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1948年にスタートしたトマス杯の歴史の中で、過去に優勝カップを掲げたのは5カ国のみ。最多優勝14回の実績を持つインドネシア、ト杯の初代王者として伝統的な強さを誇るマレーシア、そして1980年以降に5連覇を含む10回の優勝を飾っている中国。2010年代に入ってようやく日本が4カ国目の世界一を成し遂げ、2016年にはデンマークがヨーロッパに初めてト杯を持ち帰った。そして今回、長い歴史に新たな名前を刻んだのが、若い力が光ったインドだ。
インド初優勝の起点を作ったのは、第1シングルス。インドネシアは東京オリンピック銅メダルのアンソニー・S・ギンティンに勝利を託し、インドは20歳のラクシャ・センがコートに立った。ギンティンは2日前の準決勝で、日本の桃田賢斗に勝利。一方のセンは、準決勝のデンマーク戦でビクター・アクセルセンに0-2で完敗。勢い、そして大舞台での経験値から見ても、エース勝負はギンティン有利に思われた。
第1ゲームはその予想通り、ギンティンが21-8で先制。なかなかリズムをつくれなかったセンに対して、ギンティンが貫禄を見せた。しかし、ここで気持ちを立て直したセンは、第2ゲームをリードしながら試合を進め、21-17で奪い返す。すると、最終ゲームは攻撃の姿勢を崩さないギンティンに対して、センが我慢強く戦った。一時は8-12と先行されたが、ここから5連続ポイントで逆転。その勢いのままポイントを重ね、21-16で勝利。インドが貴重な先制ポイントを手にした。
ホープの活躍で大いに盛り上がるインド。第1ダブルスは、インドネシアのアッサン(上写真・左)/スカムルヨとシェティ/ランキレッディの勝負となったが、ここで勝敗を分けたのは爆発力だった。第1ゲームはインドネシアペアが21-18で先制したが、第2ゲームはシェティ/ランキレッディが14-19の劣勢から猛攻を仕掛け20オール。最後も気迫のプレーで押し切り、インドペアが23-21で制してファイナルゲームに突入する。
最終ゲームに入っても、お互い激しいラリーの応酬でポイントを重ねた。先に10-7でリードしたインドペアだが、すかさずアッサン/スカムルヨが5連続ポイントで14-11。すると今度は、シェティ(上写真・左)/ランキレッディが16オールに持ち込んで、終盤はお互い点の取り合いに。一つのミスが勝敗につながる緊張の場面、ここで勝負強さを発揮したのはシェティ/ランキレッディだ。17-18から一気に3連続得点。そして、ついに最後の1点もつかみとり、シェティ/ランキレッディが21-19でアッサン/スカムルヨを撃破。殊勲の勝利を手にした。
第1シングルス、第1ダブルスともに、第1ゲームを奪われてからの逆転勝利。完全に勢いに乗ったインドが2-0で優勝に王手をかけると、第2シングルスに登場したのはスリカンス・キダムビ(上写真)。世界ランク1位にも輝いたことがあるインドの第一人者だが、現在はラクシャ・センに抜かれ2番手の位置。本人にとっては不本意かもしれないが、今回ばかりはスリカンスがそのポジションにいたことが功を奏し、決勝まで勝ち上がっている。
インドネシアは、絶対に負けれない状況でジョナタン・クリスティの奮起に期待。スリカンスとジョナタン、トップランカー同士の試合が始まると、前半のペースはスリカンスがつかむ。長い手足から放つ鋭いスマッシュで、ジョナタンのリズムを狂わした。第1ゲームは15オールから6連続ポイントで突き放したスリカンスが、21-15で先制する。
第2ゲームに入っても流れはスリカンスに傾いたまま。ジョナタンのボディとサイドにスマッシュを打ち分け、12-8とリード。中盤、意地を見せるジョナタンが6連続得点で逆転に成功したが、初優勝を目前とするインドの勢いを止めることはできない。じわじわとスリカンスが点差を詰めると、20オール。緊迫した場面からスマッシュ&ネットに徹したスリカンスが、最後は豪快なスマッシュを打ち込んで23-21で勝利! 伝統国を3-0で退けたインドが、トマス杯の頂点に君臨した。
15日の決勝戦の結果は以下の通り。
トマス杯
▼決勝(5月15日)
MS1○ラクシャ・セン②〔8−21、21−17、21−16〕1●アンソニー・S・ギンティン65分
MD1○シェティ/ランキレッディ②〔18−21、23−21、21−19〕1●アッサン/スカムルヨ73分
MS2○スリカンス・キダムビ②〔21−15、23−21〕0●ジョナタン・クリスティ48分
文/バドミントン・マガジン編集部
写真/BADMINTONPHOTO