ただおもしろいというだけでなく、上達に役立つヒントやノウハウがたくさん描かれている『シャトルアイズ』。主人公・項羽が成長していく物語の中から、パフォーマンスアップにつながるポイントを片山卓哉氏に教えていただきます。連載第1回のPoint③と④は(①と②の記事はこちら)、故障や体の痛みとの向き合い方や、上達のヒントについて紹介!
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※本稿はバドミントン・マガジン7月号(P72-74)に掲載中の記事を編集・再録したものです。より詳しい内容はバドミントン・マガジン7月号をチェックしてください。
【シーン③】
ケガに苦しむサッカー選手の痛みの原因を
見つけた項羽。安静やフォームの見直しを
促したが…数カ月後に引退<第1話>
上達Point③
故障や痛みは体のサイン。些細なことを
修正するだけで、パフォーマンスが向上する
可能性があることを知っておこう
実際に私も故障をした選手の体を診ますが、焦れば焦るほど頑張る方向を間違えてしまいがち。結果的にオーバーワークとなり、さらにケガを悪化させる可能性が生まれます。どこかを痛めたり、パフォーマンスが落ちてくると前向きな気持ちになりにくいのですが、故障や痛みは「休ませてほしい」という体からのサインです。積極的な休養も取ることが必要となります。
また、マンガにもあるように、ベテラン選手は年齢などによるパフォーマンスの低下を感じやすく、それによってオーバーワークになりがちです。それにともなう痛みが出てくることもありますが、その痛みは、どこかにぶつけたり転んだことなどによる外傷ではない場合、体のバランスが崩れていたり、動きの質の悪さが大きな要因になることが多いです。それらを正せば、痛める前よりパフォーマンスが上がる可能性があることを、覚えておいてほしいです。
【シーン④】
流星との試合を経験し、バドミントンの虜に
なった項羽。職員室で先生がお茶を出す動作を
見て、”ネット際の動作と似ている”ことに
気が付く<第3話>
上達Point④
自分にとって一番効率のいい動きをしている
生活動作。バドミントンに悩んだら、
生活動作にヒントがあるかも!
項羽がいうとおり、先生の「お茶どうぞ」の動きは、ネット前の理想的な動きと同じ。シンプルで無駄がないのです。世界チャンピオンの桃田賢斗選手(NTT東日本)も、「お茶どうぞ」のように、打点までの最短距離でスッとラケットを出してヘアピンやロブを打っています。
じつは、お茶を出すなどの生活動作は、自分の体にとって一番効率のいい動きをしているもの。ラケットを持つと、どうしてもバドミントンのセオリーや考え、クセなどが出てしまいますが、意外とバドミントンとは違う場面でパフォーマンスアップにつながるヒントがあったりします。打ち方に悩んだり迷ったりしたら、生活動作にヒントがないか、考えてみるのも一つでしょう。
【連載第1回ー1の記事はこちらから】
【あらすじ(第1話~第3話)】
中学3年生の主人公・鎹項羽。整体師の息子で、体を見ることで動きのクセがわかる“目のよさ”を持っていた。自分がスポーツを本気でしたことがないことに悩む中、整体院にバドミントン元五輪メダリストが現れて、同い年の世界ジュニアチャンピオン・四乃流星(しの・りゅうせい)の試合を見に行くことに。そこで項羽は、流星の動きを見て、何を打つか先読みする能力を披露する。そのことを知り興味を持った流星が、項羽に試合を申し込んでコートでシャトルを交えた。項羽は1点も取れなかったが、すっかりバドミントンの虜に。そして流星に「バドミントンやれば?」とすすめられ――。
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【解説】片山卓哉
かたやま・たくや●1972年、静岡県生まれ。越谷南高、中央大を経てNTT東日本に入社。96年、2000年に全日本総合男子ダブルスで優勝。引退後は理学療法士の資格を取得し、総合病院などで勤務。様々な競技のトップ選手の身体作りにアプローチしながら、バドミントンの講習会なども積極的に行なう。16年に独立し、埼玉県川口市に『コンディショニングルームKATAYAMA』を開業。 バドミントンを中心に、初心者から日本代表クラスまでの身体作りをサポートする。
取材・構成/バドミントン・マガジン編集部
協力/『週刊ヤングジャンプ』(集英社)