を信じて足を動かし続けた」と振り返る会心の勝利だった。
そのほか、準々決勝を逃したチームも、爪痕を残した。男子では東海興業の西野勝志がBIPROGYの森口航士朗をファイナルゲーム20本で撃破。チームは1-3で敗れたが一矢報いた。女子では、山陰合同銀行が1-3でBIPROGYに敗戦も、第1ダブルスで髙崎夏実/田部真唯がファイナルゲーム18本で日本B代表の中西貴映/岩永鈴を破る活躍。
連覇をねらうヨネックスに敗れた豊田通商も、第2ダブルスの鈴木ゆうき/植村理央が2-1で保原彩夏/杉山明日香に逆転勝利を飾る健闘。豊田通商は予選リーグで今シーズンからS/Jリーグに新規参入するPLENTY GLOBAL LINXを下しており、元日本代表の藤本小春(旧姓:米元)と佐藤冴香が指導スタッフとしてチームをけん引する中、収穫のある大会となった。
明日24日は、男女ともに準々決勝と準決勝を実施。25日に決勝戦を行なう。
男子・決勝トーナメント
▼3回戦(6月23日)
BIPROGY 3−1 東海興業
JR北海道 3−0 三菱電機伊丹
三菱自動車京都 3−0 丸杉
トナミ運輸 3−0 大同特殊鋼
日立情報通信エンジニアリング 3−1 UBE
金沢学院クラブ 3−2 コンサドーレ
ジェイテクト 3−0 東北マークス
NTT東日本 3−0 豊田通商
▼準々決勝(6月24日)
BIPROGY − JR北海道
トナミ運輸 − 三菱自動車京都
日立情報通信エンジニアリング − 金沢学院クラブ
NTT東日本 − ジェイテクト
女子・決勝トーナメント
▼1回戦(6月23日)
ヨネックス 3−1 豊田通商
レゾナック 3−2 東海興業
BIPROGY 3−1 山陰合同銀行
ACT SAIKYO 3−2 北都銀行
NTT東日本 3−1 広島ガス
丸杉 3−0 百十四銀行
七十七銀行 3−0 金沢学院クラブ
再春館製薬所 3−2 Cheerful鳥取
▼準々決勝(6月24日)
ヨネックス – レゾナック
ACT SAIKYO − BIPROGY
NTT東日本 – 丸杉
再春館製薬所 – 七十七銀行
取材・文/平野貴也
構成/バドミントン・マガジン編集部
写真/平野貴也