これまで数多くのオリンピック代表選手を輩出し、男女ともに国内トップクラスの実力を誇る日本ユニシス実業団バドミントン部。スポーツ向けサポート・ケア製品のブランド「ザムスト」を展開する日本シグマックス株式会社とオフィシャルパートナーシップ契約を結んで3年が経ちました。ここでは、自身でもプレーし日頃からサポート・ケア製品の使用を勧めている同チームの川鍋進トレーナーに、バドミントンだからこそ起きやすいケガは何か、ケガ予防のために選手たちが実践していることは何かなど教えてもらいました!
日本ユニシス実業団バドミントン部 川鍋 進トレーナー
「トップ選手は体のケアに対する意識も高い」
―まず日本ユニシスでのトレーナーさんとしての仕事内容を教えてください。
川鍋 練習には週3日来て、国内で行われる大会に帯同しています。選手には、マッサージ等のケアはもちろん、トレーニング指導も行います。ケガをしたときは、気持ちが不安定になりやすいので、ケガに対する対処法を話すだけでなく、いろんな相談に乗ったりもしますね。
―トレーナーさんから見たバドミントン競技の特性を教えてください
川鍋 切り返し動作がとても多いスポーツですよね。陸上は前に走る、前へ跳ぶ、前へ物を投げると、前へ前へと体を動かすスポーツですが、バドミントンは、狭いスペースをあちこち動きながら、体軸を崩さないようにプレーしなくてはいけません。
―どんなケガを起こしやすいですか。
川鍋 現場で感じるのは足首やひざのケガですね。自分がいい体勢のときはいいんですが、相手に厳しいところを何度も突かれると、足首やひざのアライメントが悪いまま着地を繰り返すので、慢性的に負荷が蓄積して痛みが出てくることがあります。日本ユニシスでは、突発的なケガは意外と少なく、慢性的な傷害に悩んでいる選手が多いです。
―慢性的なケガに対する対策は。
川鍋 選手には口を酸っぱくしてセルフケアの重要性を話しています。私が24時間、診られるわけではないので、選手には「自分自身が最高のトレーナーであれ」と。そのための基本としてお願いしているのはストレッチです。お風呂あがりや寝る前にやって、疲れをとるように伝えています。そうするとよく眠れますしね。最近は筋膜リリースなどの道具もあるので、テレビを観ながらケアすることも勧めています。
―セルフケアが習慣化されれば、わずかな体の違和感にもすぐ気づけそうですね。
川鍋 そうなんです。「ケガをしたからどうにかして」ではなく、「いま足首が緩い感じがするんだけど、どうしたらいい?」など、具体的な相談をしてもらいたいと思っています。相談が具体的であるほど、トレーニングで患部周辺の筋肉を鍛えていくのか、サポーターで補強していくのかなど、よりよい提案ができます。でも若い選手だと自己管理がなかなかできないんですよね。「ちゃんとストレッチやった?」と聞くと、「はい!」と返ってくるんですけど、体を触ると、関節の可動域が前より悪くて、やってないなとすぐ分かる(苦笑)。
―その点、ベテラン選手は違いますか。
川鍋 違いますね。遠藤大由選手や髙橋礼華選手、松友美佐紀選手らは、こちらが提案したことをちゃんとやりますし、体のケアを人任せにせず、ケガしたときも自分はこうしたいという芯がある。たとえば、先日のS/Jリーグ最終戦で髙橋選手は肉離れをしました。私はオリンピックレースの大事な時期に無理をしてほしくなかったのですが、彼女は「応急処置だけして」と。ケガをした、だから試合をやめるという単純な思考ではなく、ケガをしてしまったけど目的を達成するため、ケガにどうアプローチしたいか、自分の希望を伝えてきました。
こういったとき、ダメなときはダメといいますが、基本的には選手の思いを尊重するので、コートサイドから見守らなければいけないときの気持ちといったら、いつまでも慣れませんね(苦笑)。
「サポーターでケガの予防やパフォーマンスアップが可能」
―ベテランといえば、松友選手は長年ヒザのサポーターを使っていますね。
川鍋 日本代表合宿のとき、ダッシュしている最中に転んで骨挫傷を負って、急激な負荷がかかると痛みが出るようになったんです。以来、予防のためにザムストの『EK-1』というサポーターをしてもらうようにしました。足を強く踏み込んでも大丈夫という安心感があり、サポート力が強すぎず、弱すぎずでプレーに支障がないのが利点です。松友選手は「横のズレがない」と話していますね。
『EK-1』の詳細はこちら
―装着感のよさもサポーター選びのポイントになるというわけですね。
川鍋 はい。バドミントンは試合中にかなり汗をかくので、汗の重みで下に落ちてしまうサポーターもあるんです。その点、ザムストの『EK-1』は軽量なので落ちてこない。以前のモデルは生地に厚みがあったんですが、『EK-1』になってから、だいぶ薄くなり、より快適になっています。
―トレーナーがサポーターを選手に勧めるのはどんなときですか。
川鍋 ひとつはケガの予防ですね。たとえば遠征で移動が長いと、むくみで足がシューズに入らなくなってしまう選手がいます。むくみが起きると、関節、足首などの可動域が悪くなり、ケガのリスクが増します。そこで移動中に『カーフスリーブ』を試したら、現地ですぐ練習に入れなかったのが、スッとできるようになりました。
『カーフスリーブ』の詳細はこちら
―ケガが起きてしまった場合は。
川鍋 もちろん弱くなっている部分の補強としてサポーターをよく使います。テーピングだけでも補強はできるのですが、テーピングは技術がいるので選手には少し難しい。だけどサポーターには、開発者のいろんな知識が凝縮されているので、私がいなくてもテーピングをしているのと同様の状態を再現できます。選手が遠征するときは、ケガしたことのある部位のサポーターを絶対に持っていかせています。
―“絶対”は守られていますか。
川鍋 それがすごく大変です。基本的に選手…とくに男子には、サポーターを付けたくないという頑固おやじみたいな選手が多いんです(苦笑)。道具に頼りたくないという感覚があるみたいで。でも、ケガで足首が緩んでいれば、サポーターが補強してくれるのでケガの再発防止になりますし、負荷を軽減してくれるからこそできる練習もあります。サポーターのおかげで思い切り足を踏み込めれば、練習の質も上がりますしね。
―ケガの予防やケガ後の補強という目的以外にサポーターを使う場合もありますか。
川鍋 筋力強化に使う場合もあります。筋力は動かさないと強化されないので、痛みがある場合もサポーターをつけることによって鍛えたいターゲットにアプローチできることがあります。ケガをしたから運動できなくなったと、悲観しないですみます。
―川鍋トレーナーがとくに気に入っているザムスト商品はありますか。
川鍋 最近は小野寺裕介選手が使っている足首用の『FILMISTA ANKLE』かな。さきほど話したようにバドミントンには足首のケガが多い。でも、以前は厚みのある商品ばかりなので困っていたんです。そこでザムストの方に「足首のサポーター、もう少し生地薄くなりませんか」と話した直後、たまたまスポーツショップを行ったとき、これを見つけて、「なんだ、あるじゃん!」となったんです(笑)。
『FILMISTA ANKLE』の詳細はこちら
―ザムスト『FILMISTA ANKLE』の良さを教えてください。
川鍋 すごく薄いのにしっかりサポート力があって、とくに横のズレを防いでくれます。これだけの薄さ、軽さで、ここまで補強してくれる商品はなかなかありません。前の商品は私も使っていたのですが、足に装着するとシューズに入らず、ワンサイズ上げていました。
―一般プレーヤーにとってもサポーターは役立つものでしょうか。
川鍋 セルフケアを十分することを前提に、体に違和感があるときはサポーターを試してほしいですね。ジュニアには、疲労骨折や腰にヘルニアを持っているのに、隠そうとしたり、言えずにきてしまっている選手が多いんです。でも、それはよくないことなので、きちんと自分の体に向き合い、サポーターなりで対処してほしいところです。また歳を重ねて筋力や関節の機能低下を感じているシニアの愛好者には、ケアというよりパフォーマンスアップのために使ってほしいです。バドミントンを楽しく続けることを助けてくれるはず。いずれにしても、どんな人もサポーターをネガティブに考えず、とにかく一度使ってみてください!
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取材・構成/バドミントン・マガジン編集部
写真/菅原淳