年々バドミントンへの注目度が高まっている。2016年はリオデジャネイロ五輪のほか、トマス杯・ユーバー杯などビッグイベントが開催され、日本選手の活躍によってはさらにバドミントン熱がヒートアップすることは間違いない。
今回は男子シングルスに引き続きバドミントンを長年見続けているライターの美郷茂樹氏に、女子シングルスで活躍が見込まれる選手を紹介してもらった。
豊富なタレントが揃う女子シングルス
2016年8月19日、奥原希望(日本ユニシス)と山口茜(勝山高3年、4月から再春館製薬所)のリオデジャネイロオリンピック決勝戦、「ラブ・オール・プレー」のコールで目が覚めた。今年の初夢である−−。
きっと、今年は日本バドミントン界の黄金の年となる。奥原はヒザのケガを克服してからのフィジカルの充実、そして精神的な成長は、技術を超越してパワーの源となっているようだ。BWFスーパーシリーズファイナル2015では優勝という快挙を演じたが、注目すべき点はそのスコア。すべて2−0のストレート勝ちというのは、完全に実力で勝ち取ったもの。現時点では、メダル獲得の期待度は一番といってもいい。
一方、山口も実力的には引けを取らない。今までは怖いもの知らずの突破力で世界のトップレベルにのし上がってきた。その成長は驚異のスピードだが、伸びしろはまだまだ余力すら感じる。今年は社会人になり、よりプレーに専念できるはずなので、そこでもう一段階レベルアップしてほしい。そして、奥原と山口の2人がお互い、競争心をいい形にして切磋琢磨し、世界の舞台で輝くことに期待したい。
女子シングルスはとにかく充実している。昨年、全日本総合で復活を果たした佐藤冴香(ヨネックス)もその一人。2012年ロンドンオリンピックに出場した彼女は、試合中に大ケガを負い、途中棄権となってしまった。あのケガのシーンは、いまでも頭から離れない。
ケガから復帰して全日本総合では準優勝という結果を残したが、その裏には、これまでのプレースタイルを変えてでも勝利にこだわったというエピソードがある。今回つかんだ自信を武器に、次は世界での勝利にこだわってほしい。
そしてもう一人、三谷美菜津(NTT東日本)の巻き返しにも注目だ。2015年は本人にとって思うような結果ではなかったかもしれない。しかし、2014年世界選手権で3位に入った高い能力は、決して落ちてはいないはず。オリンピックレースは4月末まで何が起こるかわからない。世界ランクでは奥原、山口が上位にいるが、20位以内をキープしているこの2人にもオリンピック出場権獲得をめざしてほしい。逆転の可能性はまだ十分に残っている。
東京五輪候補のヤングパワーにも期待十分
若手の成長株では、川上紗恵奈(富岡高3年、4月から北都銀行)、仁平菜月(富岡高2年)、髙橋明日香(県立ふたば未来学園高1年)の3人に大きな可能性を感じる。3人に共通していることは、目標をしっかり持っていること。また、試合でのあきらめない執念や、フットワークのバランスのよさが若手選手のなかでは際立っている。これまでの練習に対する姿勢は必ず実になってくるはず。川上は社会人での活躍、そして仁平、髙橋には世界ジュニア選手権優勝をめざしてほしい。
最後にもう一人、大きなジャンプアップを期待する選手がいる。それは昨年の1年間は環境の変化に戸惑いながら、しっかりと自分を見つめて練習に専念した印象のある大堀彩(NTT東日本)。全日本総合の試合は、もともと備わっている実力が発揮されていた。あとは国内外で結果を出し、さらなる自信をつけて活躍してほしい。
文/美郷茂樹
■筆者profile
みさと・しげき◎1950年生まれ。高校からバドミントンを始め、社会人でもプレー。国内外トップレベルのバドミントンを、長きにわたって見続けるベテランジャーナリスト。