5月25日にタイ・バンコクで開催された「トマス杯・ユーバー杯2018」6日目は、トマス杯決勝トーナメント準決勝の日本VSデンマークが行なわれた。
準々決勝でフランスを3−1で下し、2大会ぶりのメダルを確定させた日本男子。準決勝は、前回のトマス杯王者・デンマークと対戦した。両国にとってカギとなる第1シングルス。日本は桃田賢斗、そしてデンマークは世界王者のビクター・アクセルセンが登場。同世代のライバルが、国の威信をかけた大舞台で2年ぶりに激突した。
「第1ゲームにすべてがつまっていた」とは桃田。その言葉通り、一球一球に気迫のこもったラリーを展開。世界王者にもまったく引けを取らない質の高いショットでポイントを重ねると、第1ゲームは21-17で先制する。第2ゲームは「(相手は)途中から集中力を欠いていた」と話すように、桃田の独壇場。ネット勝負でアクセルセンから主導権を握ると、鋭い攻撃も決めて21-9。日本にとって貴重な一勝を手にした。
一気に王手をかけたい日本だったが、第1ダブルスの園田啓悟/嘉村健士はボー/ピーターセンに苦戦。「サービスまわりで抜けて、自分たちの攻撃につなげたかった」(嘉村)と、先手で得意な形に持ち込みたかったが、ここはベテランのボーが一枚上手だった。第1ゲーム18-21で日本が落とすと、続く第2ゲームも15本で封じられ敗戦。日本は1−1で第2シングルスに進む。
ここで負ければ苦しい状況に追い込まれる日本だったが、西本拳太が持ち味のねばり強さを披露。前回大会でデンマークの優勝に貢献したH・K・ヴィテンフスに対し、第1ゲーム10-2と抜け出す。相手も猛追して一度は18-19と逆転を許した西本だったが、ここから意地の3連取。第1ゲームを制した。
第2ゲームも、我慢強くラリー勝負に持ち込んだ西本。すると、疲れが見える相手がアウトミスを連発。「1ゲーム目で我慢したことが(2ゲームの)相手のミスにつながった」と西本が振り返るように、終始ペースをつかみ最後は21-12に抑えてストレート勝利。日本が2−1で王手をかけた。
第2ダブルスには、予選リーグの初日・香港戦から中4日で試合に挑む井上拓斗/金子祐樹。第1ゲームはレシーブからチャンスを作り21-17で制したが、この勢いが続かない。「守りの展開が多くなってしまい、少しずつ足も止まって攻めきることができなかった」と井上。第2ゲーム14-15の接戦から相手に抜け出されると、ファイナルゲームも攻撃につなげられず。1時間17分の熱戦を落とし、勝負の行方は第3シングルスに持ち込まれた。
第3シングルス。「自分の力を出し切ることだけを考えていた」と、コートに立ったのは常山幹太。初対戦となるヤン・O・ヨルゲンセンには「サービスを打った後に詰めてくるのがわかっていた」とサービスまわりを警戒し、しっかり対応。ラリーに持ち込んで第1ゲーム13-7で先行すると、中盤14-16と逆転されても焦らず我慢勝負。得意の形でポイントをつかんだ常山が、21-18で制して第2ゲームへ。
「僕はスタミナで勝負しないと勝てないので、ラリー、ラリーで、甘い球を打ってくるまで我慢した」と、プレッシャーがかかる場面でも常山の考えはブレなかった。ラリー勝負で勝機をねらうと、長いラリーにしびれを切らしたのがヨルゲンセン。常山が7−6から一気に16-7まで点差を広げると、ヨルゲンセンもなす術なし。最後は21-10で振り切った常山が、日本を決勝に導く会心の勝利を飾った。
2014年優勝以来の決勝進出を決めた日本は、27日に中国とトマス杯をかけた頂上決戦に挑む。
◆トマス杯/決勝トーナメント・準決勝
日本 3−2 デンマーク
MS1 桃田賢斗②〔21−17、21−9〕0●ビクター・アクセルセン40分
MD1 園田啓悟/嘉村健士●0〔18−21、15−21〕②ボー/ピーターセン46分
MS2 西本拳太②〔21−19、21−12〕0●H・K・ヴィテンフス
MD2 井上拓斗/金子祐樹●1〔21−17、16−21、15−21〕②アストルップ/ラスムセン77分
MS3 常山幹太②〔21−18、21−11〕0●ヤン・O・ヨルゲンセン47分
トマス杯:バドミントン世界一の国・地域を決める団体戦として最も権威ある大会。ト杯は1939年に国際バドミントン連盟(現世界バドミントン連盟)会長のジョージ・トーマス卿(全英OP21回優勝)が、大会の開催を進め、優勝トロフィーを寄贈。大会名にその名がつけられた。1941年に初開催を予定していたが、第2次世界大戦のために。延期。1948-49年に念願の第一回トマス杯が開催された。84年に男女同時に開催、86年から2年に一度の開催(それまでは3年に一度)となった。
試合形式:2ダブルス(複)、3シングルス(単)で、世界ランキングの高い順に試合が行なわれる。試合の種目順はオーダーによって変わる(種目順の例:第1単→第1複→第2単→第2複→第3単)。予選リーグは5試合すべてを行ない、決勝トーナメント・準々決勝以降は先に3試合を制した国・地域が勝利。単複兼ねて出場することができる。
取材・文/バドミントン・マガジン編集部
写真/菅原淳