4月23日、デンマーク代表・男子ダブルスで輝かしい成績を残したマシアス・ボー(写真左)が、自身のSNSを通して現役を引退することを発表した。
ボーは昨年3月の全英OP後、10年以上もペアを組んだカーステン・モーゲンセン(写真右)とのペアを解消。その後はマッズ・コンラド・ピーターセンとペアを組んで国際大会に出場し、カナダOPやロシアOP(ともにSuper100)で優勝を果たしていた。S500などの上位大会では韓国OPと香港OPでベスト8の成績を残していたが、今年に入ってからは好結果に恵まれず、最後の大会となった3月の全英OP(S1000)でも、初戦敗退と苦しい戦いが続いていた。
ボーは今年2月、世界国・地域別対抗戦のトマス杯(5月から8月に延期)、そして7月に行なわれる東京オリンピック(2021年に延期)への出場を最後に、現役を退くことを示唆していた。しかし、その間の練習や大会に対するモチベーションの低下が、予定よりも早い引退を決断するきっかけになったという。
1999年にデンマーク代表に選出されたボーは、20年以上も世界の強豪たちとしのぎを削ってきた。スーパーシリーズ(SS/現ワールドツアー)となった2007年以降は、09年韓国OPでシリーズタイトルを獲得。10・11年にはSS3大会を制するなど、男子ダブルスのトップランカーとしての地位を築いた。
そんなボーが最も輝かしい成績を収めたのは、2012年ロンドン五輪(上写真)。予選リーグを3連勝で抜け出すと、決勝トーナメントの準々決勝では台湾ペアを、準決勝では優勝候補だった韓国の鄭在成(ジュン・ジェサン)/李龍大(イ・ヨンデ)を退けて決勝に進出。金メダルは中国の傅海峰(フ・ハイフン)/蔡贇(カイ・ユン)に譲ったが、男子ダブルスでは初となるメダルを母国にもたらしている。
ボーはロンドン五輪以降も、バドミントンへの情熱を絶やすことはなかった。30歳を超えるベテランとなっても最前線で奮闘。2013年には世界選手権で銀メダルを獲得し、2016年トマス杯では念願だった世界一にも貢献した(上写真)。その年の2月には、ペアのモーゲンセンが右脳の動脈瘤破裂で倒れるアクシデントに見舞われていたが、6カ月後のリオ五輪には2人で出場(予選リーグ敗退)。リオ五輪後も現役を続行し、アジア勢が席巻する男子ダブルスでは“欧州の雄”として孤軍奮闘し続けた。
180センチを超える長身からのスマッシュ以上に、鉄壁のレシーブや巧みな戦術、サービスまわりでの駆け引きがボーの真骨頂。勝利にこだわるプロフェッショナルな姿勢は、世界トップで活躍する後輩たちの手本にもなっていた。
39歳。デンマークの誇りを伝承し続けた大ベテランは、栄光を浴びたコートを離れ、いま第2の人生を歩んでいく――。
文/バドミントン・マガジン編集部 写真/BADMINTONPHOTO