髙橋/松友ペア、やってくれましたね! バドミントン初の金メダル、僕も感動しました。ファイナルゲームの16-19から最後、爆発しましたね。正直なところ、ここで1本取れなかったらまずいと思っていましたが、本当によくひっくり返しました。VTRでも、最後の局面のラリーを見ましたけど、本当にすごかった。
あの場面、相手がネット前に落とそうとしてきた球を、拾ってロブでネットにかけることや、プッシュでネットにかけることは本当によくあるんです。でも彼女たちはそのミスがなかった。相当集中していたはずですし、本当に正確な技術が体にしみついていたんだでしょう。
最後の5連続ポイントに、彼女たちの強さが集約されていると思います。世界ランク1位でやってきて、高いレベルでの場数をよく踏んでいるから、ああいう状況でも、「髙橋が後ろ、松友が前」という、自分たちのやってきたことを信じることができた。相手の勢いや何かでポイントを取られることはない、自分たちがアクションを起こすことでポイントを取っていくといった、本当の強さが感じられました。
表彰台で一番高く上がっていく日の丸を見て、「一番上に立つ難しさというのは、彼女たちにしかわからないな」ということも正直、思いましたね。
一番いい色のメダルを取ってくれて、本当にうれしいんですが、このメダルを日本のバドミントン界にどうつなげていくかが大事だな、ということも頭によぎりました。
これまでは銀メダルが最高だったので、「上にもう一つある」という思いがありました。でも、頂点を取ったんです。最高である金メダルの価値を、どうやって日本バドミントンの活性化につなげていくのか。この熱をどのように2020年につなげていくのか。どのように2020年以降の若い世代を強化していくのか――。
まずは髙橋/松友ペアに金メダルに見合った讃え方を、日本協会はすべきだと思います。それと同時に、ほかのトップ選手たちへの対応、全日本総合などの大会運営、さらにメディアの対応なども、金メダルをとった国としてのレベルが求められるでしょう。これからは間違いなく、国内基準ではなく、世界基準で考えていく必要があります。
今回の金メダルが、そういったことを見直すためのきっかけになってくれればと思っています。
構成/編集部
いけだ・しんたろう◎1980年12月27日生まれ、福岡県出身。九州国際大付高―筑波大―日本ユニシス。07年世界選手権の男子ダブルス3位、08年には全英OP男子ダブルスで日本勢21年ぶりの4強に進出。08年北京五輪(男子複)、12年ロンドン五輪(混合ダブルス)に出場するなど、長年日本のダブルス界をけん引した。15年9月に現役引退。