バドミントンにおいて、ラケットはプレーヤーの「手」と同じ役割を果たすといっていい。そのラケットのなかでも「グリップ」は、選手によってテープの素材や巻き方が異なり、独自性が出やすい部分だ。ここでは、トップ選手のグリップへの「こだわり」に迫る。
【連載】Vol.8 五十嵐優(中央大)
いがらし・ゆう/1995年5月15日生まれ、山形県出身。鶴岡第四中-埼玉栄高-中央大(3年)。主な戦績は’09全日本ジュニア新人の部シングルス2位、’13インターハイ複3位、’15インカレ単2位・複3位、’16日本ランキングサーキット優勝など。’16インカレでは団体、個人単の2冠を達成した。171㎝68㎏。ナショナルB代表所属。
「タオルグリップが好み。太目に巻くほうが力は入りやすい」
――グリップに対する“こだわり”はありますか?
あまりないと思っていたのですが、いざ考えてみると、結構こだわりがあるほうかもしれません(笑)。いまのグリップになったのは、埼玉栄高校に入ってからです。以前のグリップテープはウェットでしたが、高校から手汗が気になるようになり、滑らないようにタオルを使い始めました。
――太さに関してはいかがでしょうか。
わりと太目に巻くのが好きですね。細目のほうが力を入れやすいとみんないいますけど、僕の場合は逆。太目のほうが力は入りやすいんです。細いと、とくにネット前のショットはラケットが回るというか、ブレる感覚があります。太目に巻くことで、自分の手にフィットするようにしています。
――具体的にどのように太目に巻いていますか?
まず、ラケット本体にもともと巻かれてグリップテープをはがします(木が見える状態にする)。市販のテーピングテープを薄く巻き、その上にアンダーラップも巻いていきます。さらにタオルを巻いているのですが……グリップを巻くのに3工程もあるのは、ちょっと面倒ですね(笑)。
――どのような頻度で張り替えていますか?
とくに決まっていません。自分が握りやすいなと思ったら、ボロボロになっても使ってしまいます。タオルの場合はとくに、握る手の形がグリップに残る感覚があるので、練習で慣れたグリップで試合をするのが理想です。でも、握りにくいと感じたら、大会前でも変えちゃうことがありますね。
――グリップエンドは、膨らみを持たせているように見えます。
この膨らみを作ったほうが、手の中でグリップが固定されるので、プレーをしていて安心感があるんです。
――それだけグリップの感覚はプレーに影響するのですね。
そうですね。シャトルをコントロールするにあたって、自分の感覚がしっくりくるグリップを使うのはすごく大事なことだと思います。納得のいくグリップであれば自信を持ってプレーできるし、グリップに不安があれば、気持ちまで不安定になってしまうような気がします。
――最後に、色に関してのこだわりはありますか?
色は……いろいろです(笑)。この色で優勝したから次も使おう、といったゲン担ぎはとくにしません。試合では、自分がやってきたこと、練習を信じるのみです!
五十嵐流!
アンダーラップ&タオルグリップの巻き方
クッション性に優れた“アンダーラップ”は、オーバーグリップの前に巻くことで太さを調整したり、グリップを握ったときの柔らかさを実現することができます。五十嵐選手は、このアンダーラップを使って、グリップエンドの“膨らみ”を作るとのこと。ここでは、そのアンダーラップと、タオルグリップの五十嵐選手流の巻き方を紹介します!
①アンダーラップを写真のように細くして指でつまむ
②その状態で、グリップエンドにアンダーラップを3周ほど巻く(それぞれの好みの太さでOK)
③ “膨らみ”部分を作ったら、アンダーラップを自分から見て右斜め下に向かって巻いていく。このとき、上に巻くグリップテープの厚さを考えながら、アンダーラップの太さを調節する
④最後はちぎって終了
⑤次に、タオルグリップを自分から見て左上から右下に向かって巻いていく。五十嵐選手の場合、タオルグリップをほとんど重ねて巻かない。左手でラケットを回していくとスムーズに巻けるそうだ
⑥巻き終えたら、グリップエンドの飛び出た部分は内側に折り込む
完成! みなさんがグリップを巻くときの参考にしてください!
構成/バドミントン・マガジン編集部