7月29日、中国・南京のヒルトン南京リバーサイドにて、ヨネックス新製品『ASTROX 99(アストロクス99)』発表会が開催された。ヨネックスが新ラケットの発表会をメディアやファン向けに大々的に行なうのは初めて。当日は各省の協会役員や中国メディア、招待客など126名が出席した。
新ラケット発表会には、スペシャルゲストとしてリー・チョンウェイ(マレーシア)が登場する予定だったが、7月30日に開幕する第24回世界選手権(中国・南京)への欠場が決まり、同大会で使用予定だった新ラケットのお披露目に立ち会えず。しかし、チョンウェイの代わりに登壇したのが、中国のスーパースター・林丹(中国)。「ライバルでもあり、友人であるチョンウェイに頼まれてきました」と友情出演したことを明かし、チョンウェイとの思い出話などを語り会場のファンを楽しませた。
その後、新ラケットの開発を担当した山川隆弘氏から、アストロクス99の製品説明が行なわれた。山川氏は「いまのバドミントンは“攻撃力”が勝負を左右するといっても過言ではありません。そのため、アストロクス99では攻撃に必要なパワーを高めることを試みました。これまでシャフト部分のみに使っていた新次元のカーボン素材『Namd(エヌ・アムド)』をフレーム部分にも採用。ヨネックスが純粋にパワーを求めたラケットに仕上がりました」と、新ラケットの特長を語った。また、アストロクス99のカラーは“太陽”をテーマにしており、オレンジとブラックを配色。デザインも、太陽の表面で起きる爆発やプロミネンス(紅炎)をモチーフにしたことも発表された。
製品紹介のあとは再びゲストが登場。チョンウェイと同じく、世界選手権で新ラケットを使用することが決まった桃田賢斗だ。4月に中国で行なわれたアジア選手権で強豪を連破して優勝を果たしたことから、中国での人気も急上昇。桃田は「打っている感覚が手に伝わってくる。自分のプレースタイルに合っていると思うし、精度の高いショットが打てそうです」と話し、新ラケットの手応えもつかんだ様子だった。
その後、発表会の参加者に向けたバドミントンのシャトル当てゲーム「STEEP ATTACK CHALLENGE」が行なわれ、多くのファンが新製品のアストロクス99を実際に手にして、スマッシュを打ち込んだ。なお、STEEP ATTACK CHALLENGEは、今後、日本でも開催される予定(事前にSTEEP ATTACK CHALLENGEを行なったリー・チョンウェイは480点を記録)
大盛況に終わった発表会は中国で視聴できる動画アプリにも配信されており、約140万人が視聴。多くの愛好者からの注目を集めていた。
なお、アストロクス99は9月中旬より世界同時発売が予定されている。
開発担当・山川隆弘氏へのインタビュー
−−これまでアストロクスの中でもパワーがテーマとなっています。これまでのシリーズとは何が違うのでしょうか。
山川 最近はとくにストリングのテンションを硬く張って“弾き”を求める傾向にありますが、一番大事なことは“いかにシャトルにパワーを乗せるか”ということです。そこで、弾きとは逆に「球を持つ」という、接触時間を長くすることに着目しました。アストロクスに採用しているカーボン素材・Namdは、パワーを発揮するための「球持ち」、そしてラケットから離れる「球の出」という部分でも効果を発揮します。今回はNamdをフレーム部分にも使うことで、パワーがしっかり伝わるラケットになりました。
−−弾きだけではなく、パワーもより高まっていくのは選手にとってうれしいことです。
山川 ダブルスなどはドライブなどショートレンジで速く仕掛ける展開が増えています。それは、球を持つ時間よりも、先に出す−−つまり、相手のところに早く届けようとする考えです。しかし、弾きを求める一方で、球離れが早いとパワーがシャトルに最後まで伝わりきらない可能性がでてきます。そうなると、しっかり打ちきれなかった球になってしまう。その部分で、今回のアストロクス99はしっかりパワーが伝わるようにしています。
また、トップ選手の中には“柔らかくて重いラケット”を求めることも多く、いろんな選手のプレーを見ても上から打つショットでは球持ちが重要であることがわかりました。弾き=スピードと考えるならば、今回は球持ちがよく、パワーを重視したラケットを導き出したという形になります。
−−よりシングルス向けのラケットになるのでしょうか?
山川 そういうわけではありません。アストロスク99は、上級者の攻撃力を高めるというのが一つのテーマです。パワーアップはどのプレーヤーにもメリットになりますが、ただ、持ってみてもわかる通り、ヘッドヘビーのラケットになるので上級者のほうが、しっかり振り切れることになるかもしれません。弊社の中ではいま最もヘッドヘビーのタイプになりますが、その重さというのも重量配分することで、遠心力に還元することができている。ヘッドヘビーで重さは感じますが、振ってみると意外と振りやすいと感じる人も多いと思います。
−−ラケットを開発する中で重視したことはありますか?
山川 開発当初は、これまでのアストロクスにも使っているNamdをフレームなど全身に施す構想もありました。ただ、“持ちすぎ”はよくないと考えていたので、設計してから打球感、球の出のバランスなど、何度も何度も試作を重ねていくうち、ようやくたどり着いたのがこのラケットです。いろんなトップ選手にも試打してもらい、その中でチョンウェイ選手、桃田選手にもお願いしました。どちらも試打をするなかでいろんなショットを試して感覚を確かめていましたが、最後のほうにスマッシュを打った後、“ニコッ”としていました。それを見たときに、“キタ!”と思いましたね(笑)。ぜひ、みなさんにこの高性能が届けばいいなと思っています。
アストロクス99の商品情報は こちら
取材・文/バドミントン・マガジン編集部
写真/北川外志廣、ヨネックス、Tang Shi