11月9日(木)、日本バドミントン協会は日本代表・混合ダブルスの専任コーチとして、マレーシア代表・男子ダブルスのコーチを務めるジェリミー・ガン氏の招聘を発表した。契約は2018年1月1日から。
日本協会によると、ジェリミー氏は2003年からマレーシア協会のジュニアアカデミーコーチ、同ヘッドコーチなどを務め、2009年からナショナルチーム・混合ダブルスコーチに就任。2015年には男子ダブルスコーチとなり、2016年リオ五輪・銀メダルに輝いたゴー・Vシェム/タン・ウィーキョンらトップ選手を指導し、好成績を収めた。今年12月末にマレーシア協会との契約が切れることから、日本協会は経験豊富なジェリミー氏に白羽の矢を立てた。
ジェリミー氏は現役時代、主にダブルス選手として活躍。1996年の世界ジュニア男子ダブルス優勝(ペアはチャン・チョンミン)ほか、ナショナルチームに入ってからは1999年ヨネックスOPジャパン(現ダイハツ・ヨネックスジャパンOP)8強、01年インドネシアOP8強などの成績を残している。
低迷が続いた混合ダブルス
日本代表は、朴柱奉監督が就任した2004年当時から混合ダブルスの専任コーチを設けておらず、アトランタ五輪・混合ダブルス銀メダル、世界選手権優勝などの実績がある朴監督らが主にコーチ席に入り、選手にアドバイスを送っていた。しかし、混合ダブルスは男子・女子ダブルスと兼ねる選手が多く、ペアとして練習機会も少なかったため、00年代は目立った成績を残せず、同種目に注目が集まることは少なかった。
一躍脚光を浴びるようになったのは、2012年ロンドン五輪に池田信太郎/潮田玲子の出場が決まったとき。五輪では結果を残すことはできなかったが、池田/潮田はスーパーシリーズでも上位成績を残しており、同種目の認知度を上げるばかりではなく、レベルアップにも貢献していた。だが、2人の引退後、混合ダブルスに専念する選手はなかなか現れなかった。
東京五輪でのメダル獲得に向けて
再び混合ダブルスにスポットライトが向けられたのは、2015年のスディルマン杯だ。大会1カ月前にペアを組んだ数野健太/栗原文音が、チームの銀メダル獲得に大きく貢献。すると、2016年からは混合ダブルス専門としてリオ五輪レースをまわり、見事出場権を手にした。さらに、リオ五輪本番でも数野/栗原は予選リーグを突破し、ベスト8に入る活躍をみせている。
2人に続く後輩たちも育っている。今年3月のSSプレミア・全英OPでは渡辺勇大/東野有紗がベスト4。5月のスディルマン杯では、世界ランク上位の中国ペアを下すなど、世界の強豪にも引けを取らないペアに成長した。今回のジェリミー氏の招聘によって生まれる新たな化学変化、そして混合ダブルスでは困難とされた世界選手権や五輪でのメダル獲得にも期待は高まってくる。
先日発表された「2018年日本代表選考基準」によると、混合ダブルスは全日本総合後の12月18日〜21日に、同種目だけの選考会を行なうことが決定している。現在、混合ダブルスを中心にスーパーシリーズを転戦しているのは数野/栗原のみだが、選考会の結果によっては、混合ダブルスに専念する選手が増える可能性もある。日本ペアの世界ランク最上位は数野/栗原の15位、二番手に20位の渡辺/東野、その後は45位の小林優吾/松友美佐紀が続いている。ほかの4種目と同様の好成績を残すには、まずは複数のペアをグレードの高い大会に送り込むこと、そして確実に1、2回戦を勝ち上がりランキングを上げることが求められる。
2020年東京五輪、日本から混合ダブルスに出場できるペアの数は最大で2(2017年現在)。確実にこの2枠をつかむには、2019年の五輪レース開始までに3、4ペアが20位以内に入っているのが理想といえる。混合ダブルスでのメダル獲得を本気でねらうJAPANだが、新たな取り組みが他種目にもよい影響を与え、さらなる相乗効果につながることにも期待したい。
文/バドミントン・マガジン編集部