5月25日に開催された2016日本ランキングサーキット(埼玉県さいたま市)最終日は、各種目の決勝戦が行なわれた。ここでは5種目の決勝戦ダイジェストと試合結果を紹介しよう。
【男子シングルス】
大学生ながらナショナルB代表の五十嵐優(中央大)が「2回対戦して負けている」という山口容正(トナミ運輸)に挑んだ。
序盤は17-17の接戦から抜け出した五十嵐が、そのまま第1ゲームを奪取。第2ゲームも一進一退の攻防となり、今度は強気で攻めた山口が取り返す。ファイナルゲームは山口が大量リードする展開となったが、ひるまずにスマッシュを打ち込んだ五十嵐が逆転に成功。1時間22分に及ぶ激闘を制した五十嵐に、場内から大きな拍手が湧いた。
▼試合結果
五十嵐優(中央大)②〔21-19、17-21、21-18〕1●山口容正(トナミ運輸)
五十嵐「これまで全国大会ではずっと2位だったので、めちゃくちゃうれしいです! たくさんの人の応援がすごく力になりました。今年は日本B代表に選んでいただいて、合宿などを経験するなかで、今大会は勝負できるという自信はありました。山口選手には過去2回、パワーや体力、スピードで負けていたけれど、昨日の準決勝のビデオを見たりして、しっかり作戦を立ててできたのもよかったと思います」
【女子シングルス】
ねばりが身上の峰歩美(再春館製薬所)と漆﨑真子(山陰合同銀行)の対決は、2ゲームのみながら約1時間に及ぶ大熱戦となった。
第1ゲーム中盤までは、最大でも2点差しかつかないシーソーゲームの展開に。どちらも我慢強くシャトルをひろってラリーを繰り広げたが、終盤に漆﨑のミスが重なり峰が21-17で第1ゲームを奪った。第2ゲームは、立ち直った漆﨑が7-1とリードするも、あきらめずにシャトルを追いかける峰が猛追。14-14まで追いついた峰が、さらに得点を重ねて逆転に成功。最後の21点をつかみ、昨年の2回戦敗退から一気に頂点へと駆け上がり、歓喜の優勝を果たした。
▼試合結果
峰歩美(再春館製薬所)②〔21-17、21-17〕0●漆﨑真子(山陰合同銀行)
峰「今大会は優勝がマストだと思っていました。やれることをやれば優勝できる自信はありましたが、最初はそれを出すのに緊張してしまって、苦しむ場面がありました。優勝は社会人になって初めてです。体力では相手のほうが上でしたが、あきらめない気持ちは私のほうが上だと思いながら、一本一本プレーしたことが、優勝につながったと思います」
【男子ダブルス】
第1シードの井上拓斗/金子祐樹(日本ユニシス)と、第3シードの渡辺勇大/三橋健也(日本ユニシス/日本大)による対戦。昨年は準々決勝で当たり、渡辺/三橋が2-1で勝利している。ともに高校時代から組む左右ペア(金子と渡辺がサウスポー)だ。
試合は序盤から気合十分の渡辺/三橋が強烈なスマッシュを放って主導権を握ると、一度もリードを許さず、21-13で第1ゲームを先取した。第2ゲームに入ると、井上/金子も先輩としての意地を見せて応戦。どちらもペースを譲らず19-19の接戦となったが、金子のネットミスでマッチポイントを握った渡辺/三橋が、最後はドライブで押し込み勝利の雄叫び。所属先は別れても変わらぬ強さを見せつけ、社会人を含めた国内大会ではうれしい初優勝を飾った。
▼試合結果
渡辺勇大/三橋健也(日本ユニシス/日本大)②〔21-13、21-19〕0●井上拓斗/金子祐樹(日本ユニシス)
三橋(左)「1ゲーム目から攻めて行けたし、2ゲーム目は相手もいいパフォーマンスでしたが、自分たちは足を使ってしっかりプレーできたのがよかったと思います。これからはもっとフィジカルの土台を作ったり、経験を増やしたりして、上位選手に追いつきたいです」
渡辺「1ゲーム目、苦しい場面でも声を掛け合ってできたのがよかったと思います。優勝はもちろんねらっていたし、勝ちきれたことは一つ自信になります。チームが違うので、大会前に少し調整したくらいですが、これまで一緒に組んできた貯金があるので、特別に話さなくてもコンビネーションよくプレーできました。世界一が目標なので、お互いが成長しながら、一つずつ経験を積んでいきたいです」
【女子ダブルス】
準決勝で、ナショナルB代表の永原和可那/松本麻佑(北都銀行)を倒した櫻本絢子/高畑祐紀子(ヨネックス)と、勢いに乗る大学生ペア・加藤美幸/柏原みき(筑波大)を退けた廣田彩花/小野菜保(再春館製薬所)。両ペアとも社会人1年目(高卒)の高畑、小野がいる新ペアで、さらには左右ペア(櫻本、小野が左利き)という共通点があり、どんな戦いになるか注目が集まった。
第1ゲームは中盤から櫻本/高畑がペースを掌握した。サウスポーの小野のバック奥をねらって決めに行くパターンが的中。第2ゲームは負けられない廣田/小野が逆襲。前衛の廣田が球を作り、フォアに回った小野が強烈なスマッシュやドライブで食らいつく。一瞬たりとも目が離せない速い展開の試合は、櫻本/高畑が19-19からすべてスマッシュで得点を奪って勝利。新人の高畑は母校・大宮東高があるさいたま市で、社会人として初のタイトルを獲得した。
▼試合結果
櫻本絢子/高畑祐紀子(ヨネックス)②〔21-13、21-19〕0●廣田彩花/小野菜保(再春館製薬所)
櫻本(右)「今大会は新しいペアがたくさんいたので、優勝するチャンスがあったし、優勝をめざしていたのでうれしいです。ただ、私たちも3月のクイーンズサーキットからのペアリングで、最初はペアとして全然噛み合っていなかったから、不安の方が大きかったんです。でも、厳しい練習を我慢して乗り越えてきたからこその結果かなと思います」
高畑「入部したばかりで、まだ自分に自信がなくて不安な気持ちの方が大きかったのですが、先輩と絶対に優勝したいと思っていました。コートに入ったら相手だけを見て、引かずにプレーできたのがよかったと思います」
【混合ダブルス】
2連覇をねらう第1シードの渡辺勇大/東野有紗(日本ユニシス)は、初戦こそ2-1だったものの、その後は圧勝で決勝進出。対する高階知也/江藤理恵(トリッキーパンダース/岐阜トリッキーパンダース)は、すべて2-0で勝ち上がってきた(準々決勝は相手ペアの棄権による不戦勝)。
序盤は立ち上がりのいい渡辺/東野が7-2とリードするも、先に11点目を奪ったのは高階/江藤。高階が厳しいコースに打ち込み、江藤の前衛が冴え渡った。先にゲームポイントを奪ったのも高階/江藤だったが、渡辺/東野がすぐに追いつき20-20。デュースになると、最後まで攻め抜いた渡辺/東野が25-23で奪った。第2ゲームは、渡辺/東野が6-4から9連続ポイントで一気に勝負をつけた。約40分の試合で2連覇を達成。なお、渡辺は男子ダブルスとの二冠も達成している。
▼試合結果
渡辺勇大/東野有紗(日本ユニシス)②〔25-23、21-12〕0●高階知也/江藤理恵(トリッキーパンダース/岐阜トリッキーパンダース)
東野「緊張はありましたが、2連覇に挑戦できるのは自分たちしかいないと思って頑張りました。勇大くんが春から入社して去年より練習できる時間が増えたことでコンビネーションも高まったし、お互いにフィジカルが強くなったと思います。これから世界で勝っていけるように、自分は前での仕事をもっとしっかりできるようにしていきたいです」
渡辺「僕らは勝ちきることが課題だったので、勝ちきることができたことはよかったと思います。ただ、世界で勝つためにはまだまだ足りないところがたくさんあります。とくにミックスの課題としては、もっとディフェンスからオフェンスにつなげられるようになりたいです」
なお、2016日本ランキングサーキットの大会レポートは、バドミントン・マガジン7月号でも掲載予定です。
取材・文/平田美穂(戦評)、バドミントン・マガジン編集部