ミズノのバドミントンシューズといえば、素早い蹴り出しを実現するWAVE CLAWシリーズと、安定性とパワーが優れたWAVE FANGシリーズ。この2つのシリーズに、いよいよミズノの知見が結集した新素材MIZUNO ENERZYが搭載された新たなシューズが登場する。MIZUNO ENERZYの驚くべき機能と新シューズの開発秘話に迫った。
2020年1月、厚底シューズが席巻する箱根駅伝で、ミズノの真っ白なプロトタイプのシューズを履いたランナーが10区区間賞を獲得したのは、駅伝ファンの間でちょっとした話題となった。このとき、彼が履いていたシューズに搭載されていたのが、ミズノエナジーという反発性に優れた新素材だ。
ミズノエナジーは、ミズノが創業以来、さまざまなスポーツで、どうしたら人のパフォーマンスを上げられるかを追求し、研究し続けてきた中で得られた知見を活用して開発された。メカニズムとしては、地面に足を着いたときにシューズがトランポリンのように高く跳ね返してくれるイメージだ。2年以上の開発期間を経て、現在、様々な競技用シューズに、このミズノエナジーが使われている。
そして、いよいよバドミントンでも、この優れた反発性を持つミズノエナジーが搭載されたシューズがデビューした。『WAVE FANG ZERO 2』と『WAVE CLAW 2』。トッププレーヤーもその性能を認め、高く評価するシューズだが、開発にはバドミントン競技ならではのハードルもあった。開発担当の八幡健太郎さんは「動きが激しく、加わる力も大きいバドミントンの競技特性に合ったチューニングをするのが困難なところでした」と語る。
高い反発を得るには、素材をより大きく変形させ、そのエネルギーをロスなく反発力に変えることが必要で、ミズノエナジーはこれまでにない柔らかさと反発性を持ち合わせている。「柔らかさを出すためには、ある程度ソール部分に厚みが必要になるのですが、バドミントンの選手は地面をしっかり足でとらえる“地面感”を大切にしていますし、あまり厚いと不安定感にもつながる」という懸念事項もあった。
そのため、バドミントンの動きに加え、プレースタイルに合わせて、2種類の違うミズノエナジーを適材適所で組み合わせるという試行錯誤を行なった。2つのモデルに関して、それぞれミズノエナジーやミズノの技術を適材適所で設計していったのだ。
シューズのテストには奥原希望らトップ選手が加わり、何度も調整を重ねた。例えば、『WAVE CLAW 2』。開発にも携わった企画担当の萩生田浩平さんは「ミズノエナジーの特長は柔らかさと反発性ですが、沈みこみすぎると奥原選手が次の動きに移るイメージとフィットしないと。硬さや厚みなど何度も調整して、何足もテストしてもらいました」と、その過程を振り返る。『WAVE FANG ZERO 2』も同様だ。多くの選手の声を聞きながら、かつてない高い反発性と安定性を兼ね備えたバドミントンシューズが完成した。
以下は、新モデルを使用する選手およびコーチのコメント。
奥原希望(太陽ホールディングス) ※WAVE CLAW 2を使用予定
求めたのは軽さとスピード。一歩目の蹴り出しが速くなった
「全英オープンまでは『WAVE CLAW』を着用していましたが、夏以降の大会ではミズノエナジーを搭載した『WAVE CLAW 2』を履く予定です。ミズノのシューズに対しては、とても信頼を寄せ
ているので、現状の『WAVE CLAW』でも十分満足しているのですが、ミズノエナジーという材料の話を聞いたときから、機能に興味を持ちましたし、テスト段階からすごくポジティブでした。
私のプレースタイルの武器は、皆さんご存知のようにフットワークです。さらに今、重点的に取り組んでいるのがコート内スピードを上げるという部分で、そこで世界で勝負しています。その意味で、私にとってシューズは本当に重要なアイテムになっています。スピードを重要視している私にとって、シューズと足の一体感は絶対条件。それにプラスして、激しい動きでも衝撃から守ってくれるクッション性やホールド感も求めています。
新しい『WAVE CLAW 2』を何度かテストする段階でリクエストしたのは、柔らかさと蹴り出しのスピードのバランスですね。最初からクッション性がずば抜けている感触でしたが、私自身のプレーとしては一歩目の蹴り出しをスピーディーにしたいので、足を着いたときの力が吸収されすぎず、反発につながってほしい。そのバランス調整を何度かしていただきました。
シューズは、機能はもちろん履き心地も重要ですから、自分のフィーリングを大事にしています。その意味で、私自身は大舞台に備えて、最高のシューズを準備できたなと思っています。皆さんにも使いやすいシューズを選んでほしいので、ぜひ一度履いてみてほしいですね」
西本拳太(岐阜県バドミントン協会) ※WAVE FANG ZERO 2を使用
ジャンプして着地後、一歩目のレスポンスがすごい!
「今年4月から履き始めていますが、自分の足にもプレーにもフィットしているなと感じています。ジャンプ力も5センチくらい上がっているんじゃないかな。それくらいの感覚はありますが、自分としてはジャンプ時以上に、着地して一歩目で前に行くときのレスポンスがすごいというのが一番。着地時、クッションがあることで衝撃を吸収してくれるのですが、そのクッション性がよく、素速く前にダッシュできる。『バンバンッ!』というイメージです。
実は、ベロとアッパーが一体化したブーティ構造のシューズを履くのが初めてだったので、最初、違和感があるのかなと思ったのですが、すぐにフィットしました。ホールド感もあり、サイドの動きにも、前への動きにも安心感があります。男子シングルスの激しいプレーはもちろん、ダブルスでジャンプしたあとサイドのドライブに入るなどの動きにも、すごくレスポンスがいいです。特に男性プレーヤーに試してほしいですね」
早川賢一(日本ユニシス コーチ) ※WAVE FANG ZERO 2を使用
これまで履いてきた中でも最高のクッション性
「『WAVE FANG ZERO 2』を履いていますが、カカト部分のクッション性がすごくよくて、これまで履いてきた中でも最高のクッション性かなと思います。さらに、くるぶし部分のサイドのホールド感もあり、フィットしている。カカト部分が守られているし、安定性を感じます。特に、男子選手はジャンプする動きが多いので、クッション性があって衝撃吸収してくれるシューズはケガの予防にもいいと思います。
また、個人的にシューズに一番求めているのはグリップ性。ダブルスはターンする動きが多く、前後だけでなく左右にターンする動きも多いのですが、FANGシリーズはグリップ性もいいので、ジャンプして着地したあと、すぐにサイドにも前後にも動き出せる。レスポンスのよさも感じます」
※選手個人の感想です。
WAVE CLAW 2 ※奥原希望選手使用予定モデル
「軽量、スピードがコンセプトの7月発売予定のWAVE CLAW後継モデル。母指球部にミズノエナジーを搭載することで、素早い蹴り出しをサポートします」(企画開発・萩生田さん)
WAVE FANG ZERO 2 ※西本拳太選手使用モデル
「今年2月から発売されたモデル。バドミントンシューズとして初めてミズノエナジーを搭載。FANGシリーズのコンセプトである安定性とグリップ性のベースにエナジーを搭載することで、さらなる強い蹴り出しを向上しています」(企画開発・萩生田さん)
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文/バドミントン・マガジン編集部