バドミントンの基本は足!とよく言われる。羽根の下に足を運ばなければ、打ち合いが始まらないためだが、本当に理由はそれだけだろうか。
たとえば、ロブを打つためネット前に足を踏み込んだとき、足がぐらつく選手がいるとする。そのぐらつきは上体にも影響を及ぼし、羽根を打つときのブレとなり、ミスの確率を高くする。
しかし、足を安定感のある状態に保っておけば、いいプレーが自然と生まれる。ケガの可能性も低くなるだろう。足は体を、そしてプレーを支える土台なのだ。
そんな考え方を基本にし、靴のインソールを開発してきた職人がいる。
2月に発売したザムストのインソール「フットクラフト・クッションド」シリーズ4商品を2年かけて開発した日本シグマックスの溝井健太郎さんだ。なぜインソールにこだわるのか、実際、プレーにどんな好影響が期待できるのか、教えてもらった。
今回新発売となる「フットクラフト・クッションド」シリーズ
左上からfor sports,for run。左下からfor walk, for spike
高機能インソールに変えるという発想
――靴にはインソールが備わっていますが、何故、さらに変えることを提案しているのでしょうか。
溝井 実際に靴を見ていただくとわかるのですが、各メーカーさんの中敷き…つまりインソールを外すと、靴はフラットな状態になっています。その上にインソールを敷いていますが、見ていただいて分かる通り、ほとんどのインソールはフラットに近く、シューズに合わせた形状のものが多いです。
――そこにパフォーマンスをよくする可能性を感じたということですね。
溝井 はい。じつは足裏はとても大事なんです。体の土台となる足の状態が悪かったら、全体のバランスに影響が生じて、運動パフォーマンスは低下し、ケガを生む場合があります。そこでいい足の状態って何だろう、と探っていくと、足裏が一つのキーなんです。
――足裏はどんな機能を持っているのでしょうか。
溝井 足の裏には、土踏まずと呼ばれるアーチ部分があります。このアーチは日常生活でも、スポーツでも非常に重要で、地面に足をついたときの衝撃を吸収したり、その衝撃を反発力に変えて前に進む力に変える役割を持っています。クッションみたいなものですね。
――足裏のクッションが働いていないとどうなるのですか。
溝井 じつは偏平足の方のなかには、そもそも足裏のアーチ機能がうまく働いていない状態の人がいるんです。偏平足ではない方でも運動して疲労がたまってくると、アーチが低下してしまうので、パフォーマンスが落ちてしまうという現象が起きます。
――そこでザムストは、これまで足裏のアーチをサポートする「フットクラフト」シリーズ3商品を提供してきたわけですね。
溝井 はい。こちらの商品は、インソールを使う人にとって、一番いい足の状態をつくり、アーチが機能するように働きかけ、悩み解決を狙った商品です。アーチの支点となるカカト部分は、深くて少し固いパーツでつくってあるので、着地時のカカトのブレを抑えてくれます。
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――契約選手の松友美佐紀選手は上位モデルの「カスタムバランス」を使っているそうですね。
溝井 松友選手が使っているのは自分の足で型をとるカスタムメイドのタイプです。作るのにかかる時間はわずか10分。片足ずつ自分に合った形状のインソールをつくれるので、足の左右差の修正も期待できます。担当者によると、松友選手は、海外遠征の合間にやってきて、何足分も作っていくそうです。
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新商品は「衝撃吸収」が特徴
――では、溝井さんが手がけた2月に新発売のインソール「フットクラフト・クッションド」シリーズ4商品は、これまでの商品とは何が違うのでしょうか。
溝井 「衝撃吸収」に特化した点ですね。じつはプレーヤーがインソールを使ってみようかな、と思うときは、体の悩みを持ったときが多いんです。ヒザが痛いとか、足首が痛いとか…。そういった悩みは衝撃吸収が原因になっていることが多いので、それならインソールで不具合を解決してあげたい、価格的にも手に取りやすくしてあげたい、そういう思いから生まれたのが、今回の新商品なんです。
――4商品はシーン別に種類が分かれていますね。
溝井 はい。それぞれのスポーツで求められる動きや、衝撃吸収の目的を細分化すると、この4タイプになるんです。「SPORTS」「RUN」「WALK」「SPIKE」のなかで、バドミントン選手へのお勧めは「SPORTS」ですね。
Footcraft Cushioned for SPORTS
――「SPORTS」の特徴は。
溝井 バドミントンは、カカトから接地するような足さばきのほか、スマッシュや切り返し動作、床の蹴り出しのときに前足部もよく使います。「SPORTS」は、カカトだけでなく、前足部にも衝撃吸収性の高い素材を使っているので、カカトと前足部の両方で衝撃を吸収できるんです。バドミントン向きといえます。
――開発者としてこだわった点は。
溝井 履き心地のよさの実現ですね。じつは衝撃吸収を目的にした他社製品は、厚みがありすぎて靴に足を入れたときにきつかったり、ゲル素材を使ったため、重い商品が非常に多いんです。
そのため、この商品は、衝撃吸収性と同時に「軽くて薄い」も求めました。そうすると、耐久性を実現するのが難しかったのですが、最終的にシューズの寿命と同じくらい耐久性がある商品をつくることができました。
――どのように自分の靴にセットするのですか。
溝井 既存の「フットクラフト」、「カスタムバランス」と同じです。持っている靴のインソールを取り出したら、「フットクラフト・クッションド」の上にあててください。そしてはみ出した部分を切り取ったら、「フットクラフト・クッションド」をこれまでのインソールと入れ替えます。
――最後にどんな人に使ってほしいか、教えてください。
溝井 「フットクラフト・クッションド」シリーズは、体に悩みがある人やケガを予防したい人がメインターゲットですが、インソールって本当に役立つのかな、と思っている人にも積極的に使ってもらいたいですね。正直、足裏のアーチサポート機能は、既存商品のほうが高いのですが、こちらの商品から衝撃吸収のよさを知って「インソールを変えると、こんなにいいんだ!」ということを感じてほしいです。
今回の取材に応じた
日本シグマックス株式会社
商品企画開発部
溝井 健太郎さん
「フットクラフト・クッションド」シリーズのHPはこちら
取材・構成/バドミントン・マガジン編集部
写真/高原由佳