★奥原希望の「独り言」解読
「目の前の一球に集中するための呪文」（奥原）
――奥原さんのルーティンといえば、コートに入る前の「独り言」でしょうか。あれは、いつから始めているんですか？
奥原 昨年９月のジャパンオープン（編集部注：ヨネックスOPジャパン）で優勝したときです。ケガから復帰して３年ぶりに出た大会で、１回戦は端っこのコートだったんですよ。でも、あの場に立つのが久々すぎて、ふと「ここに立てるだけで幸せなんだな」ってすごく感じて。自然に言葉が出ました。
早川 そのとき、何ていったん？
奥原 「こんなにファンのみなさんの前で戦えるなんて……」
早川 え？ 本当にいってるの（笑）!?
奥原 本気で、本気で、いいましたよ！
早川 ホンマに？ 毎回、何をいってるの？
奥原 「まずは、このコートに立てることに感謝して……」
早川 それ、絶対にいうの？
奥原 絶対いいます。……なんで笑ってるんですか（笑）！
早川 いやー…（笑）、それで何か変わるの？
奥原 勝ちに執着すると、一本取られたらどうしようとか思っちゃうじゃないですか。目の前の一球に集中できるんですよ。その後には、対戦相手の対策だったり、今日どうしようということを言って……。
早川 毎回いってんの？ 一球一球に？
奥原 一球一球じゃなくて、コートに入る前です！
早川 ああ～、そういうこと！ 一球一球いってたら、頭悪いんちゃうかなって思うわ（笑）。「スマッシュ打とう！」とか、それこそフォルト取られるわ（笑）。
奥原 違いますよ！
――コートに入る前、けっこう長くしゃべっていることもありますよね。
奥原 あります。
早川 まあ、コートに入るときやったら怒られないのか。でも、おれは絶対いわないな。そんなことやってたら、遠藤にキレられる（笑）！
奥原 でも、どうするとかは話しますよね？
早川 それはあるよ。入場するときとか、試合直前とか、ラリーの合間とか。
――シングルスは一人だから、自分にいい聞かせる感じになるんですよね。
奥原 そうです。
早川 ああ、呪文ってことか！
奥原 そうです。早く入れって注意されたら、一度止まって「よし」といって入ります。一度立ち止まることで、落ち着くので。
★早川賢一の緊張と付き合う方法
「緊張するから集中したくない」（早川）
――早川さんは、試合前に緊張するタイプだと聞いたことがあります。
早川 めっちゃ緊張します。まあ、それを抱えてやってナンボ。緊張しない試合はないですから。
奥原 そうなんですか？
早川 うん。寝られないときもあるし。
奥原 日本でも海外でもですか？
早川 日本でも海外でも、小さい大会でも。やべぇ腹痛い…、って、トイレにこもったりしてるよ。
奥原 意外！ どうやって乗り越えるんですか？
早川 一人でいると緊張してダメだから、誰かとしゃべって緊張をほぐす。試合のことを考えないようにして、リラックスしていく。小学生の頃からずっとそう。
奥原 しゃべっていると、集中できなくないですか？
早川 集中したくないねん、緊張するから。
奥原 緊張を紛らわせるんですね？
早川 うん。緊張して心臓がバクバクして息が上がってくると、疲れちゃうから。試合が始まれば、もう逃げられないけど、それまでは逃げたい自分がいるんだよ。
――バドミントンを頑張っている選手にとっても、励まされる話ですね。あの早川さんでもそうなんだ！って。
早川 めちゃくちゃ緊張するヤツっているじゃないですか。おれは、その部類です。奥原は緊張しないタイプ？
奥原 もちろん緊張しますけど、しゃべっていると集中して入れないので……。どっちを優先するかということで、私は集中するほうを選びます。集中して緊張を忘れるタイプですね。
早川 そうか、おれとは対照的やなー。
★日本でのオフ――それぞれの過ごし方
「『お父さん』やってます」（早川）
「焼肉、お寿司、ウインドーショッピング」（奥原）
――日本での休日は、どんなことをして過ごしていますか？
早川 休みの日は子ども（２歳）と遊ぶくらいですね。ちょこちょこしゃべり始めているので、「パパ」って呼ばれたら、「なに？」って。
奥原 声のトーンが、いままでと全然違いますよ（笑）。
早川 そう（笑）？ 散歩に出かけたり、公園やショッピングモールに行って、砂場や子ども広場で「お父さん」やってるよ。殴られても何されても怒らない甘い父親で、その分、嫁が怒ってくれています。
――早川さんがバドミントンをやっていることを、お子さんはわかっていますか？
早川 わかっていないと思います。本当はもっと一緒にいたいけど、まあ、仕方ないですね。とにかく忘れられないように、おれの写真を見せておいてもらったりしてます。
――試合の動画を見せてもらったりとかも？
早川 そう、動画といえば、（７月の）全日本実業団（選手権）で動画配信があったんですが、そのとき、嫁から動画が送られてきたんです。女子が試合をやっていたとき、ぼくの後ろ姿が映っていて、それを子どもが指差しながら「パパ」っていってたんです。
奥原 すごい！ しかも、後頭部（笑）！
早川 たまに振り返って、顔も映っていたと思うんだけどね（笑）。その様子を見てホッとしたよ。ああ、覚えていてくれてる！ って。
――奥原さんは、日本での休日はどんなふうに過ごしますか？
奥原 だいたい、遠征から帰った次の日はオフなので、治療三昧か、あいた時間においしい物を食べに行ったりしています。焼肉かお寿司が多いかな。焼肉はタンが好きで、タンで始まって、タンで締めるくらい。
早川 寿司のネタは何が好きなの？
奥原 炙りエンガワ！ あと、ツブガイ、ウニも好きです。
早川 おれは、ウニはダメ……。エンガワとかツブガイは好きで、サーモンも好き。でも、一番好きなのはネギトロだな。
――奥原さんは、コートから離れたとき、「女子力」を上げるために実践していることはありますか？
奥原 服が好きなので、ウインドーショッピングはしますね。服でモチベーションを上げて、自分の中でちょっといい感じだと、ちょっとルンルンな気分になったりして。
――試合のときはユニホームですもんね。その分、ネイルにこだわる女子選手もいますけど。
奥原 （髙橋）礼華先輩ですね。私は、そこまではしないです。
早川 いま、ディスったね！ 「そこまではしない」だって（笑）！
奥原 違いますよ！ そこまで女子力を高めようとは思えないということです。礼華先輩が一番女子力が高いなって、尊敬してるんですよ！
