バドミントンにおいて、ラケットはプレーヤーの「手」と同じ役割を果たすといっていい。そのラケットのなかでも「グリップ」は、選手によってテープの素材や巻き方が異なり、独自性が出やすい部分だ。ここでは、トップ選手のグリップへの「こだわり」に迫る。
【連載】Vol.15 嘉村健士(トナミ運輸)
かむら・たけし◎1990年2月14日生まれ、佐賀県出身。唐津第一中-八代東高-早稲田大を経て、2012年にトナミ運輸に入社。高校時代からペアを組む園田啓悟とのペアで15年・16年の全日本総合を制覇。16年の香港OPでスーパーシリーズ(以下・SS)初優勝を飾ると、17年のオーストラリアOPではSS2度目のV。同年の世界選手権では銅メダルを獲得した。日本A代表として世界の第一線で活躍する。169㎝、64㎏。血液型O。
ウエットタイプを細めに巻く
――グリップに対する“こだわり”はありますか?
細めが好きです。というか、メチャクチャ細いです。速い展開のなかでコンパクトに振れることが“こだわり”ですね。
――どんなふうに巻くのか、教えてください。
まずは、もともとあるグリップをはがします。そうすると、グリップとシャフト部分のつなぎ目が、ポコッとへこんでいるんですよ。そこにアンダーラップを2周巻いて、テーピングでとめて、デコボコがないようにします。
――それはなぜですか?
僕は前衛で、かなり短く握っているので、だいたいそのあたり(グリップとシャフト部分のつなぎ目)に親指が当たるんです。そこにデコボコがあるとすごく気になってしまう。デコボコがなく、すんなり握れることが大事。そこが昔から一番の“こだわり”です。
――繊細ですね。
そして、アンダーラップを全体に薄めに巻きますが、アンダーラップはあまり替えません。グリップテープを巻き替えても、そのまま使い続けることが多いですね。そこに、こだわりはないです(笑)。
――使用しているのはウエットタイプですね。
一時期、タオルグリップにしたこともありましたけど、大学生くらいからずっとウエットタイプです。あまり手汗もかかないですし、タオルだと太くなりやすくて。僕は握力もパワーもそんなにあるほうじゃないので、ウエットが合っているかなと。
――グリップテープを巻くときのポイントは?
握ったときに重なった部分がデコボコしないように、グリップテープを引っ張りながら巻きます。引っ張らないで巻くと、太さが変わってしまうんですよね。グリップは、細くて手にフィット感があるのが理想です。
――そのあたりも繊細ですね。グリップエンドの部分はどうですか?
たまに太くしてみたりしますけど、そこはこだわりがないですね。短く持つので、あまり関係がないところ(笑)。上は、かなり上のほうまで巻きますけど。
――色については、どうでしょう。
白ですね。
――即答でした! 何か“こだわり”が?
自分のなかで、一番カッコイイと思うからです(笑)。以前は白か黄色でしたけど、ここ最近は、ずっと白です。
――ラケットと合っていますね。グリップテープは、どのぐらいの頻度で巻き替えますか?
とくに決まっていなくて、気が向いたら…、という感じかな。ボロくなっても、けっこう使い続けますよ。全然使えるじゃん! って(笑)。巻き直しても、すぐボロボロになるし…、ずっとレシーブ練習をしていたら、一日でボロボロです!
――とくにボロボロになるのは、親指が当たる部分でしょうか。
そうですね。やっぱり、力が入りますから。巻き直すタイミングの一つは、身だしなみをきちんとしないといけないときです。講習会などで、子どもや大勢の人の前に出るときは、キレイに巻き直していこうと思います。
――「試合前は巻き直さない」という人もいますが、そこはどうでしょう。
巻き直すこともありますよ。アップで基礎打ちをすればなじむので問題ないです。コートサイドにはラケットを6~7本持ち込みますけど、どれも同じ感じで巻いているし、だいたい同じだったらいいかなって思います。ちなみに啓悟(パートナーの園田啓悟選手)は、試合前によく部屋でグリップテープを巻いています。僕はほとんどしないですけど…。
――そうなのですね。
グリップテープを巻くのって、意外と疲れるんですよ(笑)。指が痛くなるし…、引っ張りながら巻くからかなぁ。
――嘉村選手のグリップは、「繊細さとおおらかさが混在している」ということがわかりました。ありがとうございました!