新型コロナウイルスの影響により、体育館での練習や部活などができない日々が続いています。バド×スピ!では、利用者の皆さんに少しでもバドミントンの情報をお届けするべく、バドミントン・マガジンで掲載された企画や連載などをアップしていきます。今回紹介するのは、バドミントン・マガジンで連載中の『見て、考える! BWF公認審判員が解説 ルール講座!』です! 普段、なかなか学ぶことが少ないルールについて、これを機会にしっかり覚えていきましょう!
【今月のテーマ】
ネット前でのブロック行為
ルールブックをCHECK!
第13条フォルト 第4項(4)
第4項=インプレーで、プレーヤーが(4)=相手を妨害したとき、すなわち、ネットを越えたシャトルを追う相手の正当なストロークを妨げたとき
この場面は、選手のレベルを問わずよく見かけます。私が主審として判定するのであれば、ラケットを出したAくんのフォルトは取りません。Aくんのレシーブによるポイントです。
競技規則には、“相手の正当なストロークを妨げたとき”と書かれており、主審がそう判断した場合に「フォルト」とコールします。この判断材料となるのが、チャンス球を打つBくんに、ショットやコースの選択肢が“ある・ない”ということです。このシーンでBくんは、甘く上がった球をオーバーヘッドストロークで打とうとしています。結果的にAくんにブロックされますが、状況を考えると、Bくんはクリアーやハーフ球などでラケットを避けることは可能でした。つまり、Bくんのストロークは、Aくんが出したラケットに妨げられていないと考えます。ですから、この場面でAくんのプレーはフォルトにならないのです。
では、フォルトになるのはどういったケースでしょうか。よくあるのは、飛び込んだAくんの返球がヘアピンだった場合です。Bくんの“プッシュ”に対して、Aくんがバレーのブロックのようにラケットを出したとしましょう。Bくんはすでに打つモーションに入っていたため、コースを変えられずにそのままプッシュします。この場合、Aくんがブロックに成功しても、フォルトと判断されます。
その理由は、“Bくんがストレートにプッシュを打つしか選択肢がない中で、Aくんがラケットを出し、Bくんのストロークを妨げた”と判断されるからです。もし、ラケットを出したAくんがネットから離れた位置にいたり、Bくんのストロークに余裕があったと見られるのであれば、フォルトにならない可能性もあります。ただし、これを判断するのはあくまでも主審であり、選手ではありません。
主審、選手の皆さんに注意してほしいのは、このフォルトはAくんの“妨げる”行為に対するジャッジということです。仮にBくんが空振りをしたり、アウトにしても、“Aくんが妨害した”と主審が判断すればフォルトであり、妨害したラケットにシャトルが当たる・当たらないは関係ありません。ラケットではなく、手や体を投げ出したり、顔を突き出してBくんの正当なストロークを妨げた場合も、主審はフォルトをとってもいいでしょう。ラケットでストロークを妨げていなくても、主審が妨げた行為があったと判断すれば、フォルトを取ることができます。
ほかにも、判断に迷うシーンはいくつかあります。たとえば、ネット近くでプッシュを打たれた側が、ラケットで自分の顔を防御した場合です。防御したラケットに当たって相手コートに返球されたと主審が判断すれば、フォルトにはなりません。また、プッシュを避けようとする流れなどでラケットに当たって相手コートに返球されても、フォルトは取りません。主審が明らかに妨害していないと判断すれば、それは“スーパーレシーブ”ということになります。
正式名称ではありませんが、ブロックする反則行為のことを「オブストラクション」といいます。これはネット際での攻防中に起こることが多く、主審はフォルトであるかどうかを一瞬で判断し、コールしなければなりません。審判としての技量と度量が試される場面です。また、妨害する選手に目がいきがちですが、プッシュを打つ側の打点にも要注意です。シャトルがネットを越えてくる前にプッシュを打っている場合もあり、なおかつ、相手のフォルトをアピールしてくることもあるので、主審は両者のプレーをしっかりチェックして、正しい判定をしましょう。
監修/遠井 努(日本協会理事:競技審判担当)
イラスト/丸口洋平
※この連載は2019年のバドミントン・マガジン8月号に掲載されたものです。一部加筆・修正しています。