11月13日から東京渋谷区・国立代々木競技場第一体育館で開催された「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2019」は17日に大会最終日を迎え、各種目決勝が行なわれた。
来年のパラリンピックと同会場で行なわれるテスト大会ということもあり、注目度も高かった今大会。日本勢は、2種目で金メダルを獲得した。ここでは、SU5(立位上肢障がいのクラス)女子シングルスで優勝を果たした鈴木亜弥子をはじめ、立位の各種目で決勝をプレーした日本選手の試合をレポート。各選手のコメントも紹介する。
【SU5/立位上肢障がい】
立位上肢障がいのSU5女子シングルスでは、大会前から「この大会では金メダルをとりたい」と宣言していた鈴木亜弥子が、大会3連覇を果たした。決勝は8月の世界選手権決勝で敗れている中国のヤン・チウシャと対戦。
鈴木は、試合序盤から高い集中力で試合の主導権を握ると、第1ゲームを11-5で折り返す。後半に追い上げを許したものの、終盤の勝負どころをものにして21-19で先取。第2ゲームは点差の離れない展開となったが、粘り強いラリーを見せて20オールから2点連取で接戦をものにした。
鈴木がヤンを破ったのは2017年の世界選手権以来となる2年ぶり。来年のパラリンピックと同会場での優勝に、「同じ会場で勝てたというのは、自信につながる」と手応えを語っている。
鈴木亜弥子コメント
「有言実行ですね。自国開催で、優勝したいという気持ちが強かったです。1ゲーム目を取ったのでファイナルにならずに決めたいと思って、第2ゲームの終盤は相手のコースをより考えるようにプレーしました。感覚的にも18点目以降が一番よかった。今年の3、4月にトルコ、ドバイの連戦でヤン選手に惨敗して、コーチから意見を聞くなどして脚を強化するなど取り組んできました。ヤン選手に勝つのは2年ぶりですが、当時のレベルと今日のレベルを考えたとき、お互いに成長しあえて試合ができているのが、とてもうれしいことだと思います」
【SL4/立位下肢障がい】
立位下肢障がいではSL4(障がいが軽度)クラスの女子シングルスで決勝に進出した藤野遼(はるか)が、第2シードのチェン・フーファン(中国)に11-21、12-21で敗れた。
粘り強さを持ち味とする藤野だが、フーファンのパワーに押されてショットが甘くなり、自身の得意とする展開に持ち込めなかったが、それでも「これまでバックでしのいでいた球を、ほとんどラウンドで返球できていたのは成長しているところ」と充実した表情を見せた。
ライバルであり、刺激を受ける存在だというフーファンとの対戦では「いつも課題が見えてくる」と語り、「ランキングを維持、できればさらに上げてパラリンピックに出たいです」と意欲を見せた。
藤野遼(はるか)コメント
「今回はまずは決勝に進むというのが第一目標だったので、それをクリアーできたのでとてもよかった。決勝で対戦したフーファンにはずっと負けていたので、試合前は本当に点数が取れるのかなと不安でした。これまではバック側をねらわれて、ラウンドに入れずバックで対応していたのを、今回はラウンドで入れたのはよかった点。彼女と対戦すると、いつも自分の課題が見えてくるので、今後も切磋琢磨して頑張っていきたい。フーファンは、彼女がいるから自分も頑張れるという、バドミントンを続けるモチベーションを与えてくれる存在です」
【SL3-SU5/立位女子ダブルス】
立位の女子ダブルスでは、SL3(下肢障がい、障がいの重いクラス)の伊藤則子とSU5の鈴木亜弥子のペアが、決勝に進出。SL4(下肢障がい、障がいの程度がSL3より軽いクラス)同士の選手が組んだ中国ペアに敗れ、準優勝だった。
伊藤則子コメント
「鈴木(亜弥子)さんはシングルスもしているので、その分、私が動かないとという思いは強かったのですが、なかなか足も出なかった。私は主に前衛が役割となるので、相手のショットをネット前で止めて、逆に攻撃につなげられるように頑張りたいです」
鈴木亜弥子コメント
「強い相手だとわかっていたので、その中で自分たちがどこまでできるかなという感じで試合をしましたが、なかなか自分たちの展開にはできませんでした。特に中国選手はSL4の選手のレベルが高い。こうしたペアとの対戦となったら、私が動いてプレーすることが大事なのかなと思います」
各クラス優勝者
【車いす】
WH1(車いすを使用する障がいが重いクラス)
男子単:チィ・ズーマオ(中国)
女子単:スジラット・ポッカム(タイ)
WH2(車いすを使用する障がいが軽いクラス)
男子単:キム・ジョンズン(韓国)
女子単:リウ・ユートン(中国)
WH1-WH2
男子複:マイ・ジャンペン/チィ・ズーマオ(中国)
女子複:里見紗李奈/山崎悠麻(日本)
【立位】
SL3(下肢障がい、障がいが重いクラス)
男子単:ダニエル・ベゼル(イギリス)
SL4(下肢障がい、障がいが軽いクラス)
男子単:ルーカス・マズール(フランス)
女子単:チェン・フーファン(中国)
SU5(上肢障がい)
男子単:チー・リクハウ(マレーシア)
女子単:鈴木亜弥子(日本)
SH6(低身長)
男子単:ナガール・クリシナ(インド)
女子単(エキシビション):カルメン・ジュリアーナ・ポヴェダ・フローレス(ペルー)
SL3-SU5(SL3、SL4、SU5の選手で障がいの程度が合計8以内になるようにペアを組む)
女子複:チェン・フーファン/マー・フェイフェイ(中国)
混合複:ルーカス・マズール/フォゥスティンヌ・ノエル(フランス)
取材・文/バドミントン・マガジン編集部
写真/福地和男