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【日本ランキングサーキット】教員と生徒の異色ペア、1回戦突破ならずも「女性同士の視点から支える」<大会サイドストーリー>

国内のランキング上位選手が集う2023日本ランキングサーキット(5月27日-31日/埼玉・サイデン化学アリーナ)。ここでは、1回戦が行なわれた大会初日から、記者が取材したサイドストーリーをお届けする。

女子ダブルスで、教員と生徒の異色ペア

日本ランキングサーキットに出場した重信萌夏(柳井商工高教員/左)と田口真彩(柳井商工高)

5月27日に埼玉県のサイデン化学アリーナで開幕したバドミントンの日本ランキングサーキットに、先生と生徒の女子ダブルスペアが出場した。先生は、3月まで七十七銀行の実業団選手として活躍していた重信萌夏だ。今春から母校である柳井商工高校(山口県)の保健体育の教員になり、部活動では後輩の指導に当たっている。これまで国内大会を選手として戦ってきたことで、大会の参加資格を持っていたため、指導者としてベンチに座るのではなく、生徒である田口真彩(3年)とのペアで選手として大会に参加。重信は「2人ともポイントを持っているので(高校生が社会人が多く参加する)ランキングサーキットに出られれば、いい経験になるということで、竹光唯至監督と話をして出ることになりました」と経緯を説明した。

重信とペアを組んだ田口は、2月の全国高校選抜で団体戦優勝に貢献したチームの主将。個人戦でも1年生時に女子ダブルスでインターハイを制している有望選手だ。高校生同士で出場することもできたが、出場権を持っている宮崎友花(2年)は、女子シングルスで初優勝を狙う立場。複数種目にエントリーさせると負担が大きくなる。宮崎をシングルスに専念させ、なおかつ田口にも社会人に挑む経験をさせるためのペアリングだった。経験豊富な重信と、将来性のある田口の組み合わせ。相手は、重信の特長も知る毛利未佳(七十七銀行)と今井優歩(YAMATO奈良)のペアだった。

試合では、相手が重信に球を集めてきた。重信は、2月の国内リーグで選手生活を引退してからは、教員としての歩みを始める準備に取り掛かっており、試合勘が鈍っていた。相手の配球に振り回され「本当は、自分が引っ張っていかなければいけなかったのに、引っ張ってもらう形になってしまったのが悔しいです」と苦笑いを浮かべた。相手は、毛利の強打と今井の球さばきの組み合わせが絶妙。田口も「相手をかわしたいと思って(相手前衛の今井への返球を避け、相手後衛の)毛利さんを後ろに下げてしまって、打たせてしまった。自分の得意な部分を出すより、もっと、相手が苦手とする部分を徹底してねらえばよかったと思います」と相手ペースにはまって抜け出せなかった展開を反省していた。粘りを見せた部分もあるが、試合は0-2で敗れた。

即席ペアでの挑戦は、おそらく今大会限りとなる。試合はうまくいかなかったが、田口は「普段は(体育の)先生ですけど、コートの中では先輩。頼りにしていました。(これまでは男性の指導者のみのチーム構成だったが)女性コーチだから分かってもらえるという部分もあるんじゃないかと思います」と、心強い先輩が指導者としてチームに加わることを歓迎した。

現役引退後の進路を悩み、恩師の竹光監督と話をする中でチームに誘われたという重信は、教員免許は取得していたものの、授業を受け持つ自分をイメージできずに躊躇していたという。しかし「竹光先生となら、一緒に先生をやって、みんなと日本一を狙いたいという思いもあり、やろうと決めました。竹光先生と同じようにはできませんが、実業団でやってきた経験を伝えたり、女性同士の視点を持って接したり、違う方面からチームを支えられたらいいなと思っています」と決意を固めて新たな挑戦を始めている。

柳井商工は、全国高校選抜とインターハイで全国大会団体戦を5連続優勝している強豪校。

ともに戦った経験も、今後のコミュニケーションの糧。次は、教員と生徒として、夏のインターハイへ。コーチと選手の関係で、高みをめざす。

取材・文&写真/平野貴也

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