8月28日に開催されたBWF世界選手権2022(東京体育館)最終日は、各種目決勝戦が行なわれた。世界トップの精鋭たちによる至高の戦い。ここでは、女子シングルスの決勝戦をダイジェストでお伝えする。
【女子シングルス】
2021年世界選手権優勝の山口茜。そして、2021年東京オリンピックで金メダルをつかんだ陳雨菲(チェン・ユーフェイ/中国)。1年の間に2人の世界一が誕生したが、その頂点を極めた2人が、世界選手権決勝の舞台でついに激突。真の世界一の座をかけて、激しいラリーの応酬を見せた。
第1ゲーム前半は拮抗した。緊張の空気が流れる会場で山口がスマッシュからタッチの速いプッシュを叩き込めば、陳雨菲は鋭いカットを一発で沈めるなど、互いの持ち味を存分に発揮。ただ、前日と同じく、中央のメインコートで展開された決勝は、陳雨菲のエンドの上を舞う風が、微妙な感覚を狂わせていく。「第1ゲームは相手がエンドを選びました。昨日(準決勝)の自分と同じで、取られても仕方がないという感じだった」と山口。山口が11-8でリードして折り返すと、クロスカットやダイビングレシーブで流れを引き寄せ21-12。山口が先制し、陳雨菲にプレッシャーをかける。
しかし、第2ゲームは陳雨菲が逆襲。「相手が力強く押し返すのに対し、自分も攻め急いでしまった」(山口)と、前半にスピードを上げる五輪女王が先に抜け出し、21-10で奪い返す。連戦の激闘で疲労が溜まっている陳雨菲だが、国を背負う第一人者の意地が、ねばり強いラリーにつながった。
取ったほうが世界一となる最終ゲーム。「今までの自分の中で、一球一球に集中できた」と語る山口のプレーは、速く、そして強かった。ラリーは陳雨菲のミスで終わることが増え、ポイントは3-1、5-1、8-1と山口に加算される。「たくさん応援していただいたのがすごく力になった」と、世界一に近づく山口を、会場の拍手も後押しした。20-14。山口がチャンピオンシップポイントをつかむと、最後は陳雨菲のカットがネットにかかり、山口が世界選手権連覇を達成。会場に響く万雷の拍手の中心で、山口は照れくさそうな笑顔を浮かべ、母国でつかんだ世界一を喜んだ。
▼決勝戦
山口茜②〔21−12、10−21、21−14〕1●陳雨菲(中国)68分
※2回目の優勝
取材・文/バドミントン・マガジン編集部
写真/菅原淳