2月24日に『S/Jリーグ2018入替戦』が、立川市柴崎市民体育館で行なわれた。この入替戦は、S/Jリーグ10位のチームと、11月に開催されたS/JリーグⅡの優勝チームが昇格・残留をかけて、毎回激しい戦いを繰り広げている。前回はS/Jリーグのシステム変更により入替戦は行なわれなかったが、今回は2年ぶりに実施。ここではS/JリーグⅡの入替戦と合わせて、女子のダイジェストでお伝えしよう。
【S/Jリーグ入替戦】
今年度、初めてS/Jリーグに参戦した日立化成。S/Jリーグでは初勝利を飾ったものの、順位決定戦で岐阜トリッキーパンダースと激闘の末に敗れ、この入替戦に臨んだ。一方、S/JリーグⅡ優勝の広島ガスは、2015年までは日本リーグ1部(当時)で活躍していたが、降格以降、2部リーグでは苦戦続き。あと一歩で昇格のチャンスを逃した経験があり、この一発勝負にチーム一丸となって挑んだ。
S/J残留へ、あと1勝とした日立化成。しかし、その前に立ちはだかったのは、広島ガスの下田菜都美だ。第1ゲームは日立化成の舟橋佳歩が、高打点からのスマッシュ、カットで下田を揺さぶり12-9と先行。中盤以降の接戦でもポイントを重ねて19-16とした。しかし、追う側の立場だった下田は、冷静だった。「16-19で負けていたけども、19点は気持ちに油断ができやすい。ここで19オールに持ち込めば勝ちが見えてくる」と、我慢勝負に耐えて4連続得点。下田が20-19と逆転に成功する。ここから舟橋も20オールに持ち込んではみせたが、最後は下田が24-22で制し、ねらい通りに第1ゲームを奪った。
どちらも譲れない第2ダブルスに突入すると、第1ゲームを制したのは広島ガス・江藤理恵/小田菜摘。「序盤は相手が引いていたので、そこを畳み掛けることができた」(小田)と、出だしからアグレッシブに攻めて11-4。その後も突き放して21-13で先制をつかむ。第2ゲームは、立て直した日立化成の篠田未来/石橋麻美子が、ドライブから好機を作ってポイントを奪取。17-11と日立化成ペアがリードをつかむと、そのまま押し切ってファイナルゲームに持ち込んだ。
あと1ゲーム−−。緊迫した勝負を制したのは広ガスの江藤/小田だった。「2ゲームは忘れて、出だしから取りにいこうと気持ちを切り替えた」(小田)と、6−4から4連続得点で抜け出すと、さらに5連続得点を奪った広ガスペアが15-5。一気に勝利に近づくと、最後も篠田/石橋の追い上げを抑えて21-12で勝利! 広島ガスが2−1で日立化成を下し、S/Jリーグ復帰を飾った。
広島ガス・菊田健一監督「簡単な試合ではなかったです。どんな試合でも最初が肝心と思っていますが、第1ダブルスを悪い流れのまま落としてしまった。これが後に響くかなと思いました。でも、シングルスの下田が最初こそ硬さはありましたが、なんとか第1ゲームを取って、第2ゲームもねじ伏せてくれた。この勢いに乗って第2ダブルスも頑張ってくれたと思います。
(昇格を決めて)S/Jリーグに名前が変わってから初めての戦いとなる。我々も(S/Jの)試合を見てはいるけども、選手としては、やっぱり立ちたい舞台。監督としても、選手を立たせてあげたいと思っていたので、昇格できてよかったです。ただ、いまのままだと、その舞台に立つだけで終わってしまうと思うので、強化をしっかりしていきたいです」
▼S/Jリーグ入替戦
広島ガス(S/J優勝Ⅱ)2−1日立化成(S/J10位)
平井亜紀/亀田楓●0〔8−21、13−21〕②本田恵利奈/清水望
下田菜都美②〔24−22、21−16〕0●舟橋佳歩
江藤理恵/小田菜摘②〔21−13、15−21、21−12〕1●篠田未来/石橋麻美子
【S/JリーグⅡ入替戦】
8チームで行なわれた女子のチャレンジリーグを制し、S/JⅡ入替戦の挑戦権を手にしたのが丸杉。3年前から女子チームの強化を本格的に取り組んだチームは、S/JⅡ8位のトヨタ自動車と対戦した。
第1ダブルスはファイナルゲームにもつれる接戦となった。第1ゲームは、トヨタ自動車の中村朱里/関矢夕芽が21-14で先制したものの、第2ゲームは21-18で丸杉の大迫晴加/齊藤佳奈が奪い返す。ファイナルゲームも中盤までは接戦となったが、10-8から先に抜け出したのが丸杉ペア。後半になっても攻勢を緩めずに得点を重ねて20-15。トヨタ自動車の中村/関矢もここから2連取したが、最後は大迫/齊藤が押し切って勝利。昨年4月から選手兼コーチとして加わった元三菱電機の大迫は「私は相手を知っているので、本当は自分から仕掛けていきたかったけど、うまく回せず、なかなか自分たちのプレーができなかった。その中でしっかり勝ちきれたのはよかった」と振り返った。
接戦での勝利となった丸杉だが、これによって昇格に大きく前進。シングルスに登場した柴田志歩は、トヨタ自動車の犬飼萌々香に対して第1ゲーム21-6で制すると、続く第2ゲームも同じく6本に抑えて2−0で快勝。相手に主導権を渡さない試合運びで、見事な完封勝利を飾ってみせた。
「やっと男子のいる所に追いつきましたが、女子は自分たちのカラーを出しながらやっていきたいと思います」とは丸杉の戸﨑監督。昨年はあと少しの差でS/JⅡ入りを逃しただけに、1年越しの念願が叶い安堵の表情を見せた。
丸杉・戸﨑守雄監督「今年も会社の理解があり、部員もそろえて、なんとか勝つことができました。チームの中での役割分担を早めに決めて、半年がかりでねらった状態にもっていけたところが勝因だと思います。選手間でもその役割を理解していたし、それぞれがチームのために犠牲になってやってくれました。
今回も予選(チャレンジリーグ)からみんなで戦おうと話してきたし、みんなを試合に出すことができたので、折り合いがついた大会かなと。大会に向けては、とりあえず(チャレンジLを含む)3日間を勝ち抜くための練習メニューに取り組んできました。土日の休みも遠征に行ったり、合宿をやったりしてきたので、それぞれがよいパフォーマンスができたかなと思います。
昇格できてホッとしています。いまは肩の荷が下りたところですね(笑)。選手には『S/Jリーグでやれば、違う世界が見えてくるよ』といってきたので、ぜひとも上をめざして頑張ってほしいです」
齊藤佳奈「男子は2部で戦っているので、早く追いつきたいという気持ちでやってきました。去年はあと少しで上(S/JⅡ)にいけなかったので、今回はなんとかして上がりたかったので、昇格できてよかったです。男子は2部の中でも上なので、追いつけるように、少ない人数ですけど頑張って戦っていきたいです」
▼S/JリーグⅡ入替戦
丸杉(チャレンジL優勝)2−0トヨタ自動車(S/Jリーグ8位)
大迫晴加/齊藤佳奈②〔14−21、21−18、21−17〕1●中村朱里/関矢夕芽
柴田志歩②〔21−6、21−6〕0●犬飼萌々香
中村恭子/諸田彩(試合なし)渡瀬千尋/清田芽生
取材・文/バドミントン・マガジン編集部
写真/菅原淳