12月23日に開催された第74回全日本総合選手権(東京・町田市立総合体育館)2日目は、男子シングルス、女子シングルス、混合ダブルスの3種目を実施している。ここでは、男子シングルスに出場した桃田賢斗(NTT東日本)のコメントを紹介する。
記事・コメント・トーナメント表
一覧はこちら
桃田賢斗(NTT東日本)
1回戦結果:森口航士朗(埼玉栄高)に2-0で勝利
――復帰戦を終えて。
今までやってきたことを出し切ろうと思って、試しながら試合ができたかなと思います。
――試合内容を振り返って。
緊張からミスが出ることがありましたが、動きやシャトルの感覚はよかったので、ミスの多いところを修正して明日また臨めればいいかなと思います。
――攻撃力強化を課題にあげていました。
要所でスピードを上げたときスマッシュを決めることができたんですけど、返されたときに不利になったり戻りが遅くなったりするケースが多かったので、攻撃する時としない時のメリハリ、一瞬の判断をもっともっと考えないといけないと思いました。
――今大会の意気込みは。
いろんな方のお陰で戻ってこられましたし、この11カ月本当にいろんな思いをしたので、支えてもらった感謝の気持ちを表現しながら、コツコツやってきたことに自信を持って自分らしくプレーできたらいいかなと思います。
――あらためて全日本総合で勝てた気持ちは。
正直、全日本総合の1回戦は緊張するので、久しぶりの試合で不安もあったんですけど、意外と落ち着いてプレーできたのでよかったかなと思います。
――(ともに事故にあってその後もサポートする)森本トレーナーとは何か話しましたか。
特には…。やっとここまで戻ってきたね、とかはなく、いつも通り送り出してくれたので、それもあって落ち着いてプレーできたと思います。
――夏に福島の中学生と練習したが、得たエネルギーは力になりましたか?
コロナ禍での練習に、モチベーションが落ちることはなかったですが、少しマンネリ化してるなと感じる部分があって、母校で練習させてもらいました。一人ひとり、なにかしら武器を持っていて、目をきらきら輝かせながら練習に取り組んでいるのを見て、僕も刺激を受けたし、もっともっと強くなりたいと再認識することができました。そこからの練習の質は上がったと思います。その気持ちの積み重ねがきょうにつながったと思います。
――先日、体操の内村航平選手が五輪開催について思いを話されました。いまは国民の意見として五輪開催が難しいとも言われていますが、桃田選手の考えはいかがでしょうか。
選手からすると現役中に母国で開催というのはめったにないチャンス。(そのめぐりあわせは)ほとんど奇跡なので、開催してもらいたい気持ちは当然あります。ですが、正直、命の危険を感じたり、まわりの人を不安にさせてしまったらよくないと思いますし、難しいですけど…。誰も不安を感じずストレスなく開催できるなら開催してほしいですが、自分のことだけを考えてはいられないので。
――この1年は自分をどう励ましてきましたか。
正直、自分を奮い立たすというのはあまりないというか。一緒に練習する人がいて、森本さんがいて、家族がいて、つらいこともあったですけど、練習再開できるようになって…。自分のためにというより、支えがあったから、ここで折れるわけにはいかないなという気持ちがあったので、その気持ちが自分を強くさせてくれたと思います。自分の力でというよりは周りの人たちのサポートのおかげでという感じですかね、
――今回は無観客で声援がなく、いつもと違う雰囲気でしたが。
正直自分は観客がいてくれたほうが気持ちが盛り上がって乗ってくるタイプ。無観客は少し寂しい気持ちもありますし、復帰戦で見てほしい気持ちもあったんですが、こういう状況ですし…、自分ができることを精いっぱいやろうと思ってコートに入りました。
――試合から1年近く遠ざかっていましたが、試合勘のズレはありましたか。
正直ありましたね。自分のプレースタイルは相手をうまく利用して、相手の力をパワーに変えるスタイル。でも、今日は自分の打ちたいショットを打ってしまうことが多かったので、相手の動きを見ることができていないなというのは少し感じました。
――フィジカルトレーニングに励んできたと聞きますが。
時間があったぶん、しっかり取り組むことができました。きょうも緊張して体がちがちでしたが、緊張したなかでしっかり動ききれたので、フィジカル的にトレーニング成果が出たと思います。
――事故のあと、「僕、まだバドミントンできますか」と話されました。実際コートに立ってみていかがでしたか。
独特の試合の緊張感、試合前のいてもたってもいられないソワソワ感も含め、久しぶりだなと感じることができましたし、コートに立ったときも、帰ってきたなという感じがあったので、楽しみながらプレーができたと思います。
――大会に備え、楽しそうに練習をしていると聞いていますが、事故を経てあらためてバドミントンについて。
できない時間が多かったぶん、できたとき楽しかったし、パフォーマンスが下がっていたところから、できることが少しずつ増えることを楽しみながら、パフォーマンスを戻せていると思います。
――2017年にも1年以上のブランクがありました。復帰戦は前回と今回で違いましたか。
圧倒的に今回のほうが、(雰囲気が)温かかったですね(笑)。前は周りの人の様子をうかがいながらプレーしていたところがあったので、今日は伸び伸びと、復活して戻ってきたよというのを見せられたと思います。
――事故後の3月の会見で「スケールの大きな選手になって戻りたい」と言っていました。その一歩は踏み出せましたか。
まだまだですかね。全然足りないと思うので、コツコツやっていきたいです。
――復帰戦の相手は高校生でしたが、いかがでしたか。
攻撃力だったり、すごくいいものを持っているなと思いました。あとは経験を重ねて、試合運びがうまくなればこれから強くなると思います。ちょっと最初からあきらめている感じが見えたので、もったいないとも思いました。でも楽しみな選手、また対戦したいと思います。
――最後に今大会の目標を。
もちろん目標は優勝ですが、先を見過ぎず、一つひとつ自分らしく、感謝の気持ちを忘れずにプレーできたらいいかなと思います。
取材・構成/江國晴子、バドミントン・マガジン編集部
写真提供/日本バドミントン協会