選手を支えた匠の技
~ヨネックスOPジャパン舞台裏【ヨネックスストリンギングチームの活躍】~
スペシャリスト20人のチームが結成
女子シングルス決勝では日本人対決が見られたほか、世界トップレベルの戦いが繰り広げられ、盛況のうちに幕を閉じた今年のヨネックスOPジャパン。大会中、表舞台に立つ選手は多くのスタッフに支えられていたが、なかでも選手の直接的なパフォーマンスに直結するサポートを行なっていたのが、ストリングを張り替える“ストリンガー”だ。ヨネックスストリンギングチームはバドミントンのみならず、テニス、ソフトテニスにおいて数々の国際大会で活動を行なっており、そのメンバーは世界各地に総勢約700名、3種目のラケットスポーツを網羅する世界唯一の組織といえる。
今回編成されたストリンギングチームのメンバーは約20人。いずれも国内の各種大会でストリンガーを務めるなど、豊富な経験を持つスペシャリストばかりだ。台湾からもストリンガーが1名加わり、スーパーシリーズ(SS)での選手のパフォーマンスを最大限に高めるための活動に集中した。冠スポンサーを務めるSSであれば、現地のストリンガーを中心に編成して会場内のブースで活動しており、そうでない場合でも選手が宿泊するホテルなどに出向き、陰ながら選手のサポートに当たっている。「世界各国で約300人のバドミントン専門のストリンガーがいます」とヨネックス・金子氏は語る。
今大会でいえば、ブースに入っていたのは常時8名。約20人が交代しながら1日1人あたり6時間ほど作業にあたった。ストリングを張り替えるラケットは、多いときで1日100本ほど。これをチーム内で手分けしながら、黙々と張り上げていく。ストリンガーのパフォーマンスを支えるのは、日本製の機械。匠の技と高性能のマシンが融合することで、世界のトップランカーを満足させるストリンギングが生まれる。
ただし選手のレベルが高ければ、当然のように“こだわり”も出てくる。「よくいただくリクエストは、高テンションでの張り上げです。素人ではとても張れないような高いテンションを要求されることがあります。あと難しいのは、試合の直前に張り上げを頼まれること。ふつうの人だと30分弱はかかりますが、うちのチームには10分くらいで張れる人もいるので、迅速に対応させてもらっています」(ヨネックス・木下氏)。
見えないところで、選手たちのパフォーマンスを支えている――。そんな思いが、ストリンガーたちの誇りとなっている。
来年開催されるリオ・デ・ジャネイロ五輪でも、多くのメーカーがあるなかでヨネックスのストリンギングチームが唯一、現地に入って選手のサポートを行なう。すでにそのメンバー選定も進んでおり、日本人も何名かがチームに入る予定だという。
“職人”の確かな腕と目、そして高性能のマシンで、これからも選手のパフォーマンスをサポートしていく。