ベンチ、応援席、そして選手が一体となって勝利をめざす――。
高校生たちの熱い夏が、いよいよ7月29日に山形県で開幕する。
インターハイは、2011年から取材をしている。その6年間、夢をかなえた高校生の歓喜の笑顔や、目標に届かなかった者の悔し涙、歴史が動いた瞬間など、さまざまなシーンを目撃してきた。取材を重ねるなかで印象的だったシーンは数多くあるが、ここでは、とくに心に深く残っている試合と選手を紹介したい。
試合としては、13年の福岡インターハイ男子団体決勝。9連覇をめざす常勝軍団・埼玉栄(埼玉)を、富岡(福島)が3-2で退けて初優勝を遂げたときだ。その勝ち方が、なんとも劇的だった。第3シングルスにもつれた勝負は富岡のキャプテン・保木卓朗が勝利を決めたが、そのファイナルゲームは終盤に両足をつり、試合は中断。棄権の二文字が保木の脳裏をかすめた。しかし、試合を再開すると、最後まで懸命にシャトルに食らいついた富岡が見事に勝利。この奇跡のような結末に、どんな状況でもあきらめない気持ちの大切さや、最後まで何が起こるかわからないチーム戦の醍醐味を実感したものだ。
印象深い選手としてあげるのは、現在、世界ランキング2位で日本のトッププレーヤーの山口茜である。地元・福井県の勝山高で練習を重ねた彼女は、15年のインターハイで大会史上初となるシングルス3連覇を達成した。すでに世界を舞台に活躍していた山口は、インターハイと同時期に開催される世界選手権へ挑戦することもできたが、インターハイへの出場を決断。そして、大きな期待と注目のなか、前人未踏の大記録を打ち立てたのである。
ただ、印象深いのは3連覇を果たしたからだけではない。山口はこの年、1年時から出場する団体戦で単複の柱としてチームを3年連続の3位へとけん引。鈴木咲貴と組んだダブルスでは、2年時の3位を超える準優勝と、本業以外でも眩い輝きを放っていた。
「これまでずっと勝山で育ててもらったので、『みんなと勝ちたい』思いがあったんです。育ててもらった方々に、インターハイで成長した姿を見てもらいたかった」
最高の仲間とベストのプレーをすることで、支えてくれた方々に恩返しを――。これこそが、高校3年生の彼女が一番したかったこと。そして、5日間で20試合を戦い抜く原動力となった“思い”だ。
結果として団体戦は、本人の目標だった決勝進出、ダブルスは選抜との春夏連覇を果たすことはできなかったが、「最後まであきらめずにプレーできた。成長した姿を見せられたと思う」と山口。そして、「インターハイを選んでよかった」ときっぱり話した。その表情からは、全種目を全力で戦い抜いたからこその清々しさが感じ取れた。
今年のインターハイは、史上最多となる100校が団体戦に出場。個人戦には、各種目98組(人)がコートに立つ。選手の数だけ目標はさまざまだが、それぞれが目の前の勝負を戦い抜き、コートで力を出しきる姿を、今年もたくさん目にしたいと思う。
バドミントン・マガジン編集部・結