5月22日、BWF(世界バドミントン連盟)は年次総会を開催した。同総会では2021年から2025年までのBWF会長、副会長、パラバドミントン担当ら各役員・理事の改選を行なったほか、インドネシア協会とモルディブ協会が提案した新スコアリングシステム変更に関する投票も実施されている。
役員の改選では、現BWF会長のポール・エリック・ホイヤー氏(デンマーク)、同副会長のクーニンパタマ・リスワッタラクル氏(タイ)、パラバドミントン担当のポール・クルゾ氏(スイス)の再選が決定。理事では、日本バドミントン協会専務理事・銭谷欽治氏の続投も決定している。
現行の21点3ゲーム制のスコアリアングシステムから、11点5ゲーム制の新システム変更に関する投票では、ルール改定に必要な賛成数(過半数の3分の2)を得ることができず、今回の投票による新システムの採用は見送りとなった。
ポール・エリック・ホイヤー会長は「わずかの差で過半数3分の2に届きませんでした。BWFとしては、21点3ゲーム制の維持の結果を尊重したいと思います」としたうえで、今後もバドミントンの普及に向けた取り組みを継続していくことを強調している。
11点5ゲーム制導入に「NO」
BWFは先月の4月3日に、今回の年次総会で話し合われる議題について発表。この時、インドネシア協会とモルディブ協会が提案する「11点5ゲーム制導入」に関する投票の実施が明示されていた。
11点5ゲーム制については、2016年リオ五輪前に試験的に下部大会で実施されていたが、当時は「新システムの導入は時期尚早」として採用が見送られていた。また、2018年に開催された年次総会で新システム導入の投票が行なわれているが、この時は反対派が多かったアジア勢の声が票数に反映され、21点3ゲーム制が継続されることになった。
今回の新スコアリングシステム導入については、11点5ゲーム制に意欲的なヨーロッパ勢からではなく、アジアの強豪国であるインドネシアが提案。これに対して、バドミントンアジア(アジア連盟)や韓国協会、台湾協会などが支持していたという。競技の世界的な普及に取り組むBWFも、試合時間の短縮やテレビ放映の拡大などが見込まれる11点5ゲーム制の導入に前向きな姿勢を取っており、今回、アジアの強豪国であるインドネシアや韓国の支持があったことで、新システム採用への期待は大きく高まっていた。しかし、投票の結果は賛成票66.31パーセント、反対票33.69パーセントとし、過半数の3分の2にはほんのわずか届かず。2回目となった提案は否決された。
現行の21点3ゲーム制が2006年に導入されて以来、世界のバドミントンの勢力図は大きく変化。それまでは中国、インドネシア、韓国、マレーシアといったアジアの伝統国が活躍していたが、現在は日本やタイ、台湾などが上位国に浮上。デンマーク、スペインといったヨーロッパ選手の活躍も目立ち、各種目で群雄割拠の時代に突入している。
近年では、選手の技術向上やラケット性能の進化によってラリー数が増加傾向にあり、試合時間も2006年当時に比べて再び長期化。また、日本選手の活躍が示すように、守備型プレーヤーやねばり強い選手、総合力の高い選手が好結果を出すようになっている。11点5ゲーム制の導入は試合時間の短縮だけではなく、攻撃型プレーヤーやパワー、スピードなどに特化した選手の活躍が増えることが予想され、これにより、新たなファン層の拡大にも期待が持たれていた。
BWFとしては、11点5ゲーム制の導入で、よりエキサイティングな試合の増加とともに、試合時間の短縮でテレビ視聴者の拡大につなげたい思惑があった。しかし、エンターテイメント性を求める一方、トップ選手や指導者からは、“競技レベルの低下”への懸念や、新システムへの対応に不安を持つ選手もいまだ多く、今回の投票は、人気拡大をねらうBWFの考えよりも現場の声が反映される結果となった。
文/バドミントン・マガジン編集部