日本一を決める「第73回全日本総合選手権」が、11月26日に開幕した。今年も東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館を舞台に、12月1日の決勝戦まで熱戦が展開される。大会4日目の29日は、各種目準々決勝を実施。ここでは、男子シングルスの注目試合をレポートする。
【準々決勝】
桃田賢斗(NTT東日本)②〔21-13、21-13〕0●古賀穂(NTT東日本)
世界王者・桃田賢斗(上写真・左)に挑むのは、同じチームの後輩で、同じサウスポーの古賀穂。富岡高校の先輩と後輩でもある2人が対戦するのは、2017年、古賀が早稲田大3年生だった日本ランキングサーキット以来。後輩の古賀にとって、待ち望んだ対戦だった。
序盤から、桃田が絶妙な高さとコースのロブで古賀を左右に振り、美しい軌道のクリアーとカットで前後に動かす。相手を冷静にバック奥、フォア奥へと追い込み、満を持してスマッシュ。5−3からの3本はスマッシュで連続得点を奪い、会場をわかせた。折り返しは11−4で桃田。必死についていく古賀は序盤から息が上がっていたが、ラウンドからのスマッシュで点を奪うシーンも見せた。しかし、12−20で迎えたゲームポイントを1本しのぐも、ショートサービスをネットにかけるミス。第1ゲームは21−13で桃田が奪った。
第2ゲーム前のインターバル、桃田は時間前にコートに入る余裕を見せる。気持ちを立て直した古賀が食らいついて5−6となるが、桃田は3本連続してカットで得点。フォア前に足が出なくなった古賀を、コートに倒れ込ませた。インターバル明けは、桃田の連続スマッシュをしのいで会場をわかせる場面もあった古賀だが、絶妙なクロスカットには対応できず。第1ゲームと同じ、12−20で迎えたマッチポイントは、スマッシュを決めて1本しのぐも、桃田がスマッシュ、ボディへのプッシュと連続攻撃を決めて、ゲームオーバーとなった。
クリアー、ロブを主体とした組み立てで相手を動かし、冷静に得点を重ねた桃田。スマッシュ一発では決まらない、世界最高峰の舞台で戦う者の姿を見せつけて、コートを後にした。
◆◆◆コメント◆◆◆
桃田賢斗(NTT東日本)
「彼の頑張りを身近に見ている分、世界はそんなに甘くないぞ、というのを見せつけられたと思います。長いラリーでもしっかり我慢し、きつい場面でも足を運んでラリーできたので、相手を上回ることができました。
前回の対戦(2017年日本ランキングサーキット2回戦)では、点差を離した第2ゲームで気持ちが折れたのがわかりましたが、今日は点差を離しても「追いつかれるかも」と感じるような相手の気持ちの強さを感じました。ネット前の踏み込みとか、ラウンドからのクロスの切れ味もよく、こちらがロブを上げてから戻りが遅くなった場面もありました。コンディションがよかったのでああいう点差になりましたが、もし悪かったらやられていたかもしれません。特に2ゲームの11対5ですか、強打を続けて返されたレシーブはすごかった。
NTT東日本ではシングルスで勝ち残っているのは1人しかいないので、(古賀)穂やみんなの気持ちを背負って戦います」
古賀 穂(NTT東日本)
「チームメートとして日頃練習をしているので、お互いのプレースタイルやショットのことをわかっている中での対戦でしたが、いざ試合になると、練習以上にスピードも速いし、タッチも速かった。自分のスピードが通じなくて、全部追い込まれてしまいました。
技術、スピード、パワーで劣っているぶん、一本一本しっかり集中することを意識しました。自分のプレーが通じる部分もありましたが、それでも対応されて相手に攻められるときが多かったと思います。次はしっかりラリーしながらも、自分の武器をつくっていって、勝ちにつなげていきたいなと思います。
チームメートとして感じる桃田先輩のすごさは取り組む姿勢。世界ランキング1位はもちろんすごいのですが、バドミントンに対する考え方、姿勢がすごいと思う。練習では人一倍努力するし、一つひとつに集中して、絶対におろそかにしないというところがすごいところです」
取材・構成/平田美穂、楊順行、バドミントン・マガジン編集部
写真/菅原 淳