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【国内ニュース】新体制について「バドミントン協会が変われば、日本のスポーツ界が変わるということを信じた布陣」(村井満会長)

日本バドミントン協会は、6月18日、役員改選に伴い、新たな役員を発表。新会長をはじめ、新理事・新監事の就任記者会見を行なった。会見では、各役員が就任のあいさつをするとともに、村井満会長が新体制をつくるにあたってのねらいなどを明らかにした。

日本バドミントン協会の新体制について説明する村井満会長(中央)

下記は、記者会見での村井満会長のコメント。

本日、日本バドミントン協会の代表理事そして会長を拝命することになりました。今回、私の会長選出とともに新理事会、監事も新しいチームの発足となりました。ご存じのように、日本バドミントン協会は大変な不祥事にさらされておりました。日本の代表強化の公金を横領する事案があり、そしてそれを社会に素早く開示することなく、時間を要していて、隠蔽とも解されるような事案となりました。こうしたコンプライアンス事案を二度と繰り返さないために、どのようなガバナンスが大切かということを議論してきた結果、新たなチーム布陣を確定した次第です。

5つのポイントでご説明します。

1つめは、理事の定足数を半減しました。今までは20名近くの理事がいて、本来理事は業務執行を監督する役割ですが、監督する人間が自ら業務執行を行なっていたがゆえに、不祥事があった場合、その処分を軽くする、もしくはその事案を隠蔽するのではないかという疑念を社会から持たれていました。これは監督すべき理事会が自ら業務執行を兼任するからでありました。結果的には、業務執行は多岐にわたるので、多くの人員を要することになりました。そういう意味で、今回は、業務執行を行なうのは、会長である私と、副会長の朝倉(康善)の二人となります。人員を半減して監督機能を強化しました。

では、監督する人がどういう布陣かというのが2つめです。プロの目、社会の目から徹底的に監督するという考え方です。会計のプロである公認会計士の目から、法律のプロである弁護士の目から、もしくは企業経営者の目から、もしくはESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)など様々な社会課題を解決するプロの目から見たら、どうなるか。こうしたプロフェッショナルが、今後、日本バドミントン協会を監督することになります。中央競技団体向けのスポーツガバナンスコードでは、外部理事は25パーセントというような指導ガイドラインがあります。今回、業務執行を行なわない非常勤の理事が8割。この数字は、日本のスポーツ団体においては画期的なガバナンスだろうと考えられます。

3点目は、女性50パーセントという比率です。日本バドミントン協会の登録会員の比率は、女性、男性が半々です。山口茜選手の存在を出すまでもなく、世界トップレベルで女性選手たちがけん引している状況で、バドミントン界の縮図であるわれわれ司令塔は、男女半々であるべきということを当初から想定しておりました。そういう意味では、スポーツガバナンスコードのガイドラインにある女性の割合40パーセントをどうやりくりするのかが日本のスポーツ団体の現状ではありますが、われわれは50パーセントというところで、スポーツ団体として画期的なひとつのガバナンスとなります。

4つめとして、ボードメンバーの8割は、バドミントン界の外側にいる方が携わるわけですが、バドミントンやスポーツに造詣の深い方々が入っています。学生時代にバドミントン部に所属した方もいますし、池田信太郎さんはアスリート委員会という立場から入っています。また、他のスポーツ団体のマネージメントや経営管理、統括、監事、監査など様々な立場でスポーツと関わっている人がほとんどで、スポーツに対して、大変造詣が深いチーム編成となっています。

5つめは、監事に関してです。本来、理事は現場執行を監督し、監事は理事を監督する。監督の役割分担の中で、きわめて重要な役割を持つのが監事になります。功をなした方々の役職というケースも多々ありますが、今回は公益法人のマネージメント経験をもつ方など幹事側にも公認会計士、税理士の方を配しています。そういう意味では、監事もプロの目で監督していただき、いい緊張関係の中でマネージメントしていこうというねらいがあります。

この日本バドミントン協会が変われば、おそらく日本のスポーツ界は変わるということを信じた布陣となっています。

■以下は記者会見での村井会長との主な質疑応答。

――協会としては、1年後にパリ五輪を控えている。強化や選手の環境整備などに関しては、どのように考えていますか。

村井 現実的には、パリで結果を出していくということが多くの国民の皆さんに期待されていることだと思いますし、われわれボードメンバーの重要なテーマだと思っています。少し詳細な話をすると、財政的に非常に厳しい現状があります。過去の不祥事があり、強化予算の2割カットというようなこともありますが、実は国全体の強化助成金の全体が小さくなっているところでの2割カットですので、過去の五輪自国開催時の強化予算の半減くらいで回していかなければならない現状があります。パリでしっかり戦っていくためには、われわれの価値をしっかり磨いて、その価値や可能性を社会に伝えていく中で、財政的な土台や基盤を確立するということを、強化と同時に進めていかなければならないと思っております。実際の強化に関しては、選手が五輪レースなどを戦っていますので、その予算は維持しながら、他のところでコストカットに努力していくことで、できる限り選手を守りたいという思いです。

また、こうやって理事会メンバーを大きく刷新しましたが、代表チームのコーチングスタッフは変えていません。そういう意味では、強化プランの連続性を阻害しないような形で進めていくというのがポイントです。

もう1点は、今回、理事会のメンバーに池田信太郎さんが入ったように、理事会に現役選手やOB選手によるアスリート委員会を代表するキャスティングを行なっています。現場では、選手の様々な待遇改善やサポートなど様々な要請・要望がありますが、それがこちらに入らない可能性がありました。今回は、S/Jリーグの1部、2部のすべての企業から代表者が参加して、選手会を組成しています。それから、オリンピアンを中心とした10名程度で組成されているOBの選手会を統合した形の委員会の代表として池田さんが理事に入っているので、強化のためにどのような視点が必要なのかというのが、ダイレクトにトップまで伝わってくる。これも、強化に関する非常に重要な改革のポイントかなと思います。

――東京五輪時のように、国からの助成金を期待できない中で、協会としてどのように財政基盤をつくっていくかなどお考えがあれば、お聞かせください。

村井 一番重要なテーマの一つだと思っています。今まで3本部制だったのを、4本部制にして、新たに企画本部を設けました。スポンサー獲得や放映権獲得の専門部署です。われわれの価値を社会にしっかり伝えていきながら、社会とともにスポーツを支えていくような、スポンサーシップの部署を新たに創設しました。また、社会とともにという意味では、バドミントン界として、グローバルレベルで様々な社会課題に取り組んで改善していくような活動を進めてまいりたいと思っています。共創するパートナーの皆さんと、次のバドミントン界をつくっていきたいと思います。

――理事の方々の選考プロセスに関して教えてください。

村井 理事会において、役員と、候補者選出委員会のメンバーの審議をしました。委員長に鈴木大地さん。上場企業等の役員等候補者選出委員会などで十分な経験を持つ方、選考プロセスがルールに基づいているかなどを判断できる弁護士の方、スポーツ界の見識のある方を選ぼうという考え方を理事会で議論し、そういう考え方に基づいたメンバーを決定し、理事会で認めていただいたというのが最初のステップです。細かいところまで透明性の高い役員選出ができるような委員会メンバーを推薦する段階をまず決定しました。私は委員会に入ってはいませんので、役員候補者選定のプロセスは見ていませんが、本日の評議員会によれば、その委員会では、相当細かく、どういった能力を持った人材に役員になってもらいたいかが議論され、その中で要件に合う人材を紹介し合ったりということだと思います。当然、私自身が会長になることを前提にしながら委員会の議論をしていましたので、私の方からも「どういう人を推薦されますか」と聞いたり、私から推薦するようなケースもありました。今日、ここにいる面々とは、初めて会う方もいらっしゃいます。そういう意味では、人物ありきではなく、要件ありきで議論して、最終的に評議員会で承認されたということです。

取材・文/バドミントン・マガジン編集部

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