年々バドミントンへの注目度が高まっている。2016年はリオデジャネイロ五輪のほか、トマス杯・ユーバー杯などビッグイベントが開催され、日本選手の活躍によってはさらにバドミントン熱がヒートアップすることは間違いない。
今回はバドミントンを長年見続けているライターの美郷茂樹氏に、男子ダブルスで活躍が見込まれる選手を紹介してもらった。
世代交代の波が生まれた男子ダブルス
これまで早川賢一/遠藤大由(日本ユニシス)、平田典靖/橋本博且(トナミ運輸)を中心に、園田啓悟/嘉村健士(トナミ運輸)が加わって3強の時代が続いてきたが、昨年の全日本総合ではその構図が変わる結果となった。
まず、これまで上位常連ながら優勝には一歩届かなかった園田/嘉村が、初めて日本一の座をつかみとった。アグレッシブな攻撃が武器の2人は、準決勝で早川/遠藤から白星を奪うと、決勝ではトナミ運輸の後輩・保木卓朗/小林優吾を下している。念願の優勝を果たし、今度は世界を相手に上位をねらってほしい。
準優勝の保木/小林も、社会人2年目の二十歳でこの好成績は立派。高校3年生の渡辺勇大/三橋健也(富岡高)も総合8強の成績を残しており、強きベテランに対抗できる若手が台頭してきた印象。少しずつ、世代交代の流れが生まれ始めている。
世界トップクラスの早川/遠藤のプレーは必見!
今回の総合では、遠藤が試合中にケガを負うアクシデントもあり3位に終わった早川/遠藤だが、最も充実したダブルスとして完成していくのは、この2人とみる。ここ1、2年の世界での戦いぶりは素晴らしく、とくに2014年トマス杯では、優勝の最大の立役者といってもいい活躍だった。ダブルスの集大成としてリオデジャネイロオリンピックに臨むが、昨年の世界選手権での銅メダルの経験も必ず生きてくるはず。個人的には応援したいペアだ。
彼らのプレーで注目してほしいのは、早川ならハーフからネット際の領域で見せる卓越したラケットさばき。プッシュ、ドライブ、ネットプレーなど前衛での多彩な攻撃は必見だ。また、遠藤はスマッシュの速さや波に乗ったときの爆発力、そして後衛としての豊富な運動量などが挙げられる。どちらも言葉でいうのは簡単だが、実際のプレーを見たものにしかわからない威力、そして魅力を2人は持っている。国内では1、2月の日本リーグでの出場が見込まれるだけに、ぜひ、多くのバドミントンファンに世界級のダブルスを体感してほしい。
若手3ペアの活躍にも期待!
若手選手で紹介したいのは、前述した保木/小林、渡辺/三橋に加え、井上拓斗/金子祐樹(日本ユニシス)の3ペアだ。3ペアとも右利きと左利きのペアで、ダブルスでは理想ともいえる左右ペアとして成績を残している。
保木/小林は、昨年やっと大器としての片鱗を見せてくれた。得意としている攻撃にさらなる磨きと安定感は求められるが、今年1年でレベルアップすれば世界ランカーたちとも好勝負ができるはず。
井上/金子は技術的に素晴らしいもの持っているだけに、これからは攻撃力強化が課題の一つになりそう。2人は2012年世界ジュニア銅メダルを獲得した実績もあるだけに、伸び代はまだまだ十分ある。ケガなどもあり順風満帆とはいえないが、フィジカル面をしっかり鍛えてパワーアップすれば、国内での上位進出も見えてくる。
高校生ダブルスとして全日本総合を盛り上げた渡辺/三橋の2人は、4月から別々の進路を歩むことになる。しかし、総合チャンピオン・園田/嘉村のように、進路で一度ペアを離れても、社会人になって再結成した例もある。渡辺/三橋も互いに進んだ道でどのように成長していくのか。それぞれが綴るストーリーからも目が離せない。
文/美郷茂樹
■筆者profile
みさと・しげき◎1950年生まれ。高校からバドミントンを始め、社会人でもプレー。国内外トップレベルのバドミントンを、長きにわたって見続けるベテランジャーナリスト。