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【リオ五輪】池田信太郎のリオ五輪レポート⑥  チョンウェイvs林丹!

皆さん、こんにちは! 今日は男子シングルス準決勝・林丹選手(中国)対リー・チョンウェイ選手(マレーシア)の試合についてふれたいと思います。バドミントンファンなら誰もが注目する顔合わせですが、実際も本当にすごい試合になりました。

 

2人の試合は予選リーグや準々決勝も見ていましたが、今日は明らかに最初からペースを上げてラリーをしていました。1ゲームは林丹選手のディフェンスがとくによかったですし、チョンウェイ選手にもミスが目立って攻めきれませんでしたね。チョンウェイ選手といえば攻撃的なプレーが魅力で、ストレートスマッシュを打って素早く前に詰める展開が思い浮かびますが、林丹選手がそういった攻撃をさせないように対応していました(林丹選手が21-15で先取)。

堅い守備からシャトルを回し、隙があれば正確なショットで射抜く。林丹選手のプレーも見事!

 

ただし、2ゲームに入るとチョンウェイ選手がスマッシュを徐々に打ち抜けるようになりました。序盤から4~5点リードしたことで、気負いなくプレーできたことがよかったのではないでしょうか。その後も落ち着いて、試合を進めていましたね。林丹選手は2ゲームになってコートが変わり、ペースを少し落とした印象を受けました。先にリードを奪われて、結果的にこのゲームを捨てた形になっていました。

 

そしてファイナルゲーム。序盤から2点差以内の攻防が続きましたが、お互いのいいところが出ていました。林丹選手はチョンウェイ選手の攻撃を受け、チャンスをつくって今度は自分でしっかりコースを突いていく。それに対してチョンウェイ選手は、長いラリーになる前にクロススマッシュを積極的に打つことで、ペースを握ろうとしていました。

 

終盤、チョンウェイ選手が20-17としてマッチポイントを握ってから、林丹選手が3連続得点で追いついたのですが、このラリーのレベルが非常に高かったです。林丹選手はマッチポイントを取られても、最後まで自分のプレーに集中して、チョンウェイ選手に追いついた。とくに19-20からのラリーで、プッシュを打たれて後ろに下げさせられて、その後、前に打たれたんですが、これを驚異的なカバー力で対応していました。彼のフィジカルの強さが、土壇場で生きました。ただし、そのあとチョンウェイ選手が2点をあげて勝負を制したのも素晴らしかったです。

林丹選手に対して、オリンピックでは3大会目で8年越しのリベンジを果たしたリー・チョンウェイ選手。すごかった!

 

今日はテレビの解説をしていたんですが、解説者として話をするのが難しかったです。通常の試合であれば、「いま○○選手は、このコースがとれていないから苦しい」とか「体力やスピードが落ちているから、ペースを握られている」といったように、“穴”になっているところを話すことで、相手にとっての打開策など提示して話を進めていくことが多いのですが、今日の2人のパフォーマンスは素晴らしく、穴がありませんでした。本当に、決勝にとっておきたいゲームでした。

 

最初に決勝を戦った北京五輪から8年がたちますが、この2人が依然として男子シングルスで最もパフォーマンスがよかったですね。もう1試合(諶龍vsビクター・アクセルセン)も見ましたが、レベルが違いますよ。本当に基本的なことですが、動けて、打てる。そのレベルが本当にすごい。

 

日本選手との差ですか? もちろん、「動けて、打てる」というところなんですけど、2人は異次元というか、彼らと一緒のレベルで考えてはいけないような気がしています。陸上競技でボルト選手(ジャマイカ)を目標にするような、そんなイメージでしょうか。もちろん、理想を追い求めることは大切ですが、まずは一つひとつ自分ができることをクリアしていくことが、大事になってくると思います。

 

2人の年齢を考えるとオリンピックでの再戦はないかもしれませんが、4年後の東京五輪で、チョンウェイは37歳、林丹は36歳です。でもじつは、ピーター・ゲード(元デンマーク代表)は36歳で引退しているんですね。だから、できないことはないと思うんですが…。とくに、チョンウェイ選手は、長期的に2020年に照準を合わせれば、可能なんじゃないかな。2人の試合が、もう1回オリンピックで見られるんだったら、ぜひ見てみたいですね。

 

いけだ・しんたろう◎1980年12月27日生まれ、福岡県出身。九州国際大付高―筑波大―日本ユニシス。07年世界選手権の男子ダブルス3位、08年には全英OP男子ダブルスで日本勢21年ぶりの4強に進出。08年北京五輪(男子複)、12年ロンドン五輪(混合ダブルス)に出場するなど、長年日本のダブルス界をけん引した。15年9月に現役引退。

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