年々バドミントンへの注目度が高まっている。2016年はリオデジャネイロ五輪のほか、トマス杯・ユーバー杯などビッグイベントが開催され、日本選手の活躍によってはさらにバドミントン熱がヒートアップすることは間違いない。
今回はバドミントンを長年見続けているライターの美郷茂樹氏に、混合ダブルスで活躍が見込まれる選手を紹介してもらった。
イケシオが高めた混合ダブルスの価値
日本の混合ダブルスの潮流を見ると、混合専門のプレーヤーとして世界で活躍したペアはおらず、どうしても男女ダブルスと兼ねてプレーをしている印象が強かった。日本代表で混合ダブルスの強化する環境が整備されていなかったこともあり、選手たちにも男女ダブルスを優先する考えが浸透していたのが実情だった。
しかし、オリンピックで正式種目(92年・バルセロナ)になったことや、スディルマン杯(男女混合の国別対抗戦)での重要性が高まったことで、混合ダブルスに対する考え方も変化している。ジュニア時代から同種目への意識を持たせるために、中学生の全国大会(全日本中学生・男女混合の団体戦)に混合ダブルスを取り入れたり、大学では同種目だけの全国大会が開催されたりもしている。各年代が積極的に取り入れ始めたことで、混合ダブルスの魅力が全国に広まってきている。
また、「イケシオ」としてメディアにも多く取り上げられた池田信太郎/潮田玲子の存在も大きい。2人は男女ダブルスで北京オリンピックに出場しているが、2度目のオリンピックは混合専門としてロンドンをめざし、見事出場権を獲得している。人気選手の決断と活躍は、混合ダブルスへの注目度アップに一役買ったのは間違いないだろう。
数野健太/栗原文音がリオ五輪をめざす!
今年の混合ダブルスで大きな目玉となるのが、数野健太/栗原文音(日本ユニシス)だ。混合ダブルス選手としてナショナル入りを果たしたのは「イケシオ」以来となる。ともに男女ダブルスでの悔しい思いを混合ダブルスで晴らすことになるが、五輪レースが残り4カ月を切った時点で世界ランキングは29位(1月20日現在)。オリンピック出場の安全圏(16位以内)に入るには苦しい状況ではあるが、昨年から国際大会に出場して結果を出し始めている。今後のスーパーシリーズなどで上位に入りポイントを上積みすれば、リオデジャネイロの道も見えてくるはずだ。
数野/栗原以外にも、日本選手は早川賢一/松友美佐紀(日本ユニシス)や、嘉村健士/米元小春(トナミ運輸/北都銀行)、園田啓悟/福万尚子(トナミ運輸/再春館製薬所)などが活躍している。また、昨年の全日本総合で4強に入った渡辺勇大/東野有紗(富岡高/日本ユニシス)、米元優樹/米元陽花(宇部興産/ACT SAIKYO)なども国内大会で上位に入る力を持っている。
混合ダブルスで求められるのは、女子選手がしっかりネット前でシャトルを止められることや、男子のスマッシュを怖がらずにレシーブする勇気であり、また、男子選手も後衛としての豊富な運動量、そしてチャンスで的確に決め切るスマッシュの決定力が不可欠となる。ここで紹介している選手もこういった混合ダブルスらしさを備えており、若い選手も強化次第では世界の上位をめざすことも可能だ。
個人的に期待しているのは渡辺/東野の2人だ。学年は一つ違うが、富岡高でともに練習を積み重ねた時間がある。これまで混合ダブルスの試合を多く見続けているが、2人のコンビネーションは抜群だ。今年4月から渡辺が日本ユニシスに加入することで、混合ダブルスを鍛える環境も整うことになる。男女強豪チームとして知られる同チームは、先を見据えた指導体制が確立されている。2020年東京オリンピックも視野に入れて、大きく飛躍することを期待している。
文/美郷茂樹
■筆者profile
みさと・しげき◎1950年生まれ。高校からバドミントンを始め、社会人でもプレー。国内外トップレベルのバドミントンを、長きにわたって見続けるベテランジャーナリスト。