東京2020オリンピックのバドミントン競技は、7月28日、5日目の試合が実施された。18時以降のナイトセッションでは、男子シングルスの予選リーグが行なわれ、世界1位の桃田賢斗が韓国の許侊熙(ホ・クァンヒ)に敗れ、予選リーグで敗退する波乱があった。常山幹太は白星を飾り、決勝トーナメント進出を決めている。
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まさかの敗退だった。許侊熙(上写真)は世界ランキング38位、過去の対戦は桃田が3戦全勝。負ける要素はないかと思われた。
しかし、相手に失うものはなく、許侊熙はどこからでも剛打を繰り出してきた。第1ゲーム、桃田は10-5でリードしていたが、そこから連続得点を許し、試合の流れを失った。
得意とするネット際の勝負でも、許侊熙は果敢に上から押し込み、世界ナンバーワンも防戦一方にならざるを得なかった。それでも、チャンスがなかったわけではない。第2ゲームは12-15からスピードを上げて攻撃に転じると、5連続得点で17-15と逆転。しかし、許侊熙もひるまず、最後まで力強くスマッシュをクロス、ストレートと打ち切った。
勝った許侊熙は、試合後、桃田のプレーについて「私はもともと攻撃が持ち味ですが、より攻撃的にいきました。桃田選手は守備がとてもうまい選手ですが、私が攻撃的にプレーしたことで、守備に多少不安があったように見えました」と語っている。
一方、桃田は「相手の強打に気持ちが押されてしまって、少しでも早く追い込みたいという気持ちで、クリアーが低くなってしまった。ねらわれているとわかっていたんですけど、高さを変えて落ち着かせる勇気と実力がなかったかなと思います」と振り返った。また、持ち味でもある修正力を発揮できなかった要因について「負けたくない、勝ちたいと思いすぎて空回りしてしまった部分はあるかなと思います」と続けた。
それでも、目にうっすらと涙を浮かべながら「つらいことやいろいろなことがあったんですけど、たくさんの人のおかげで、こうやってコートに戻ってこられて、憧れの舞台に立てた。いい結果は出せなかったですけど、皆さんに感謝したいです」と話す姿は、負けてもなお、バドミントン界を背負うナンバーワンの品格を感じさせた。
常山幹太は世界ランキング49位のブラジル選手にストレートで勝利。決勝トーナメント進出を決めている。常山は29日、アンソニー・S・ギンティン(インドネシア)と対戦する。
【男子シングルス】
常山幹太(日本)②〔21−14、21−8〕0●イゴール・コエーリョ(ブラジル)41分
桃田賢斗●0〔15−21、19−21〕②許侊熙(韓国)52分
取材・文/バドミントン・マガジン編集部
写真/Getty Images