9月7日から10日まで、東京都町田市で「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2017」が開催される(開会式は6日に開催)。2020年東京パラリンピックから正式競技となるパラバドミントンだが、その国際大会として、今大会が初の国内開催となる。日本障がい者バドミントン連盟理事長の平野一美氏に大会の見どころなどをうかがった。(本稿はバドミントン・マガジン9月号に掲載されたものを再構成したものです)
6つのクラスからなるパラバドミントン
パラバドミントンにはツアー大会があり、2017 年度は9大会。11月の世界選手権と合わせて、計10大会が行なわれます。日本代表選手が戦う「スーパーシリーズ」のようなもので、そのうちの一つが今回、9月に日本で開かれることになりました。
2020年の東京パラリンピックから正式競技となるパラバドミントンの国際大会。といっても、パラバドミントンにあまりなじみがない、見たことがないという方が多いのではないでしょうか。
どんな競技か簡単に紹介すると、障がいの箇所や程度によって6クラスに分かれています。『車いす』を使うのが「WH1〜2」、『立位』の下肢障がいが「SL3〜4」、上肢障がいが「SU5」、低身長が「SS6」です(表参照)。
クラスによってはコート半面でプレーするなど、バドミントンとの違いはあります。そこで「障がい者のバドミントン」として見るより、「車いすでやる競技なんだ」「義足ではこういうプレーなんだ」と、競技性に注目していただきたいと思います。
たとえば、車いすではフットワークにあたる「チェアワーク」が特徴です。いかに素早くシャトルの落下地点に到達し、スイングまでの時間を取れるか。車いすの操作性と、読みの鋭さが勝負の分かれ目です。クリアーとカットで相手を動かしながら、思うように打てない位置に追い込み、ミスショットを誘ったりするのがセオリーの一つ。ところが、最後にスマッシュを打ち込むと、切り返されてしまうこともしばしば。最後の最後で局面が変わってしまうおもしろさもあります。
技術的には、座ったまま打つ難しさがあります。ジュニアの指導者の方には、「一度、経験してみてください。座ったままで打てるようになれば、そんなに力を入れなくても楽に打てることがわかりますから」と、おすすめするほどです。
立位の下肢障がいSL3のシングルスはプレーコートが半面ということもあり、クリアーとカットの応酬という玄人好みのラリー。「相手が100本打ってきたら、101本打ちましょう」という世界で、1時間以上の試合もあります。トップ選手となると、ビックリするような体勢からギリギリのところに打つ技術もあり、目を見張ります。
立位の下肢障がいSL4、上肢障がいのSU5 は障がいの程度が軽く、健常者のバドミントンと共通のおもしろさがあります。低身長のSS6は、体が小さい選手がコート全面を走り回り、飛び回る。自分の体に合わせた打ち方は理屈を超えて、とてもエキサイティング。世界のトップ選手のプレーが見られることを、私も楽しみにしています。
日本はパラバドミントン強国の一つで、多くのクラスで世界ランク上位の選手がいます。今大会でも活躍が期待される選手がたくさんいます。ぜひ会場に足を運んで応援していただきたいと思っています。
身近なところから選手が育つ環境を
パラバドミントンは、本格的に始めて国際レベルになるまで、約3年といわれています。いまから始めれば、20年にギリギリ間に合うかもしれません。競技人口が増えることは大歓迎です。いまの代表選手たちも、「スポーツセンターでバドミントンを楽しんでいたら、いきなり日本代表になった!」というのが実情です。
パラバドミントンはメダルがねらえる競技であり、長く楽しめる競技でもあります。ただ、地域に受け入れてくれる場がないと、続けていくことは難しい。連盟主導の練習や講習会といった単発の場だけでなく、「障がい者も受け入れるよ」というクラブが出てきてほしい。そうなれば間違いなく、選手たちは強くなっていくはずです。
まずは、パラバドミントンという競技を見て、知っていただきたい。世界トップレベルのプレーを見て、「こういうバドミントンもあるんだ」と感じていただきたい。そして、いつか「パラバドミントン」という呼称がなくなって、「バドミントンの中に車いすのクラスがある」といったようになればいいなと思います。
◇大会概要
大会名:ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2017
日程:9月7日(木)~10日(日)
会場:町田市立総合体育館(東京都町田市南成瀬5-12JR横浜線「成瀬駅」より徒歩約9分)※10日はレジェンド・ビジョンと同じ会場
参加選手:世界29カ国、男女約200名(日本からは代表強化指定選手全36人が出場予定
ひらの・かずみ◎1961年2月10日、熊本県生まれ。長崎日大高―久留米大卒。バドミントンは高校入学後から始め、社会人でもプレーを続けるかたわらコーチの資格を取得。その後、2015年4月に日本障がい者バドミントン連盟を立ち上げ理事長に。日本体育協会公認バドミントン上級コーチ、日本障がい者スポーツ協会公認スポーツコーチ、福岡県バドミントン協会理事、NPO法人日本バドミントン指導者連盟理事など。
取材・構成/バドミントン・マガジン編集部