12月26日に開催された第74回全日本総合選手権(東京・町田市立総合体育館)5日目は、男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルスの準決勝が行なわれている。ここでは、女子シングルスを戦った選手のコメントを紹介する。
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奥原希望
(太陽ホールディングス)
準決勝結果:佐藤冴香(ヨネックス)に2-0で勝利
今日の相手から大幅にレベルアップしてくるので、ラリーが続くことを覚悟して試合に入りました。佐藤さんと久々に試合をして、佐藤さんの独特なタイミング、独特なショットに少し対応しきれない部分がありましたが、慌てることなく冷静に判断して修正できた。大先輩を相手に、しっかり自分の力を出しきって勝てたのはよかったと思います。
佐藤選手は、A代表にいるときからすごく助けてもらった一人でもあるし、選手としてもプレーヤーとしても、本当に学びの多かった、すごく大好きな先輩です。先輩ももう30歳になるので……佐藤さんが現役を続ける、続けないのところで、こうやって公の場で試合ができるのが自分自身、すごく楽しみで。佐藤さんも、「奥原と対戦するために今回頑張りたい」、「対戦したい」と大会前に言ってくれたことがうれしかったです(涙)。
先輩方が少しずつ引退を決めていく時期なので、先輩への感謝の気持ちを込めて、今日は思いきり戦いたい気持ちがありました。
(試合後に交わした言葉は?)「ありがとうございました。ナイスゲームでした」と伝えさせてもらいました。コロナの中で、ソーシャルディスタンスということもありましたが、私の中で、いつ最後になるか、もしかしたら対戦するのは今日が最後かもしれないというのがあったので……(涙)。誠意を込めて、しっかりあいさつしたかったです。
明日の決勝は茜ちゃん。国内だけでなく、海外のファンも楽しみにしてくれている対戦だと思います。茜ちゃんとの対戦は久しぶりです。お互いに手の内を知っているので、この環境では、本当にどちらが我慢するかという勝負になると思います。茜ちゃんのトリッキーなショットに対して、私がどこまでディフェンスできるか。“盾と矛”のような戦いになると思う。そういった駆け引きを楽しみにしてもらえたらいいですね。
今大会は無観客ですけど、思ったより違和感はないです。むしろ、試合が終わった時のSNSの反応とかが温かくて。画面越しですけど、本当にたくさんの人が見てくれている実感があります。声援は聞こえませんが、会場のあちらこちらにファンの方からの温かいメッセージが貼られている。自分ができることをプレーで表現したら、絶対見てくれる人はいると信じています。今回のライブスコアも含めて、この配信のシステム、今運営してくださる人にも本当に感謝したいです。
2連覇というのは意識せず、でも、欲は忘れずに。明日もう1回、自分が納得できるプレーをできたら、結果はついてくると思っています。
佐藤冴香
(ヨネックス)
準決勝結果:奥原希望(太陽ホールディングス)に0-2で敗退
全日本総合の組み合わせを見たときに「当たりたいな」と思っていた奥原との試合で、負けはしましたがすごく楽しくできました。とりあえず1ゲームは取りたいと、スタミナ切れしてもいいから1ゲームからガンガンいったんですが、相手の対応能力がすごく、思ったように点が取れなかったですね。
相手は世界のトップですから技術、戦術、精神面が昨日まで対戦した選手より格段に強い。こっちとしても、それに合わせて対応を変えていくのが楽しいんですが、少しは駆け引きができたのでは……。私もいつまで現役を続けられるかわからず、奥原とはもしかすると最後の対戦かもしれません。そう思うと、A代表で苦楽をともにしてきた戦友でもありますし、終わったあとは、ソーシャルディスタンスも気にせず握手をしようと思っていましたし、ついつい涙が出ましたね。
この大会に合わせて練習は積み重ねてきたつもりですが、体育館を確保してくれたり、会社のサポートや運営の方の努力のおかげで、コロナ禍でも大会ができたことをうれしく思います。また結果よりも、1年間やってきたことがどれだけ通用するかを試す場として、1本1本を大切にプレーしました。それがベスト4という結果になり、やってきたことが間違いではなかったと再確認できました。
結果に満足しつつ、でも、まだまだ課題も見えてきて……もし代表に選ばれたら、年齢が年齢だけに微妙なんですが、いまはバドミントンが楽しいので、試合ができる限りはいろんな人と対戦してみたいと思っています。最後はコロナ禍が収束し、有観客試合ができるようになり、お世話になった方々に試合を見てもらうのがまずは目標です。
取材・構成/楊順行、バドミントン・マガジン編集部
写真/菅原淳