【今月のテーマ】
コートにモノが落ちたとき
ルールブックをCHECK!
競技規則
第14条レット 第2項(7)
第2項=次の場合はレットとなる。(7)=いかなる不足の事態や突発的な事故が起きたとき。
国際大会でこのようなケースはありませんが、市民大会ではポケットにコインを入れたことを忘れ、このようなケースが起こることが十分に考えられます。
主審はインプレー中に起こった不足の事態や突発的な事故に対して、レットにするかしないかを判定しなければなりません。その判断材料の一つとして“対戦相手が危ない(ケガをする可能性がある)。または対戦相手が不利を受ける可能性がある(コインが落ちた音でびっくりするなど)”というのがあります。
今回のケースでは、相手のコートに500円玉が入ってしまったところがポイントです。相手がこれを踏んでケガをする可能性や、プレーの妨げになると主審が判断すれば、主審はレットをコールする必要があります。競技規則では、「第14条・第2項(7)」に当てはまると考えていいでしょう。
では、相手のコートに入らなかった場合はどうするか。イラストの前半で、Bくんはスマッシュを打った勢いでポケットティッシュを落としました。しかし、この場合は相手に不利な状況が起こっていないと主審が判断すれば、レットはコールしません。プレーは続行です。Bくんがティッシュを踏んで転倒し、ケガをする可能性がないわけではありません。しかし、コートに物が落ちたからレットという判断基準になってしまうと、“不利な状況になったら物を落としてレットにしてもらう”という解釈につながりかねません。
これはコンタクトレンズを落としたときも同じことがいえます。ラリー中にレンズが落ちたからといって、主審はレットのコールをしません。自分の装着物などが落ちた場合は、あくまでも自分の責任と考えてください。
ただ、物が落ちて対戦相手の注意が削がれたときは、レットの対象になることがあります。たとえば、A・Bペアのコートにコインが何枚か落ちたとしましょう。対戦相手のコートに入らなくても、相手が気を使ってプレーのスピードを緩めたり、ケガをしないように配慮したと主審が判断した場合は、主審はレットをコールしていいと思います。もちろん、対戦相手が気づかずにラリーを続けているのであれば、インプレーとして継続します。
レットの判断に関しては、主審の裁量となります。状況を見ながら、レットと思ったときは、毅然とした態度で判定してください。
これは対戦ペア同士の中で起きたケースですが、レットをコールする機会が一番多いのは、隣のコートからシャトルが入ってきた場合です。誤解されがちですが、シャトルが入ってきたら自動的にレットになる、というルールはありません。その判断は、あくまでも主審に委ねられています。コインのケースと同様に、選手が危ない、または不利を受けるかどうかで主審が判断します。どちらかの選手、ペアがこれらに当てはまるのであれば、主審は躊躇(ちゅうちょ)せずにレットをコールしてください。
また、試合中に上から何か落ちてきたり、体育館全体のライトが突然消えたり、大きな地震などが起こったりしたときも、主審はレットと判断して構いません。
選手の皆さんに注意してほしいのは、レットはあくまでも主審の判断になるので(主審がいない場合は選手自身)、勝手にラリーを止めないということです。自分で勝手に判断してラリーを止めると損をする場合もあるので、主審の判定があるまでは、しっかりラリーを続けるようにしてください。
コラム:審判台の上から
読者の皆さんは、国際審判員についてどれくらい興味があるでしょうか? 現状、日本では世界バドミントン連盟(BWF)、アジアバドミントン連盟(BA)の国際審判員資格を持っている方は、他国に比べて多くありません。定年などによって変動はありますが、約10人前後です。もう少し増えてほしいのが、競技審判部の願いです。
簡単ではありますが、国際審判員になるための入口について、紹介しましょう。審判資格は、国内でいうと1級から準3級までがあり、基本的に1級資格を持っている人が、国際審判員の試験を受けるチャンスが与えられます。受験のためには各都道府県や、日本協会に選ばれることが必要ですが、そういった面を一つずつクリアできれば、BA認定国際審判員の試験が受けられます。この試験に合格すれば、晴れて国際審判員の仲間入り。アジア圏内で開催される国際大会に招集され、国際審判員としての第一歩を踏み出すことになります。
多くの人にチャレンジしてほしいのですが、最初のステージであるBA認定の受験資格は満40歳以下であり、国際審判員の定年は満55歳という規則があります。資格を取るのに早いに越したことはありません。興味がある方は、ぜひ早い時期に資格獲得に挑戦してみてください。
監修/遠井 努(日本協会理事:競技審判担当)
イラスト/丸口洋平
※この連載は2019年のバドミントン・マガジン7月号に掲載されたものです