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【特別対談】Wキミコ、大いに語る。 陣内貴美子×クルム伊達公子 前編

特別対談

ともに世界を舞台に活躍し、いまもバドミントンとテニスをけん引し続ける2人の対談。

バドミントン・マガジン1月号では掲載しきれなかった内容を、数回に分けてお送りします。

取材日/12月1日

聞き手/テニスマガジン編集部、バドミントン・マガジン編集部

協力/ヨネックス株式会社

 

プライベートでも親交のある2人。対談は大いに盛り上がった

「テニスは全部“ホームラン”になっちゃう」(陣内)

――陣内さんは、テニスをどのように見ていたんですか。

陣内 テニスは小さい頃、身近にはなかったですし、見るようになったのはヨネックスに入ってからです。テニスとバドミントンって同じラケット競技だけど、全然違いますよね。足の出し方も、バドミントンは(フォア側で)右手と右足を一緒に出しますが、テニスは左足でしょ?

伊達 でも、いまはもうほとんど右足。バック側でも左足を出す人が多くなったし。

陣内 そうなんだ。でないと、ラリーについていけなくなっているのかな。あと、バドミントンは「手首」を使うんですよね。一度、有明でテニスをしたことがあって、ボレーを打つときも、私は手首を固定せずに返しながら打ったんです。そしたらテニスの人から「手首を壊すからやめて」といわれました。

伊達 ありましたね。ヨネックスのイベントかな。

陣内 難しいです、テニスは。(バドミントンと同じように)手首で打っちゃうから、全部「ホームラン」になっちゃうし。

――伊達さんはバドミントンに対してどんなイメージがありますか。

伊達 あの突っ込んで、拾っての前後の動き。ランジ(動作)の連続でしょ。シャトルのスピードもハンパないんでしょ? そのスピードは体感したことないんですけど、見ていても速いし、多分実際にやってみたらもっと速いだろうし。やっぱりフィジカルはちょっと…。

陣内 そんなことない。テニスのほうが大変だと思うよ。

伊達 いやー。ドンと踏み込んでいくって、私は一番苦手で。ランジをちょっとやっただけですぐに筋肉痛になっちゃうから。しかも板張りの上でしょ。

陣内 ゴムマット(コートマット)を敷いてるけどね。

伊達 でも、下は板張りでしょ。板張りの上でテニスをやったときはいつも痛いもん。それをジャンプして、着地しての連続でしょ。想像を絶するものがあります。試合は何分くらいですか?

――長いときは1時間半くらいです。

伊達 長っ!

陣内 ラケットもよくなってるし、シャトルもいいし。ラリーが長く続くんですよ。

伊達 そうすると集中力も相当いる。

陣内 うん。だから途中で抜くときもある。

伊達 抜くって、どのタイミングで?

陣内 このポイントだったら、まだ勝負には関係しないというとき。強い人は、最後の5、6本でミスしない。それまではマックスでプレーしないこともあるし。テニスもあるんじゃない?

伊達 テニスはポイントとポイントの間の20秒とか、ゲームとゲームの間にベンチに戻ったりとか。結構、間があるから。

陣内 バドは11本取ったときに1分とか。

伊達 でも、なんか速い。きゅっと詰まっている感じがするんですよね。卓球にしてもバドミントンにしても。

陣内 だから途中で抜くの。ただ、いまはラリーポイント制で、抜いて結局追い上げられないまま終わっちゃったりするときもあるから。そこら辺はみんな考えているけど。

――試合は早いと何分くらいですか? テニスで6-0、6-0みたいなとき。

陣内 15分くらいかな。本当に実力差があると、あっという間。

伊達 15分と、1時間半。幅広いですね。テニスも早かったら1セット15分くらいでいっちゃいますね。

陣内 だってサービスで決まっちゃいますもんね。

伊達 男子はね。女子はそこまでじゃないけど。

陣内 だからサービスだけ練習しておけばいいんじゃないのって思うときがある。あ、いまムッとした顔になった(笑)。「そんなんじゃないから」みたいな。

伊達 (笑)。速いサービスがあればなって本当に思う。ハンディをつくってくれないと不公平なんじゃないかなって。

陣内 思う思う。だって、あれだけ広いコートでしょ。よくあれで戦ってるなと思うし。

伊達 お互い、違う競技を見るときつく見えますね。

92年のバルセロナ五輪に出場するなど、長年ナショナルチームで活躍を続けた陣内氏(写真は90年)

 

 

駆け引きは試合前から始まっている

――テニスとバドミントンでは屋外と屋内というのも大きな違いですね。

陣内 室内は楽ですよ。蒸し暑いけど。

伊達 エアコンがついてるんですか?

陣内 最近、ついてるの!

伊達 じゃあ快適ですね。

――ただエアコンの風でプレーに影響が出ることもあります。

伊達 そうか。シャトルへの影響が。

陣内 だって5グラムしかないから。

伊達 5グラム!?

陣内 そういう風が吹いているほうが、私は好きだったけど。それを利用できるから。どっちのコートから入ろうというのも考えるし。考えない? 外だったら日差しとかあるじゃん。

伊達 考える。テニスってコートへの入場があるでしょ。先に入らなきゃいけない場合とそうでない場合があって、二つあるイスのどちらかを選ぶのは先に入った人だから、自分の好きなほうに行きたい人は、結構先に入ろうとするけど、もし私に選択権があると、大体奥に座る。なんか手前に座るとちょっと…。

陣内 自分がこっち(のイス)を取りたいんだと思われるから?

伊達 というか、「なんでわざわざ手前に座るのよ」と思われるんじゃないかなって思うから(笑) でも、テニスはサービスを選ぶか、サイドを選ぶかのトスがあって、相手がサービスを選んだら、私は反対のサイドといえる。だから入場の時点でのイスはあまり関係ないから、とりあえず奥に座る。

陣内 バドミントンもコイントスはあるよ。でも奥に座って、本当は手前でプレーしたいときにトスに勝ったらどうするの? やっぱりコートを選ぶの?

伊達 そのときはサービスかリターンかを選ぶから、大体リターンを選んで、向こうがコートを選ぶ。時間帯にもよります。日差しが重なるときは、それを避けるとか。でもそこまで気にしないかな。結局は、最初の一回だけだから。その後はずっと(互いにコートを)回っていくし、スタートがどっちかだから。

陣内 最終的にプレーしたいコートになるようにというのを、私はすごく考えるよ。

伊達 でも、ゲーム数によってコントロールできなくなる。

陣内 バドミントンは3ゲームで終わるから。

伊達 私たちは奇数ゲームでどんどん変わっていく。

陣内 そっか。私は最後の3ゲーム目を考えて、コートを選んでいました。ただ相手によって変わることもあって2-0で勝てるなと思ったら嫌なほうから入って、2ゲーム目にやりやすいほうで終わったりとか。スタミナに自信があったら3ゲームまで考えて、3ゲームの最後に好きなほうになるようにとか。いろいろあるんですよ。「相手がこっちのコートに入りたそうだな」って思ったら、あえて自分がそっちに入るとか。

伊達 私の場合、サービスが弱いから私がリターンを選ぶのを相手がわかっていて、相手がトスで勝ってリターンを選ぶこともあって。どう考えても、普通はサービスじゃない?(笑) なんでわざわざリターンを選ぶの?っていうことはあるかな。

陣内 わかる。そういう感じですよ。試合前から駆け引きが始まってる。

伊達 陣内さんがこんなに細かいって初めて知った(笑)。

――試合中に相手の態度にイライラしたりすることもあるんですか?

陣内 ありますよ、それは。でも外に出さない。イライラしていると思われるから。ずっとポーカーフェイスでした。

伊達 私には無理だな(笑)

陣内 (その場にいた関係者を見回して)みんなうなずいてる(笑)。私は、先輩がそうだったから。全然顔に出さない人がいたんです。それってかっこいいなと思って。ラケットのせいにする選手もいたし、床が滑るせいにする人もいたけど、一切それをしない先輩がいて、「こういう人になりたいな」と思って。だから勝っても、すごくうれしいんだけど、普通に淡々と握手をして帰って、控室とかで「やったー!」と大喜びするみたいな(笑)。負けたときは壁をぶち破って(笑)帰りたいけど、あえて出さなかった。伊達ちんは出るもんね?

伊達 でも最初は私も「カモン!」とかいわなかったし(笑)。それこそ、あんまり表情に出さない。怒るときだけは出していただけかな。でも、どうにもこうにもうまく事が回らないケースがあるでしょ?

陣内 道具にだけは当たるなといわれていたから、それはやめておいた。でも、あと「何やってんだー! ワタシ!」って自分にどなる人はいます(笑)。相手にいったらイエローカードになるから、自分にいっているように。

伊達 時と場合によるんですけど、やっぱり表に出すことで消化するのが、一番手っ取り早い。自分の中で消化するというのは難しいし、時間がかかる。それができるときもあるし、そうしようと思ってもできないときもあるから。

――テニス選手は多いですね。「ワー」って発散するケースが。

伊達 あとは、最近の若い子は「トイレットブレーク」で時間稼ぎをする。時間をかけながら、冷静さを取り戻して帰ってくるということもありますね。あの手この手、使えるものは全部使うという選手がいます。

陣内 それぞれの競技で違うんですね。(続く)

11年半のブランクを経て、いまなお現役プレーヤーとして活躍を続ける伊達氏(写真は15年)

 

 

 

 


じんない・きみこ◎1964年3月12日生まれ。熊本県出身。熊本中央女子高2年時にインターハイ団体・個人複で優勝し、3年時には3冠を達成。16歳でナショナルチーム入りし、その後、日本のエースへと成長した。実業団ではヨネックス、サントリーでプレー。主な戦績は84年全日本総合混合複・88~90年同女子複優勝、90年ジャパンOP2位、91年台北OP優勝、全英OP2位、92年バルセロナ五輪出場(パートナーはいずれも森久子)。現役引退後はテレビやラジオのキャスター、また講演会や講習会などで幅広い活躍を続けている。

 

クルムだてきみこ◎1970年9月28日生まれ。京都府出身。園田学園高を卒業後にプロ転向。ライジングショットを武器にトッププレーヤーへと成長し、94年全豪オープン、95年全仏オープン、96年ウインブルドンでベスト4をマーク。日本女子最高ランクの世界4位を記録した。96年シーズンを最後に引退。01年にレーシング・ドライバーのミハエル・クルムと結婚。08年春に11年半のブランクを経てコートに復帰した。その後はツアー最年長プロとして活躍、46歳を迎える2016年新シーズンに臨む。エステティックTBC所属。

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